ArcGIS 10.1 for Server の新機能
バージョン 10.1 では、ArcGIS for Server で使用するアーキテクチャ、機能、およびワークフローが大幅に変更されています。このトピックでは、これらの変更の多くを説明します。このトピックは、特に、以前のバージョンの ArcGIS for Server をお使いの方に興味深い内容です。
インストール
ArcGIS for Server が 64 ビット アプリケーションに
ArcGIS for Server はネイティブの 64 ビット アプリケーションで実行されるため、GIS サービスはハードウェアを最大限に活用できます。この変更により、ArcGIS for Server のスループットとスケーラビリティが強化されました。現在の業界標準は 64 ビットのハードウェアであるため、32 ビットのオペレーティング システムのサポートが終了されました。
64 ビット専用アプリケーションである ArcGIS for Server には、Red Hat Enterprise Linux 6 のような 64 ビットの Linux コンピューティング プラットフォームが必要です。ご使用のオペレーティング システムが ArcGIS for Server でサポートされているかどうかが不明な場合は、システム要件をご参照ください。
Windows と Linux で区別されるセットアップ
これまでの ArcGIS for Server では、ArcGIS Server for the Microsoft .NET Framework と ArcGIS Server for the Java Platform という 2 つのセットアップが提供されていました。10.1 では、セットアップはオペレーティング システムで区別されます。2 つのセットアップは、ArcGIS for Server(Windows)と ArcGIS for Server(Linux)という名前になりました。
簡易化されたインストール
ArcGIS for Server インストール手順が大幅に簡易化され、以前のリリースで必要とされていた多くの依存とステップが不要になりました。
- 特定の Java Runtime のインストールが不要になりました。
- 独立した Web サーバ(Microsoft IIS、WebSphere など)との統合が要件ではなくなりました。ArcGIS for Server をインストールすると、いつでも Web 管理ツールとアプリケーションが含まれた GIS サーバを利用できます。
- The operating system account that you use to install ArcGIS for Server is called the ArcGIS Server account. This account will access your GIS resources, data, and run the ArcGIS Server service. 10.1 では、ポスト インストールを完了する必要も、SOM、SOC、または ArcGIS Web サービスのアカウントを構成する必要もありません。
- DCOM への依存がなくなり、ネットワーク内のファイアウォールの構成が簡易化されました。
ArcGIS Server を複数のコンピュータに導入する環境の作成手順も簡易化されました。各コンピュータ上で同じインストールを実行し、ArcGIS Server Manager を使ってコンピュータ同士を接続します。
このヘルプ システムの「インストール後の作業」では、ArcGIS for Server の構成と導入に役立つトピックと手順ごとの説明が記載されています。
Configure ArcGIS Server Account ユーティリティ
Configure ArcGIS Server Account は、ArcGIS for Server セットアップに含まれている小さなユーティリティで、ArcGIS Server アカウントを変更するために使用します。アカウントの修正が必要になった場合は、ArcGIS for Server のインストール ディレクトリからこのユーティリティを起動することができます。
SOM-SOC モデルに代わる ArcGIS Server サイト
ArcGIS Server のこれまでのバージョンでは、GIS サーバは SOC(サーバ オブジェクト コンテナ)とサーバ オブジェクト マネージャ(SOM)という 2 つの異なる部分で構成されていました。SOC は GIS サービスをホストし、SOM はこれらのサービスを管理してクライアントが使用できるように提供していました。
