ArcGIS 10.1 の新機能 - 編集
ArcGIS 10.1 では、フィーチャ テンプレートの操作、重なり合うフィーチャとトポロジの編集についての ArcMap の編集環境に大幅な改善が加えられたほか、全般的に機能が強化されています。
フィーチャの作成とフィーチャ テンプレート
ArcGIS 10.0 でフィーチャ テンプレートが追加されましたが、フィーチャ テンプレートがいつの時点で自動作成されたのか、そして [フィーチャ作成] ウィンドウでフィーチャ テンプレートが表示されない理由が、わかりにくい場合がありました。ArcGIS 10.1 では、テンプレートの作成がレイヤ レベルになり、またテンプレートが非表示になっている理由について詳細な説明が追加されたことにより、こういったわかりにくさが軽減されています。
ArcGIS 10.1 では、フィーチャ テンプレートはワークスペースではなく、個々のレイヤを対象に作成されます。編集を開始したときに、特定のレイヤにフィーチャ テンプレートがない場合は、自動的にフィーチャ テンプレートが作成されます。以前は、マップの編集を初めて開始するときにしかフィーチャ テンプレートが作成されませんでした。このため、ユーザ自身で作成しなければならない場合が頻繁にありました。
+編集可能なレイヤのフィーチャ テンプレートが非表示になっている場合、[フィーチャ作成] ウィンドウの上部にメッセージが表示されます。メッセージをクリックすると、非表示になっているフィーチャ テンプレートの一覧と非表示の理由が確認できます。
編集可能なレイヤのテンプレートが非表示になる場合の主な理由と、それらを [フィーチャ作成] ウィンドウに表示する方法について次に示します。
- レイヤが非表示になっています。コンテンツ ウィンドウでレイヤをオンにする必要があります。
- レイヤが、非表示のグループ レイヤに含まれています。コンテンツ ウィンドウでグループ レイヤをオンにして、サブレイヤを表示させる必要があります。
- レイヤに表示縮尺範囲が設定されており、現在のマップの縮尺がその範囲を外れています。コンテンツ ウィンドウでレイヤを右リックして、[表示縮尺範囲にズーム] をクリックすると、レイヤが表示されます。縮尺範囲の更新または削除は、[レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [一般] タブで行うことができます。
- レイヤが、パーセル ファブリック データセットから作成されています。[フィーチャ作成] ウィンドウではなく、[パーセル エディタ] ツールバーで新しいパーセルを作成します。
- レイヤにフィルタ設定が適用されており、フィーチャ テンプレートがその設定と一致していません。フィーチャ テンプレートのプロパティを開き、フィルタ設定と一致するようにデフォルト属性値を設定します。式の更新または削除は、[レイヤ プロパティ] ダイアログ ボックスの [フィルタ設定] タブで行うことができます。
フィーチャ テンプレートが非表示になる理由は ArcGIS 10.0 と同じですが、この点がわかりやすくフィードバックされるようになりました。フィーチャ テンプレートの詳細については、「フィーチャ テンプレートを使用するための最適な方法」をご参照ください。
既存フィーチャのプロパティからのフィーチャ テンプレートの作成
新規フィーチャ テンプレートのプロパティのソースとして、既存のフィーチャを使用することができます。その場合、既存のフィーチャに含まれるフィールドの属性値は、いずれも新規フィーチャ テンプレートのデフォルト属性値として、自動的に入力されます。これによって、既存のフィーチャと同じ属性値を持った別のフィーチャを作成することができ、[テンプレート プロパティ] ダイアログ ボックスにおいて、値を手動で再入力する手間を省くことができます。
フィーチャ テンプレートを作成したら、そのプロパティについて確認や変更が可能です。フィーチャの属性値は、Shape_Length や OBJECTID などのシステム フィールドを除き、新規テンプレートのデフォルト属性値として表示されます。さらに、名前、ターゲット レイヤ、シンボルなどの、テンプレートの他のプロパティについても、新規フィーチャ テンプレートに設定されます。新規フィーチャ テンプレートの名前は、選択したフィーチャの表示式から取得されますが、既存のテキストがない場合に一般的な名前を設定することも可能です。新規フィーチャ テンプレートのターゲット レイヤおよびシンボルについては、選択したソースとなるフィーチャと同じになります。
