ArcGIS とは?

ArcGIS の概要

ArcGIS は、地理情報を収集、整理、管理、解析、伝達、および配布するための包括的なシステムです。ArcGIS は、GIS (地理情報システム) の構築と使用に関して世界をリードするプラットフォームであり、行政、企業、科学、教育、メディアなどの各分野で地理情報を利用する目的で、世界中の人々に使用されています。ArcGIS を使用すると、地理情報を公開して誰にでもアクセス可能にすることができます。このシステムは、Web ブラウザ、モバイル デバイス (スマートフォンなど)、およびデスクトップ コンピュータを使って、どこからでも利用できます。

ArcGIS は完全なシステム コンピュータです。ArcGIS

ArcGIS を以前からご使用されていた場合、ArcGIS は、専門的な GIS 作業を行うために使用する一連のソフトウェア プログラムだとお考えかもしれません。技術の進化に伴い、システムとしての ArcGIS に基づいて、世界が地理情報といかに連携しているかについて、視点を広げて考えてみましょう。ArcGIS システムでは、GIS コミュニティによって作成された信頼できる地理情報を、これを使用したいすべてのユーザ (および、共有が選択されているユーザ) が簡単かつ自由に活用できます。このシステムには、ソフトウェア、オンラインのクラウドベースのインフラストラクチャ、専門的なツールに加えて、アプリケーション テンプレート、すぐに使用できるベースマップ、ユーザ コミュニティで共有される信頼できるコンテンツなど、構成可能なリソースが含まれています。サーバおよびクラウド プラットフォームのサポートにより、コラボレーションと共有が可能です。このため、計画および意思決定に不可欠な情報を、誰もがすぐに利用できます。

ArcGIS システムは、部門内、企業全体、複数の組織やユーザ コミュニティ間、さらには Web 上のアクセスするすべてのユーザに対して、マップと地理情報を使用可能にするためのインフラストラクチャと見なすことができます。たとえば、モバイル デバイスを使っているフィールド スタッフがリアルタイムの計測値を更新すると同時に、専門家はこの情報をデスクトップ コンピュータで解析し、計画の作成担当者は Web ベースのアプリケーションを使ってこの解析結果の影響評価を行います。最終的に、プロジェクトで得られたマップとデータを Web に公開すると、Web ブラウザや、スマートフォンおよびタブレット上のアプリケーションを通じて誰でもこれにアクセスできます。プロジェクトの結果は、表示するだけでなく、このデータを別の使用可能なデータと結合して別のマップを作成することで、自分が持つ地理情報を新たな形で使用できます。

多くの異なる業界の何千という組織の人々が、計画と解析、資産管理、作業認識、現地作業 (モバイル調査や対策配備など)、マーケット リサーチ、リソース管理、物流、教育、福祉など、広範なアプリケーションの中で ArcGIS を使用しています。一般に、ArcGIS は、以下の操作に役立つという理由で使用されています。

  • 問題の解決
  • 適切な意思決定
  • 適切な計画
  • リソースの活用
  • 変化の予測および管理
  • 業務の効率的な管理および遂行
  • チーム、分野、および団体間のコラボレーションの推進
  • 理解と知識の向上
  • 効果的なコミュニケーション
  • ユーザの教育および動機付け

ArcGIS でできること

ArcGIS では次のことができます。

これらの各領域を確認してみましょう。

インテリジェント マップの作成、共有、および使用

マップは、大量の情報を誰もが理解できる形式で整理、認識、および伝達するための効果的な方法です。ArcGIS では、ブラウザやモバイル デバイスでアクセス可能な Web マップ、大判の印刷用マップ レイアウト、レポートやプレゼンテーションに含まれるマップ、地図帳、地図、アプリケーションに埋め込まれるマップなど、多様なマップを作成できます。公開のしかたにかかわらず、ArcGIS マップは、さまざまなソースからの地理情報と詳細情報の豊富なレイヤを表示、統合、および合成する、インテリジェント マップです。

ArcGIS マップのコラージュ

ArcGIS で作成するマップは、情報を表示するだけでなく、検索、解析、計画、管理をサポートする作業でその情報を利用できます。これは、ArcGIS における重要な概念です。つまり、マップは GIS 作業の最終的な成果であると同時に、この作業で使用されるツールでもあります。ArcGIS マップは、地理情報を視覚化、閲覧、解析、更新できる対話型のウィンドウです。ArcGIS では、マップを作成して情報を表示するだけでなく、パターンや関係を見つけて理解する、解析とモデリングを実行して特定の問題を解決する、状態を視覚化して追跡する、データ入力と処理を可能にする、アイデア、計画、設計を伝えるといった操作を行うことができます。

ArcGIS マップは、優れたベースマップで開始します。ArcGIS には、地形、衛星画像、道路、地勢、海洋など、見た目に美しい一連のベースマップが組み込まれています。水文、土地利用、地質など、特殊なベースマップも多数用意されています。独自のベースマップを作成することもできます。たとえば、市役所は、市の土地区画とインフラストラクチャを示す標準ベースマップを作成できます。ベースマップを選択した後、作業用データの豊富な情報を持つレイヤを追加し、シンボル、ラベル、および縮尺範囲を選択し、マップ フィーチャの主要な属性を表示するポップアップ ウィンドウを構成できます。マップの目的に基づいて、編集ツール、解析モデルへのアクセス、タイム スライダなど、追加のツールを構成できます。マップ テンプレートを使用すると、マップを簡単に作成できます。GIS マップが作成されると、マップを共有するすべてのユーザがこのマップにアクセスし、作業で利用できます。