ArcGIS 10.1 for Server では、この SOM-SOC モデルの代わりに ArcGIS Server サイトを使用します。サイトとは、ArcGIS for Server をインストールし、一緒に機能するよう設定された、1 台以上のコンピュータ(GIS サーバ)を配置したものです。バージョン 10.1 のサイト アーキテクチャは SOM-SOC モデルよりも堅牢です。エラーの発生率が低減されたほか、新しいコンピュータのプロビジョニングと回復が簡易化されています。
詳細については、「ArcGIS Server サイトの詳細」をご参照ください。
ArcGIS Web Adaptor
ArcGIS Web Adaptor は、ArcGIS for Server を独自の Web サーバと連携させるためにインストールできるセットアップです。REST Web サービスと SOAP Web サービスは ArcGIS for Server でそのまま表示できますが、サイトのカスタム URL を構成する場合や、Web サーバのセキュリティ モデルと統合する場合は、ArcGIS Web Adaptor をインストールしてください。サイトの構成に複数のコンピュータを使用する場合や、GIS サーバのセキュリティを強化する場合にも、このコンポーネントの使用を推奨します。
詳細については、「ArcGIS Web Adaptor について」をご参照ください。
サイト管理
ArcGIS Server Manager の新しい外観と操作
サイトを管理するための主要ツールとして ArcGIS Server Manager を使用することになります。Manager の外観と操作は新しくなりましたが、以前のリリースと同じ機能が数多く提供されます。Manager の新機能には、SOE(サーバ オブジェクト エクステンション)を配置する機能や、ログを表示するインタフェースの改良などがあります。
10.1 の Manager で異なる点は、通常はサービスの公開には使わなくなる点です。ほとんどの公開は、ArcGIS for Desktop から直接実行できます。Manager から公開する必要がある場合は、ArcGIS for Desktop でサービス定義ファイル(*.sd)を作成し、Manager を実行しているコンピュータに転送することができます。10.1 では、Manager はサービス定義の公開だけをサポートし、他のファイル タイプの公開はできません。
Manager の使用を開始するには、「Manager へのログイン」をご参照ください。
「公開者」ロールでの ArcGIS Server への接続
ArcGIS Server の以前のバージョンでは、サービスを作成または更新するときに、管理者としてサーバに接続する必要がありました。バージョン 10.1 では、ユーザに公開者ロールを割り当てることができます。サイトへのコンピュータの追加といった、高度な管理タスクへのアクセスを与えることなく、ユーザにサービスの公開、中止、開始を許可できます。
サーバ管理のスクリプト
ArcGIS for Server では、サイトへのコンピュータの追加、サービスの公開、権限の追加など、共通アクションのスクリプトを作成できる新しい管理用 REST API が提供されています。ArcGIS Server Administrator API は、Python、PHP、Perl、JavaScript、PowerShell など、HTTP 要求の使用に対応しているどのプログラミング言語でも使用できます。
詳細については、「ArcGIS Server 管理のスクリプト」をご参照ください。
ArcGIS Server サイト内のハードウェア リソースの整理に役立つ GIS サーバ クラスタ
サイトに加えるために構成した GIS サーバを、クラスタと呼ばれるグループに整理することができます。作成した各クラスタがサービスの専用のサブセットを実行するように構成できます。たとえば、サイトに 5 台のコンピュータが属している場合は、2 台のコンピュータから成る 1 つのクラスタですべてのマップ サービスを実行し、3 台のコンピュータから成る 2 つめのクラスタ(処理能力が高くなると考えられる)ですべてのジオプロセシング サービスを実行するように構成できます。
クラスタの詳細については、「GIS サーバ クラスタについて」をご参照ください。
Manager での新しいログ フレームワークとユーザ操作
ArcGIS 10.1 for Server では、サイトに属するすべての GIS サーバ コンピュータにログが配布されます。バージョン 10.1 のログの表示とクエリには、ご自身でログの選別を試みるのではなく、ArcGIS Server Administrator Directory を使用することを推奨します。
ログの詳細については、「サーバ ログについて」をご参照ください。
SOE を Manager から導入可能