このためには、まず新しいフィーチャ テンプレートの土台として使用するフィーチャを選択し、[フィーチャ テンプレートの整理] ダイアログ ボックスを開きます。次に、[新規テンプレート] ドロップダウン矢印をクリックしてから、[フィーチャから新規テンプレート] をクリックします。
フィーチャ テンプレートのその他の機能強化
- ArcGIS 10.0 では、新しい編集環境への理解を促進するため、編集セッションのたびに自動的に [フィーチャ作成] ウィンドウが表示されていました。ArcGIS 10.1 では、最初の編集セッションのときにしかこのウィンドウが表示されません。それ以降は、ドッキング、固定、または閉じた状態など、前回の状態が保持されます。たとえば、既存のフィーチャや属性の値だけを編集するときに [フィーチャ作成] ウィンドウを閉じると、次に編集を開始するときにも、ウィンドウは閉じたままになります。これは、別のマップを編集する場合や、ArcMap のセッションでも同様です。ウィンドウを表示させたい場合は、[エディタ] ツールバーからもう一度表示してください。このようなフレームワークの変更は、[属性] ウィンドウや [スケッチ プロパティ] ウィンドウなど、編集環境で使用されるすべてのウィンドウに適用されます。編集セッション以外で編集に関連するウィンドウを開いている場合、そのウィンドウはグレーで表示され、アクティブではないことが示されます。
- [フィーチャ作成] ウィンドウの [フィーチャ テンプレートの検索] は OR ではなく AND 論理を使用します。このため、より適切な検索結果を取得できます。たとえば「fire stations」を検索する場合、「fire」と「stations」の両方の単語を含むフィーチャ テンプレートのみが表示されます。
- [新規フィーチャ タイプの定義] ウィザードで、タグがサポートされるようになりました。また、2 つのフィールドで一意の値がサポートされるようになりました。以前は、1 つだけのフィールドについて一意の値をシンボル表示するためにしかウィザードを使用できず、タグは後で追加しなければなりませんでした。
- [フィーチャ テンプレートの整理] ダイアログ ボックスで、一度に複数のフィーチャ テンプレートのプロパティを更新できるようになりました。そのためには、テンプレートを選択して [プロパティ] をクリックし、作図ツールや属性などのデフォルト値を更新します。
新しくなった自動完成フリーハンド ツール
たとえば、土地利用、土壌、行政界、または所有地のポリゴンを作成する際、互いに隣接するポリゴンを作成しなければならないことがよくあります。これらのポリゴンは境界線を共有する必要がありますが、境界線を 2 回デジタイズすることや、ポリゴンの重複やギャップは避ける必要があります。新規ポリゴンの作成時に自動完成作図ツールを使用して、データを連続した構造で形成するのに役立てることができます。新規ポリゴンは複数の既存のポリゴンと境界線を共有することができますが、それらのポリゴンはすべて、作成中の新規フィーチャと同じレイヤにある必要があります。隣接するポリゴンを作成するために、次の 2 つの作図ツールが使用できます。[自動完成ポリゴン] ツールおよび [自動完成フリーハンド] ツールです。
ArcGIS 10.1 では、[自動完成フリーハンド] ツール が新たに追加され、ポインタの動きに沿って線を描画して新しいポリゴンの形状を作成することにより、ポリゴンを既存のポリゴンに追加できるようになりました。終了すると、新しい線分は平滑化されてベジェ曲線になります。たとえば、土地被覆のレイヤをデジタイズする場合に、[自動完成フリーハンド] ツールで湖や森の領域を描画すれば、曲線形状を簡単にデジタイズできます。
アノテーションの作成
フィーチャが重なり合っている場合は、[アノテーション作図] ウィンドウの [テキスト取得] または Ctrl + W を繰り返し使用して、新しいアノテーション用のテキストを提供するフィーチャを選択します。[テキスト取得] の使用後には、N キーで、元のフィーチャから取得したテキスト文字列を順に切り替えることができます。以前は、一番上のフィーチャしかテキストを提供できませんでした。
フィーチャ作成時におけるタブレット計算のサポートの改善
ペンを使ったデジタイズを容易にするために、いくつかの作図ツールにキーボード ショートカットが追加されました。ストリーミング モード中に M キーを押すと、ペンを押し付けたときにデジタイズが開始し、ペンを離すとデジタイズが停止します。M キーは [フリーハンド] ツール および新たに追加された [自動完成フリーハンド] ツール でも使用でき、この場合は、ペンを押し付けたときにフリーハンドのラインを描画でき、ペンを離したときにラインが停止されます。
フィーチャの作図ツールバーの機能強化