SOE(サーバ オブジェクト エクステンション)を利用すると、ArcObjects コードを使って GIS データやマップを操作することにより、ArcGIS for Server の基本機能を拡張できます。10.1 では SOE の導入が大幅に簡単になりました。Eclipse や Visual Studio のような開発環境では、SOE の必要な部分すべてをカプセル化する *.SOE ファイルを作成します。ArcGIS Server Manager を使用すると、この *.SOE ファイルのコンピュータ間での転送と配置をワンステップで実行できます。SOE のヘルプが拡充されており、このプロセス全体を説明しています。
事前設定されている基本サービス セット
ArcGIS for Server には、事前設定された一連のサービスが含まれています。初めてサイトを作成するときには、これらが表示されます。
ArcGIS Server の機能をすぐにプレビューできるよう、SampleWorldCities マップ サービスが用意されています。マネージャのサムネイルをクリックすると、Web アプリケーションで開くことができます。不要になったサービスは削除できます。
[System] フォルダには、マップのキャッシュや公開といった基本操作を実行する、内部的に使用されるサービスが格納されています。これらを表示および使用できるのは、サーバに対して公開者アクセスまたは管理者アクセスを持つユーザだけです。これらのサービスは自動的に開始するもので、削除することはできません。
[Utilities] フォルダに含まれている次のサービスは、デフォルトでは停止されています。使用する場合は、明示的に開始する必要があります。
- バッファ処理、単純化、面積と長さの計算、投影など、サーバが幾何学計算の要求に対応できるようにするジオメトリ サービス。詳細については、「ジオメトリ サービスについて」をご参照ください。
- Web アプリケーションから印刷用マップを生成する PrintingTools サービス。詳細については、「Web アプリケーションでの印刷」をご参照ください。
サービスの公開
ArcGIS for Desktop の統一された公開操作
ArcGIS 10 では、Desktop または Manager を使用して、マップやツール、ロケータなどの GIS リソースを ArcGIS Server で公開することができました。公開を選択する方法は、権限レベル、経験、個人的な好みなどさまざまな要因に基づきました。10.1 では、ArcGIS for Server で公開しようとする GIS リソースに対してさらに厳しい解析プロセスが実行され、Web で公開する準備が整っていることが確認されます。GIS リソースをサーバに公開する前に、ArcGIS for Desktop で解析する必要があります。
社内またはクラウドベースの ArcGIS for Server へのサービスの公開は、ArcGIS for Desktop のメイン メニューで [ファイル] → [共有] → [サービス] の順にクリックすることにより、直接開始できます。また、ジオデータベースのような特定の GIS リソースの場合は、ArcCatalog または ArcGIS for Desktop のカタログ ウィンドウで右クリックして、[サービスとして共有] を選択することもできます。[サービスとして共有] ダイアログ ボックスの項目は、GIS リソースをサービスとして構成、解析、および ArcGIS for Server に公開するときに役立ちます。
10.1 の公開操作の詳細については、「サービスの公開について」をご参照ください。
必要に応じて公開時にデータをサーバに直接コピー可能
10.1 では、必要に応じて、サービスを公開するときに、GIS リソースが参照する任意のデータを ArcGIS Server にコピーすることができます。このアプローチには長所も短所もありません。頻繁に変更されることのない小さいデータセットである場合や、クラウドベースのサーバにログオンできない場合に、サービスの作成タスクと公開タスクを完全に分離するときに便利です。
詳細については、「データのサーバへのコピー」をご参照ください。
GIS リソースとデータをサービス定義でカプセル化して後で公開
サービス定義ファイルを使用すると、GIS リソースとデータのスナップショットを作成し、後からサービスとして ArcGIS Server で公開することができます。この方法は、クラウド環境、保護された環境、サーバをすぐに利用できない場合に役立ちます。
詳細については、「サービス定義について」をご参照ください。
データ登録により ArcGIS for Server のデータへのアクセスを保証
10.1 では、ArcGIS for Desktop で提供されるツールを使用して、特定のエンタープライズ ジオデータベースとデータ ディレクトリの集合を ArcGIS for Server に登録できます。データを登録すると、ArcGIS for Server で利用できるようにした GIS リソースとデータにサーバが実際にアクセスできることが保証されます。この機能は、ArcGIS for Desktop を実行する社内のコンピュータと、Windows または Linux で実行中のクラウドベースの ArcGIS for Server 間でデータを複製する環境でよく必要になります。
詳細については、「ArcGIS for Server へのデータ登録について」をご参照ください。
仮想パスまたは URL でサーバ ディレクトリを自動的に公開
サーバ ディレクトリを(出力、ジョブ、キャッシュなどに使用する目的で)作成すると、仮想パスまたは URL で自動的に公開されます。Web サーバ上で仮想ディレクトリを明示的に作成して、サーバ ディレクトリに関連付ける必要はなくなりました。この変更の詳細については、「サーバ ディレクトリについて」をご参照ください。
Services Directory の REST キャッシュの自動削除
リンクを使用して移動する際に高パフォーマンスを得られるように、ArcGIS Server Services Directory の情報はキャッシュされます。ArcGIS 10.1 for Server では、サービスが追加、削除、または変更されると、REST キャッシュが自動的に削除されます。
詳細なメタデータをサービスに適用可能
ArcGIS 10.1 for Server では、詳細なメタデータをサービスに適用することができます。この操作では、ArcGIS for Desktop で馴染みのあるメタデータ編集インタフェースと同じものを使用します。多くの場合、マップまたはその他のリソースに適用しているメタデータは、そのリソースを公開すると自動的にサービスに適用されます。これで、そのメタデータを自由に編集できます。
サービスに適用したメタデータは、Web 開発者が REST を使って利用することもできます。
MXD ベースと MSD ベースのマップ サービスの区別不要
以前のリリースで MSD に関連付けられていた高速描画エンジンが、すべてのマップ サービスで使われるようになりました。これにより、ArcGIS for Server では MXD ベースのマップ サービスと MSD ベースのマップ サービスの区別がなくなりました。10.1 では、ArcGIS for Desktop を使用してマップ ドキュメントをサービスとして公開するだけです。
マップ サービスの描画エンジンでサポートされる機能については、「マップ サービスでサポートされる機能」をご参照ください。
ジオプロセシング サービスの公開方法の変更
ジオプロセシング サービスを作成するには、[結果] ウィンドウで結果を右クリックしてから、[共有] → [ジオプロセシング サービス] の順に選択します。[サービスとして共有] ステップバイステップ ウィザードが開き、[サービス エディタ] ダイアログ ボックスが表示されます。10.0 でジオプロセシング サービスを公開した場合との大きな違いは次のとおりです。
- マップ ドキュメントのツール レイヤは必要なくなりました。10.1 では、ツール レイヤの作成はサポートされていません(使用することはできます)。
- ツールボックスを右クリックして ArcGIS server で公開するオプションは削除されました。公開できるのは、結果のみです。
- モデルをサービスとして設定するために編集する必要はありません。代わりに、サービス エディタを使用します。サービス エディタを使用して、サービスの入力および出力パラメータのすべての定義を設定できます。
マップ サービスのレイヤの外観と振舞いをクライアントが動的に変更可能
ArcGIS Web API のような ArcGIS for Server のクライアントは、マップ サービスのレイヤの外観と振舞いを動的に変更することができます。マップに表示されるレイヤ、レイヤ シンボル、レイヤの順序と位置、ラベリングなどの振舞いは、ダイナミック レイヤを使用することによってサーバ上で実行できます。このように、ダイナミック レイヤによってユーザがマップに対して行える操作を拡張することができます。
詳細については、「ダイナミック レイヤについて」をご参照ください。
REST でジオコード サービスを使用する際のパフォーマンスの高速化
REST を使用したアドレス検索およびリバース ジオコーディングのパフォーマンスが、ジオコード サービスにおいて大幅に向上しました。
REST を利用したバッチ ジオコーディング
REST を使用して、単一住所の特定とリバース ジオコーディングの実行に加え、ジオコードのバッチ処理ができるようになりました。
正確なバッファ処理と計測のためのジオメトリ サービスの新オプション
ジオメトリ サービスでバッファ、面積、長さを計算する新しいオプションが提供されます。
バッファ処理を使用するときに、測地線バッファを利用できるようになりました。これにより、バッファの計算中に地表の実際の形状が考慮されます。
また、ベクタ フィーチャの長さと面積を計算するときには、Web マップとその座標系を考慮することが重要です。そのため、lengths メソッドと areasAndLengths メソッドに次のような新しい計算タイプが導入されました。