デフォルトでは、[フィーチャの作図] ツールバーはオフになっているため、スケッチ中に自動表示されることがなくなりました。このツールバーのコマンドにアクセスするときには、一時的にツールバーを表示できます。ツールバーが表示されているときには、ツールバーを移動することができます。マップをクリックしても、その都度スケッチに対するツールバーの位置が保持されます。この機能は、次の頂点を配置する場所にツールバーが重なっている場合に便利です。
[フィーチャの作図] ツールバーを必要なときにだけ表示する場合は、Tab キーを押します。たとえば、平行な線分を作成する場合、Tab キーを押して [フィーチャの作図] ツールバーを表示し、[参照線分に平行] をクリックします。その後、ツールバーを閉じるか、Tab キーをもう一度押すと、ツールバーが表示されなくなります。
スケッチするときに必ず [フィーチャの作図] ツールバーを表示するには、[編集オプション] ダイアログ ボックスでツールバーを有効にする必要があります。[エディタ] メニューをクリックし、[オプション] をクリックします。[一般] タブで、[フィーチャの作図ツールバーを表示] をオンにします。
フィーチャ サービスとベースマップ レイヤへのスナップのオプション
ベースマップ レイヤとフィーチャ サービス レイヤのフィーチャへのスナップを選択できるようになりました。以前は、利用できるすべてのレイヤについて常にスナップが有効になっていたため、パフォーマンスの低下につながることがありました。スナップを有効にするには、[スナップ] ツールバーの [スナップ] メニューをクリックし、[オプション] をクリックして [フィーチャ サービス レイヤにスナップ] または [ベースマップ レイヤにスナップ] のチェックボックスをオンにします。デフォルトでは、これらのオプションはオフになっています。
ベースマップ レイヤは、最適化されたマップ表示ロジックを使用して描画される特殊なグループ レイヤで、ローカル キャッシュを利用してマップをすばやく更新できます。ArcMap がサーバとの通信を繰り返してマップ範囲を取得する必要がないため、ベースマップ レイヤはネットワーク トラフィックを削減するためにも役立ちます。ベースマップ レイヤには、フィーチャクラス、シェープファイル、Web サービス、ラスタなど、任意のレイヤ形式を含めることができます。ベースマップにフィーチャ レイヤを配置すると、編集、計測、およびジオリファレンスを行う際や、[スナップ] ツールバーで動作するその他のツールを使用するときに、これらのレイヤのフィーチャにスナップすることができます。
ベースマップ内のレイヤを編集することはできませんが、ベースマップ レイヤ内のフィーチャ レイヤにスナップすることは可能です。たとえば、建物の位置を基準に新しい水道管を作成している場合は、ベースマップに含まれている「建物のフットプリント」レイヤにもスナップが可能です。フィーチャが非常に大きい場合や複雑な場合にベースマップ レイヤへのスナップを有効にすると、ベースマップ レイヤの利点であるパフォーマンスが低下する可能性があることに注意してください。
別のケースとして、都市の公園/レクリエーションのジオデータベースを更新する場合を考えてみましょう。道路と公共施設インフラストラクチャのデータは、Web ベースのフィーチャ サービスとして共有されます。公園のジオデータベースに新しい空きスペースの領域を作成する場合は、フィーチャ サービスから道路やその他のフィーチャにスナップできます。
トポロジの編集
ベクタ データセットの多くには、ジオメトリを共有するフィーチャがあります。たとえば、森林の境界が水路であったり、湖ポリゴンの境界が土地被覆ポリゴンや汀線の境界と同じであったり、区画ポリゴンが区画ラインに覆われていたりします。これらのレイヤを編集する場合、一致する複数のフィーチャを同時に更新し、ジオメトリの共有を維持しなければなりません。トポロジを使用すれば、この条件を満たしつつデータを編集できます。
ArcGIS 10.1 では、トポロジの作成と編集が容易になりました。新しい [トポロジの選択] ダイアログ ボックスでは、[トポロジ] ツールバーのドロップダウン リストでトポロジを選択し、別のダイアログ ボックスを開いてマップ トポロジを作成するという 2 つの操作が統合されています。これらの操作を 1 つのダイアログ ボックス [トポロジの選択] だけでできるようになりました。
また、トポロジ エッジの選択と編集も機能強化されています。たとえば、エッジに沿ってトレースすることでエッジを選択できるようになったほか、一度に複数のエッジの形状を変更し、素早くエッジを移動できるようになりました。同一ジオメトリを維持しながらのエッジのジェネラライズも可能です。