- [平面] - 平面計測では、2 次元直交(デカルト)演算を使用して面積と長さを計算します。ほとんどの場合、[測地線] または [PreserveShape] のオプションを使用した方が正確です。
- [測地線] - 測地線計算では、それぞれのライン セグメントが、ポリゴンまたはポリラインの各頂点ペア間の地表上での最短パスであると解釈されます。面積または長さの単位が指定されていない場合、結果はメートル単位で返されます。この計算タイプは、測地線に基づくジオメトリの長さや面積を知りたい場合に使用してください。マップ上に描画されたジオメトリの長さまたは面積を計算したい場合は、[PreserveShape] を使用してください。
- [PreserveShape] - PreserveShape の計算では、ポリゴンまたはポリラインの面積と長さが、地球楕円体の表面で計算されます。ジオメトリの形状は、その座標系で維持されます。つまり、Web マップの座標系(地理または投影)にかかわらず、面積と長さの計算時には、マップに描画されたジオメトリが常に維持されます。たとえば、平らな世界地図の上に長い線を描いた場合、測地線計測では線の両端を結ぶ地表上の最短パスの長さが得られますが、PreserveShape 計測では描かれた線そのものに沿った長さ(その線が線の両端を結ぶ最短パスでなくても)が得られます。
ライブ交通量のサポート、到達圏や配車ルートのツールを含めた Network エクステンションの改良
10.1 では、Network Analyst エクステンションによってライブ交通量に関する機能が追加されるため、現在の交通状況を視覚化やネットワーク解析の目的に利用できるようになりました。さらに、新しいジオプロセシング ツールによって、到達圏および配車ルートの Web サービスの作成と操作も容易になります。
これらの新機能を含めた各機能は次のとおりです。
- ライブ交通量をサポートする各種ジオプロセシング ツール
- [到達圏の作成(Generate Service Areas)] ジオプロセシング ツール
- 配車ルート(VRP)の解析(Solve Vehicle Routing Problem)ジオプロセシング ツール
- Network Analyst モジュール(Python)
- エバリュエータでの Python スクリプトのサポート
- [通過したソース フィーチャのコピー(Copy Traversed Source Features)] ジオプロセシング ツール
- 移動中の車両のリアルタイム配車ルートに対するサポートの向上
詳細については、「Network Analyst エクステンションの新機能」をご参照ください。
OGC WPS および WMTS 仕様をサポート
ArcGIS for Server で、WPS(Web Processing Service)仕様と WMTS(Web Map Tile Service)仕様が 10.1 の OGC Web サービス ラインナップの一部としてサポートされるようになりました。WPS は、Web 上で地理空間処理を提供および実行するための仕様であり、ジオプロセシング サービスと組み合わせて利用できます。WMTS は、キャッシュ マップ サービスを通じて自動的に提供されるキャッシュされたイメージ タイルを使用してデジタル マップを提供するための仕様です。
10.1 での OGC サービスの詳細については、「ArcGIS for Server での OGC サポート」をご参照ください。
サービスのための新しいプラットフォームとテクノロジ
このセクションでは、ArcGIS でサービスを公開するための新しいプラットフォームとテクノロジのいくつかについて説明します。この中には ArcGIS for Server のインストールに含まれないものもありますが、10.1 で新しく追加されたものであり、既存のアーキテクチャを補ったり、置き換えたりできるものとして知っておくことが重要です。
Spatial Data Server
ArcGIS Spatial Data Server は、データベースやジオデータベースに保存されているベクタ データのジオメトリ、属性、シンボル、テンプレート情報をブラウザやカスタムのクライアント アプリケーションに提供できるようにするための、フットプリントの小さいサーバです。Spatial Data Server で提供されるサービス タイプは、フィーチャ サービス 1 つだけです。このフィーチャ サービスを使用して空間フィーチャを描画するクライアント アプリケーションを作成または構築します。
Spatial Data Server は、ArcGIS for Server をインストールすることなく空間対応のエンタープライズ データをマップに配置したいときに適しています。
.NET および Java では、Spatial Data Server を別個にインストールすることができます。