トポロジの設定
編集セッションでトポロジを有効にするには、[トポロジ] ツールバーの [トポロジの選択] ボタンをクリックします。編集するトポロジのタイプを設定するためのダイアログ ボックスが表示されます。(ArcGIS for Desktop Standard または ArcGIS for Desktop Advanced ライセンスを所有しており)コンテンツ ウィンドウにジオデータベース トポロジがある場合、ジオデータベース トポロジを使用して共有フィーチャを編集できます。または、[トポロジの選択] ダイアログ ボックスを開き、一緒に編集するレイヤを指定してマップ トポロジを選択します。アクティブなトポロジがない状態でトポロジ編集ツールをクリックすると、このダイアログ ボックスを使用してマップ トポロジを作成するよう求められます。
マップ トポロジを使用した編集
マップ トポロジは、一致すると見なされるフィーチャ間にトポロジ関係を作成します。これによって、ジオメトリを共有する複数のフィーチャを同時に編集できます。シェープファイルまたはジオデータベース フィーチャクラスから生成されたポイント、ライン、またはポリゴン レイヤにマップ トポロジを作成できます。これらのフィーチャは 1 つまたは複数のレイヤに属しており、レイヤのタイプはそれぞれ異なっていてもかまいません。
マップ トポロジの作成は簡単です。対象となるレイヤを選択し、クラスタ許容値を設定するだけです。マップ トポロジでも、レイヤ情報が使用され、名前や表示といったレイヤのプロパティが反映されるようになりました。以前は、コンテンツ ウィンドウでレイヤをオフにしていても、マップ トポロジにフィーチャクラス名が表示され、トポロジ エレメントの選択が可能でした。
マップ トポロジはマップのレイヤに基づいているので、フィルタ設定や縮尺範囲など、レイヤの表示設定が適用されます。マップ トポロジでトポロジ ツールを使用する場合、表示可能なフィーチャのみを編集できます。たとえば、ポリゴン レイヤに土地利用と行政区域が含まれており、土地利用フィーチャのみを更新する必要があるとします。そのためには、このレイヤに対してフィルタを設定し、土地利用フィーチャのみを表示して、行政区域を非表示にします。行政区域はマップ上に表示されないので、トポロジを編集してもこれらは更新されません。
トポロジ エッジの選択、形状変更、および編集
トポロジ エッジの選択が容易になりました。[トポロジ編集] ツール でエッジをドラッグしながらマウスの左ボタンを押したままにするか、新たに追加された [トポロジ編集トレース] ツール を使用すれば、パスを形成する一連のエッジを選択できます。
エッジが連続パスを形成している限り、[エッジの形状変更] ツール で複数のエッジを更新できるようになったため、エッジの形状変更には、パスの選択が非常に便利です。以前は、一度に 1 つのエッジだけしか形状変更できませんでした。[エッジの形状変更] を使用すると、接続されたその他のエッジの操作についてオプションを設定できます。エッジの形状変更では、選択したエッジに接続されているエッジも調整されます。これにより、選択していないエッジについても同一ジオメトリを維持できます。この振舞いは、[編集オプション] ダイアログ ボックスの [トポロジ] タブで管理できます。
トポロジ エッジを選択したら、[共有フィーチャ] ウィンドウ を開いて、どのフィーチャが選択したエッジの一部を構成しているかを確認します。[共有フィーチャ] ウィンドウが再設計され、ドッキング可能になったため、ウィンドウを開いたままマップを操作できるようになりました。このため、ウィンドウを閉じなくても、トポロジ エッジを選択および選択解除できます。[共有フィーチャ] ウィンドウでも、フィーチャのリスト表示にレイヤの表示式が使用されます。
エッジの分割移動とも呼ばれるエッジの切断と再接続の操作が容易になりました。以前は、端点ノードとエッジを選択しなければ移動できませんでしたが、エッジを選択しただけで移動できるようになりました。移動する端点にポインタを配置すると、ポインタの形状がに変わり、エッジを切断できることが示されます。あとは、エッジをクリックして移動し、新しい位置にスナップするだけです。デフォルトでは、エッジを移動するときに、全般的な形状を維持するために周囲のフィーチャがストレッチされます。接続されているフィーチャを更新せずにトポロジ エレメントを単独で移動する場合は、[編集オプション] ダイアログ ボックスの [トポロジ] タブで比例ストレッチのオプションのチェックマークをオフにします。
トポロジ エッジの単純化に使用する新しいエッジのジェネラライズ コマンド
[トポロジ] ツールバーの [トポロジ エッジの単純化] を使用すると、同一ジオメトリを維持しながらエッジを単純化できます。
フィーチャの形状を単純化するジェネラライズは、GIS データセットを収集して統合するための重要な手法です。データをジェネラライズすれば、取得したデータが細かすぎる場合にフィーチャの頂点数を減らしたり、フィーチャ内のトゥルー カーブを除去したり、それぞれ縮尺が異なるデータセットを特定の解像度に標準化したりできます。
たとえば、沿岸エリアについて、行政区画を表すポリゴン レイヤと、海岸線を表すライン レイヤがあるとします。これらのレイヤのフィーチャは一致しており、エッジを共有しています。しかし、エッジの縮尺が非常に小さく、不要な頂点が多数含まれています。適切な偏差を設定してジェネラライズすれば、海岸線の基本的な形状を維持したまま、頂点の数を減らすことができます。[トポロジ エッジの単純化] ダイアログ ボックスにはプレビュー機能が備わっているので、ジェネラライズを実行する前に偏差が適切かどうかを確認できます。
[トポロジ エッジの単純化] はトポロジ エッジに対して使用します。これによって、エッジを単純化する際、フィーチャ間のジオメトリ関係を維持することができます。同じエッジを共有するすべてのフィーチャが一度に更新されます。一方、ArcGIS の他のジェネラライズ ツールはトポロジを使用しないので、ギャップなどのデータ エラーが生じる可能性があります。
簡易化されたトポロジ ユーザ インタフェース
[トポロジ] ツールバーが再設計され、トポロジに直接関連した、トポロジで使用する必要のあるコマンドが含まれるようになりました。これに伴い、[トポロジ] ツールバーから [ポリゴンの構築] 、[ポリゴンの分割] 、および [ライン分割] コマンドが削除され、[高度な編集] ツールバーに移動されました。以前のリリースと同様に、これらのコマンドを使用するには、ArcGIS for Desktop Standard または ArcGIS for Desktop Advanced 製品ライセンスが必要です。
[トポロジ編集] ツールでマップを右クリックしたときに表示されるメニューが単純化され、最もよく使用されるツールだけが表示されるようになりました。以前このメニューに表示されていたコマンドが必要な場合は、[ユーザ設定] ダイアログ ボックスからユーザ インタフェースに追加できます。
データの位置揃えのための新しいツール
編集時には、品質レベルが異なるさまざまなソースからデータを収集することが多くなります。その結果、データの位置揃えの問題やトポロジ エラーが発生する可能性があります。ArcGIS 10.1 には、データの一致を支援するために設計された新しいツール一式が含まれています。フィーチャの操作に使用するツールや、トポロジを必要とするツールです。利用可能なデータ位置揃え用ツールの詳細については、「フィーチャの整列について」をご参照ください。
新しいツールには次のものがあります。
エッジの一致
既存のフィーチャの一部が他のフィーチャと正しく揃っていないことに気付くことがあります。[エッジの一致] ツールを使用すると、手作業でエッジをトレースまたは形状変更することなく、エッジを他のエッジにすばやく一致させることができます。1 つのエッジをクリックし、次に別のエッジをクリックするだけで、最初のエッジが直ちに 2 つめのエッジに一致します。たとえば、土地利用を表すポリゴン レイヤがあり、一部のポリゴンを変更して境界を揃える必要がある場合などです。このツールは、ギャップを含むポリゴンを処理する場合に特に有効です。
トレース形状に一致
[トレース形状に一致] コマンドを使用して、トレースするシェープにレイヤを一致させることができます。これはフィーチャを他のフィーチャのエッジに一致させたいときに便利です。一般にこのようなシナリオが必要になるのは、レイヤが異なる解像度、スケール、または期間で収集され、エッジが網状になったり、重なったり、間にギャップが生じたりしている場合です。たとえば、きわめて正確な GPS 測定からデジタイズされたハイキング コースがあるとします。このコースは、2 つのタイプの森のエッジにある川の岸に沿っています。川と森の境界は、ハイキング コースに一致しているはずです。しかし、それらのレイヤはもっと粗い解像度または異なるスケールを基にしており、ハイキング コースとジグザグに交差しています。ポリゴンと、ポリゴンが重なっているエリアの間にもギャップがあります。[トレース形状に一致] コマンドを使用すると、レイヤをコースのラインに揃え、ポリゴンが連続した構造を形成するように、対話的にパスを描画することができます。
ジオメトリの置換