ArcGIS Online のホスト サービス
Esri がホストするクラウドである ArcGIS Online でサービスを直接公開できるようになりました。ArcGIS Online での公開に、ArcGIS Online 公開用の特別なソフトウェアのインストールは必要ありません。さらに、ArcGIS for Desktop から直接 ArcGIS Online でサービスを公開することができます。
ArcGIS Online で公開できるサービスの種類は、タイル マップ サービスとベクター フィーチャ サービスです。フィーチャ サービスを公開するときには、Web 編集の利用を許可するよう設定できます。キャッシュ マップ サービスを公開すると、クラウド上にタイルが構築および保存されます。
ArcGIS Online でサービスを公開するには、ArcGIS Online の組織向けサブスクリプションが必要です。
ArcGIS Server on Amazon Web Services
Amazon EC2(Elastic Compute Cloud)を使用すると、Amazon のデータ センターで稼働する仮想コンピュータ上にソフトウェアを配置できます。Esri が提供する AMI(Amazon Machine Image)を使用することにより、ArcGIS for Server を Amazon EC2 上に迅速に配置できます。上述した ArcGIS for Server のアーキテクチャの改良により、Amazon EC2 環境でのサービスの公開、キャッシュの作成、非同期ジオプロセシングの実行時の操作性が向上しました。
10.1 の前までは、Amazon EC2 で ArcGIS for Server を設定するには AWS Management Console またはサードパーティの管理アプリケーションを使用する必要がありました。10.1 では、Amazon EC2 でサイトを設定するための ArcGIS Server Cloud Builder on Amazon Web Services が Esri によって作成されています。上級ユーザは引き続き AWS Management Console を使用することができます。
詳細については、ArcGIS Resource Center の「ArcGIS Server on Amazon Web Services」ページをご参照ください。
キャッシュ サービス
サービスの公開時にキャッシュを指定して構築可能
サービスを公開する前でも、キャッシュ タイル スキーマなどのパラメータを指定することを選択できます。サービスがすでに公開されているかどうかにかかわらず、すべてのキャッシュ プロパティを [サービス エディタ] で設定できます。キャッシュの定義に使用する初期ダイアログ ボックスが単純化されました。高度なプロパティは別のダイアログ ボックスに移動されています。
[分析] をクリックすると、指定したタイル スキーマで発生する可能性のある問題に関する警告を確認できます。
バージョン 10.1 の新しいオプションでは、サービスを公開するときにキャッシュを構築できます。小さなエリアだけをキャッシュしたり、タイル スキーマの縮尺を小さくしてキャッシュしたりするときに便利です。
タイル構築前にキャッシュ サイズを推定可能
初めてキャッシュを定義するときに [キャッシュ サイズの計算] をクリックすると、キャッシュに必要な推定ディスク容量を取得することができます。この数字は、キャッシュ作成の所要時間を判断する際の目安にもなります。公開時にタイルを自動生成するかどうかを決定するうえで役立ちます。
イメージ サービスをキャッシュ可能
イメージ サービスのサーバ サイドのタイル キャッシュを、マップ サービスのキャッシュを作成する場合と同じ方法で作成できます。操作には、マップ キャッシュに使用するツールと同じものを使用します。
キャッシュの対象エリアを手動で指定可能
ArcMap でキャッシュ ツールを実行するときに、画面にポリゴンを描画するだけで、キャッシュするエリアを指定できます。もちろん、以前のバージョンと同様に、フィーチャクラスを指定することも選択可能です。
キャッシュ ジョブがジオプロセシング サービスに移行
キャッシュ中にマップ サービスやグローブ サービス、イメージ サービスに大きな負荷をかける代わりに、CachingTools という名前のジオプロセシング サービスに処理が移行されました。このサービスは、サイトの作成時に自動的に構成されます。CachingTools サービスの実行は、指定したクラスタ内のコンピュータのみに制限できます。これにより、サイト内の他のコンピュータは解放され、サービス リクエストに迅速に対応できます。
「キャッシュを作成するためのサーバ リソースの割り当て」をご参照ください。
ArcGIS を開いたままにしなくてもキャッシュ作成可能