[ジオメトリの置換] ツールを使用すると、まったく新しいフィーチャの形状を作成できます。[ジオメトリの置換] ツールの最も一般的なワークフローの 1 つは、隣接するフィーチャに揃える必要のあるフィーチャがあるときです。場合によっては、フィーチャの形状が境界を共有すべき他のフィーチャの形状と大きく異なることがあります。このような状況において、特にそのフィーチャが周囲のフィーチャに比べて不正確と見られるときには、多くの場合、既存の形状を変更するよりもフィーチャのジオメトリを再キャプチャする方が簡単です。
[ジオメトリの置換] ツールを使用するには、ポイント、ライン、またはポリゴンを選択する必要があります。[ジオメトリの置換] ツールをクリックすると、元のフィーチャが選択されたまま透過的に表示され、その現在の位置を確認できます。ここで、既存のフィーチャの形状を新しい形状に置換することができます。新しい形状をスケッチするには、変更しているフィーチャの元のジオメトリも含めて、他のフィーチャにスナップするか、他のフィーチャをトレースします。形状が更新されるだけであり、フィーチャの属性はすべて維持されます。
フィーチャと属性の編集
スケッチによる既存フィーチャのジオメトリの更新
[フィーチャ作成の継続] ツール を使用すると、スケッチを使って既存フィーチャのジオメトリを更新できます。これにより、新しい線分をデジタイズして線を延長したり、複数のフィーチャにパートを追加したりできます。
これらのワークフローは ArcGIS 9 にもありましたが、ArcGIS 10.0 では、フィーチャの新規作成と既存フィーチャの編集を区別する新しいフィーチャ作図ツールが導入されたため、廃止されました。ArcGIS 10 でこの機能に対するリクエストが多かったため、ArcGIS 10.0 Service Pack 2 の [フィーチャ作成の継続] ツールによりこの機能が再び追加されました。ArcGIS 10.1 では、このツールは [頂点の編集] ツールバーにあります。
頂点の編集ツールバーに追加された、頂点を移動した場合に形状を維持してサイズ変更するオプション
フィーチャの全体的な形状を維持しながら頂点を移動する場合には、フィーチャのジオメトリを比例的に拡大/縮小することができます。比例的な拡大/縮小を有効にした状態で頂点を新しい場所にドラッグすると、フィーチャの線分の比率が保たれ、フィーチャの全体的な形状が保たれます。
[頂点の編集] ツールバーに、[形状を維持してサイズ変更] が追加され、[編集オプション] ダイアログ ボックスにある [一般] タブの設定へのショートカットとして使用できるようになりました。このオプションは、フィーチャやトポロジ エッジの頂点の編集に適用されます。
キーボードを使用した属性ウィンドウのナビゲーションの改善
キーボード ショートカットを使用して [属性] ウィンドウおよび属性グリッドを移動することができます。ウィンドウの上部で、上下の矢印キーを使用して、選択されたフィーチャのリストを移動し、右矢印キーを使用してツリーを展開します。属性グリッドで、上下の矢印キーを押して前の行と次の行に移動します。Enter キーを押して現在の行の編集を開始し、属性値を入力してもう一度 Enter キーを押し、編集内容を確定して次の行に進みます。
コード値ドメインやサブタイプなど、ドロップダウン メニューを含むフィールドについては、Enter キーを押してメニューを開きます。リスト項目の最初の文字を入力してそこに移動するか、上下の矢印キーを使用し、Enter キーを押して値を選択することができます。
アノテーションの編集
曲線アノテーション形状の編集が改善され、ラインやポリゴンのベジェ曲線セグメントの編集と似た操作になりました。ベースラインの形状は頂点によって変更され、コントロール ポイントによる曲率の変更はベジェによって扱われます。
フィーチャ追従モードでアノテーションを編集するときに、アノテーションを複数のフィーチャ上でドラッグできるようになりました。たとえば、中心線に沿って道路名が配置されている場合は、アノテーションがそれぞれの接続ライン フィーチャに沿って滑らかに表示されます。これにより、道路が分割されている場合や、多くの個別のライン フィーチャで構成されている場合にも、アノテーションを追加できます。また、フィーチャ追従モードでマルチパート アノテーションをドラッグすることもできます。
フィーチャと属性の編集におけるその他の機能強化
- [属性] ウィンドウで関連フィーチャやレコードを操作するときに、リレーションシップ クラスの作成時に指定したリレーションシップ ラベルの下に、関連情報が表示されるようになりました。デフォルトでは、このラベルは関連先のフィーチャクラスまたはテーブルの名前です。ラベルがフィーチャクラスまたはテーブルの名前と異なる場合は、名前とラベルの両方が [属性] ウィンドウ ツリーに表示されます。たとえば、土地区画ポリゴンと土地所有権情報テーブルの間のリレーションシップで、土地区画が土地所有者によって所有されていることを示すラベルを設定するとします。この場合、関連レコードは「landowner - is owned by」というノードの下に一覧表示されます。
- フィーチャを変更すると、フィーチャが透過表示され、頂点を移動するとき、およびその他の編集を加えるときに元のフィーチャの形状を確認できます。
- 新しい [アタッチメント] ジオプロセシング ツールセットは、複数のフィーチャクラスやテーブルのアタッチメントを管理する場合に便利です。1 つまたは複数のフィーチャやレコードに複数のファイルをアタッチできるようになりました。
- [高度な編集] ツールバーの [頂点の間引き] と [スムージング] が更新され、新しい整列ツールに似たアイコンになりました。機能に変更はありません。
データ編集者の記録
編集情報の記録機能を使用すると、ArcGIS は、ジオデータベース データセットの各フィーチャまたはテーブル レコードについて、以下の情報を自動的に記録できます。
- 作成したユーザの名前
- 作成日時
- 編集したユーザの名前
- 最終編集日時
これらの情報は、データセットの属性フィールドに直接記録されます。編集情報の記録は、説明責任の維持と品質管理基準の徹底に役立ちます。
パーソナル ジオデータベース、ファイル ジオデータベース、および ArcSDE ジオデータベースのアイテムを ArcGIS for Desktop で編集すると、それらの編集が記録されます。さらに、ArcGIS Server にフィーチャ サービスとして保存されているデータを編集した場合も、その編集が記録されます。編集を記録するには、データセットの編集情報の記録を有効にする必要があります。
ArcGIS 10.1 以降のクライアントは、編集情報を記録します。ArcGIS 10.0 クライアントおよび 10.0 Service Pack 1 クライアントは、編集情報の記録が有効であるデータセットへアクセスすることはできますが、これらのリリースで行われた編集は記録されません。これらのクライアントを使用する場合はスキーマ変更を避けてください。スキーマを変更すると、データセットでの編集情報の記録が無効になります。ArcGIS 10.0 Service Pack 2(およびこれ以降の 10.0 サービス パック)クライアントは、編集情報の記録が有効であるデータセットにアクセスできません。
パーセル ファブリックの編集
ArcGIS 10.1 では、パーセル ファブリックの管理と編集が大幅に改善されています。
パーセル ファブリック
ArcCatalog またはカタログ ウィンドウでパーセル ファブリック データセットを展開して、パーセル ファブリック フィーチャクラスとテーブルにアクセスすることができます。パーセル ファブリック レイヤに追加しなくても ArcMap にパーセル ファブリック サブレイヤを追加できるようになりました。
パーセル ファブリックまたは選択したパーセル ファブリックは、新たに追加された [パーセル ファブリックのアペンド(Append Parcel Fabric)] ジオプロセシング ツールと [パーセル ファブリックのコピー(Copy Parcel Fabric)] ジオプロセシング ツールでコピーおよび追加できます。
パーセル ファブリックのレプリケーション
ArcGIS 10.1 では、パーセル ファブリックは、レプリケーションについてはサポートされていますが、シンプル モデル オプションで作成するレプリカについてはサポートされていません。
ジョブ テーブル以外の内部的なパーセル ファブリック テーブルはすべて同期されます。パーセル ファブリックに関連付けられているフィーチャクラスは同期されません。
パーセル ファブリックへのアノテーション追加
[パーセル コースのアノテーション] ツール を使用して、重複アノテーションを作成すること、およびパーセルの選択セットから削除することができます。このツールは、ラベルを新しいアノテーションに変換し、新しいアノテーションから重複を削除するために使用できます。また、重複の上書きや既存のアノテーションからの削除も可能です。
属性ウィンドウでのパーセル ファブリック属性の編集
バージョン 10.1 では、システム管理ではない、選択された個々のパーセル フィーチャの属性を [属性] ウィンドウで編集できます。[属性] ウィンドウ は [エディタ] ツールバーにあります。
パーセル トラバース