バージョン 10.1 では、キャッシュ ジョブの非同期での実行を要求できるようになりました。つまり、サーバに大きなキャッシュ ジョブを提出した後に、ArcMap といった実行中の ArcGIS アプリケーションを閉じても、タイルの作成が中断されません。ArcGIS をもう一度開けば、いつでもジョブのステータス レポートを要求したり、キャッシュを一時停止したりできます。
キャッシュ構築状況の詳細なレポートを作成可能
キャッシュ マップについて、キャッシュの終了ステータスがレベルごとの統計情報で表示されたレポートを要求できるようになりました。また、提出したそれぞれのキャッシュのステータスを表示することもできます。
「キャッシュの終了ステータスの表示」をご参照ください。
キャッシュ用の簡単なショートカット メニュー
サービスにキャッシュが指定されている場合は、カタログ ツリーでキャッシュを右クリックして [キャッシュの管理] を選択することにより、各種のキャッシュ ツールにアクセスできるようになりました。
最小および最大キャッシュ縮尺をキャッシュに表示
最小キャッシュ縮尺と最大キャッシュ縮尺の概念が追加されました。これにより、タイルの作成が可能なタイル スキーマで、縮尺レベルの範囲を定義できるようになります。残りの縮尺もタイル スキーマに保持されますが、最小または最大キャッシュ縮尺を変更しない限り、キャッシュ ツールを使用してそれらのレベルでタイルを作成することはできません。
たとえば、キャッシュされた他の Web サービスと相互運用するために、キャッシュに ArcGIS Online/Bing Maps/Google マップ タイル スキーマの使用を決めたとします。一方で、2 つの最大縮尺(約 1:1100 と 1:2200)でのタイル作成は避けたいと思っています。その場合は、キャッシュ縮尺を 1:4500 に設定すれば、それよりも大きい縮尺でタイルを作成できなくなります。
サービスとしてマップを共有することを選択すると、ArcGIS Server によってマップの読み取りが実行され、マップ ドキュメントに使用されている縮尺範囲と使用範囲に基づき最小および最大キャッシュ縮尺が提案されます。提案された内容は、変更してもかまいません。
表示品質を維持しながら容量を節約する PNG 形式
新しい PNG キャッシュ イメージ形式は、構築された状態の各タイルを確認し、PNG にとって最も効率的なビット深度を判断します。このため、タイル作成時間は長くなりますが、優れた表示品質を維持しながらキャッシュを小さくすることができます。新しい PNG 形式の使用を望まない場合は、明示的に PNG8、PNG24、または PNG32 の形式を選択できます。
Web ADF
ArcGIS 10.1 for Server は、Microsoft .NET と Java 用の Web ADF を提供する最後のリリースとなります。ADF は、ArcGIS Web Applications と呼ばれる別個のインストールを実行することによって利用できるようになります。
ArcGIS Server の以前のリリースで Web ADF アプリケーションを開発している場合は、アプリケーションを移行して ArcGIS Web API や ArcGIS の構成可能なビューアを使うことを検討してください。Web アプリケーションを Web API に移行する方法の詳細については、ヘルプ トピックの「ArcGIS 10.1 for Server への移行」をご参照ください。
ArcGIS 10.1 for Server での Web アプリケーション構築の詳細については、以下のトピックをご参照ください。
ArcGIS Web Applications Manager
ArcGIS Web Applications をインストールすると、ウィザードを使って Web ADF ベースのアプリケーションを作成するために使われていた、ArcGIS Server Manager の以前のコンポーネントもインストールされます。このコンポーネントを ArcGIS Web Applications Manager と呼びます。
Web ADF 内のサーバへのローカル接続
Web ADF アプリケーション内では、10.1 サイトへのローカル接続や DCOM(Distributed Component Object Model)接続を行うことはできません。これまでローカル接続は、ArcObjects で Web 編集や操作を行う目的で使用していました。ArcGIS 10.1 for Server では、ローカル接続しなくても、ArcObjects を使ってサーバを SOE(サーバ オブジェクト エクステンション)で拡張することができます。Web 編集アプリケーションを構築する場合は、フィーチャ サービスを ArcGIS Web API、ArcGIS Viewer for Flex、ArcGIS Viewer for Silverlight などと組み合わせて使用することができます。