ArcGIS 10.1 では、パーセル トラバースで元に戻す/やり直しの機能を利用できます。[パーセルの詳細] ダイアログ ボックスの [ライン] タブにあるパーセル トラバース グリッドに行ったデータ入力の変更は、元に戻すこともやり直すこともできます。
パーセル トラバースを調整して、閉合を削除できます。[パーセルの詳細] ダイアログ ボックスに新しく追加された [閉合] タブで、使用する調整方法を指定できます。次の 3 種類の閉合調整方法から選択できます。
- コンパス調整
- トランジット調整
- クランダル調整
[閉合] タブでは、パーセル トラバースについて開始点や開始座標を指定することもできます。閉じていないパーセルをトラバースする場合は、終点または終了座標を指定できます。
ArcGIS 10.1 では、パーセル ファブリック トラバースで 180 度を上回る曲率がサポートされるようになりました。
残余パーセル
ArcGIS 10.0 では、重なり合う 1 つのパーセルからしか残余パーセルを作成できませんでした。ArcGIS 10.1 では、重なり合う複数のパーセルから残余パーセルを作成できます。
パーセルの複製
ArcGIS 10.1 では、パーセルを何度も複製できます。パーセルを複製する回数を指定します。パーセルを複製するたびに、パーセル テーブルの long integer の非システム フィールドをある数値で増分するオプションもあります。これは、複数のフロアレベル パーセルをコンドミニアムに追加するときに便利です。たとえば、Floor_Number フィールドをパーセル属性テーブルに追加する場合に、パーセルを複製するたびに Floor_number フィールドを 1 ずつ増分することができます。
パーセルの結合
ArcGIS 10.1 では、結合パーセル ラインと既存のファブリック ラインが一致または整列しない場合でも、結合するパーセルが周囲のファブリックに合わせてカートグラフィック的に調整されます。直線はライン ポイントの場所に合わせて屈曲または折れ曲がり、パーセルは、ファブリックにスリバー、ギャップ、または重なり合いが残らないように結合されます。
最小二乗アジャストの間に、曲げられたラインはすべて直線化され、ライン ポイントは直線上に移動されます。ただし、ライン ポイントと直線のオフセットが大きい場合は、直線がライン ポイントまで曲げられた状態を維持することを選択できます。
新しいトレース リンク ツールを使用した結合リンクの作成
ポイント対ポイントで個々に結合リンクを確立する代わりに、[パーセルの結合] ダイアログ ボックスにある [ファブリックをトレースして結合リンクを作成] ツール を使用して、トレースされた境界に沿って結合リンクを作成できます。トレースのリンク用ツールは、結合するパーセル ラインが指定されたトレース リンク バッファ内にある場合に、結合するパーセル ラインとトレースされた境界線の間で結合リンクを検出します。
パーセルの変換
[パーセルの変換] ツールバーを使用して、パーセル ファブリック内の選択したパーセルを暫定的に移動することができます。たとえば、パーセルを移動して基になるオルソ画像に揃えたい場合があります。パーセル ポイントは既存のコントロール ポイントにスナップできますが、コントロール ポイントにはリンクされません。パーセルの最小二乗アジャストでこれらのコントロール ポイントを使用する場合は、コントロール ポイントをパーセルのコーナーのポイントにリンクする必要があります。
ライン ポイントの確立
ArcGIS 10.1 では、同一線上の線分を 1 つのラインにマージできます。これらの線分は、1 つのラインを形成すべきものが、データ移行中に、隣接するパーセル ポイントで分割されたものです。線分を 1 つのラインにマージすると、線分上の隣接するパーセル ポイントはすべてライン ポイントになります。[パーセル コースのマージ] ツールを使用すると、角度差が [パーセル コースのマージ] ダイアログ ボックスで指定した許容値よりも小さい隣接するライン コースをマージできます。
パーセル ファブリックのジオメトリの再生成
[ファブリックの再生成] ツール を編集セッションで使用して、ファブリック フィーチャクラスのジオメトリを再生成することができます。ジオメトリだけが再生成され、ポイントはいずれも削除されません。
パーセルを再生成する際に、パーセル ポリゴンとパーセル ラインのジオメトリが再作成されます。ライン ポイントが隣接するパーセル ライン上に存在せずギャップがある場合は、ギャップが除去され、隣接するパーセル ラインはライン ポイントと一致するように再生成されます。バッファ ジオメトリがない、閉じていないパーセルがある場合は、これらのバッファ ジオメトリが再生成されます。