画像をクリックすると、マップやアプリケーションに移動します。

地理情報の作成

ArcGIS では、複数のソースからのデータを単一の一貫した地理的ビューに合成できます。これらのデータ ソースには、地理データベースからの情報、DBMS (データベース管理システム) や他のエンタープライズ システムからのテーブル データ、ファイル、スプレッドシート、ジオタグ付き写真およびビデオ、KML、CAD データ、センサからのライブ フィード、航空写真、衛星画像などが含まれます。実際、地理的参照を持つ任意の情報 (住所、都市名、地番、GPS 座標など) を、マップに配置してアクセスすることができます。Esri、データ サプライヤ、および数千もの世界中の GIS 機関および組織によって提供される、すぐに使用可能な信頼できる地理データを含めることができます。

野生生物生息区域 - Deepwater Horizon/BP
この詳細なマップは、米国魚類野生生物 GIS チームによって、ミシシッピ キャニオン 252 (Deepwater Horizon/BP) 原油流出事故を受けて作成されました。このマップでは、ArcGIS Online IKONOS 画像、交通機関、天然資源、および郡境界を、連邦、州、地域の対策ユニット境界、緊急指令ポスト、緊急航空作戦ベース、および動物保護施設など、最新の対策配備の状況と結合しています。

ArcGIS では、高度なデジタイズを通じて地理データを簡単に作成することもできるため、フィーチャをマップに直接描画したり、システムの地理データベースに格納したりできます。データ収集および編集ツールには、テンプレートベースのフィーチャ パレットが含まれており、一貫性のあるデータ収集ができます。モバイルおよび Web テクノロジの使用を通じて、データ収集アプリケーションをフィールド スタッフに配布できます。また、住民から自治体へ落書きを報告するアプリケーションなどのように、一般市民が使用することもできます。これらの入力は直ちに GIS に統合され、調査、レポート、および作業指示の処理が行われます。このようなタイプのモバイルおよびクラウドソース マップは、GIS の最新データを収集して、緊急事態など、刻々と変わる事態に対応できる組織の能力を大きく高めます。

土地利用フィーチャ パレット
このマップでは、土地利用区画のレイアウトに土地利用タイプのフィーチャ パレットが使用されています。土地利用のさまざまな代替案を視覚化および解析するために、提案区画のスケッチ (アウトライン) を作成できます。

複数のソースからのデータをまとめられるというこの機能は、情報が絶えず変化している場合に特に役立ちます。これにより、状況マップとリアルタイムのライブ ダッシュボードを作成できます。データベースからの主要な操作レイヤは、センサ、他のエンタープライズ システム、または Web システムからストリーミングされるライブ更新でオーバーレイできます。これらのマップによって、組織の活動や人道的危機の最新の状況に関するわかりやすいレポートが提供されます。多くのユーザがアクセスできることで活動に関する共通認識が得られ、意思決定者、計画作成担当者、およびフィールド スタッフに最新の情報が伝えられます。

地理データベースの作成と管理

地理データベースは、専門的な GIS 作業の中核です。地理データベースにより、管理、更新、再利用、および共有を簡単に行うことができる構造化された形式で地理情報を格納できます。ArcGIS では、1 人での作業または大企業での作業にかかわらず、地理データベースを設計、作成、保守、および使用できます。地理データベースは、通常、GIS で使用されるデータの主要な基本レイヤ (土地区画、行政区域、公益設備のネットワーク、施設、水文、標高、土壌などのレイヤ) が保存および管理される場所です。 一元管理されるこれらのデータは、ArcGIS マップ内で無数の方法でシンボル表示、表現、処理、公開できます。

ArcGIS では、複数のユーザがデータを同時に使用および編集できる大型のマルチユーザ データベースをサポートしており、それぞれ異なるワークグループや部門に属する多くのユーザによるアクセス、管理、および更新が可能です。たとえば、バックオフィス ユーザとフィールド スタッフが同時に更新することができ、各グループは同僚が行った変更を即時に確認できます。このようなマルチユーザ データベースは、Oracle、SQL Server、PostgreSQL、Informix、DB2 など、標準のエンタープライズ リレーショナル データベース システムで実装され、サポートされています。

画像をクリックすると、マップやアプリケーションに移動します。

ArcGIS は、大規模なの地理データベースを簡単に管理できる多くのワークフローをサポートしています。 たとえば、親データベースとの接続を維持できないモバイルの状況で、データベースのエリアをモバイル デバイスにチェックアウトして、編集を行ってから親に戻すことができます。異なる支店で管理されているデータベースなど、複数のジオデータベースのレプリカ間でデータを複製することも可能です。各データベースで別々に行われる変更を、すべてのレプリカにわたって同期できます。履歴アーカイブも作成できるため、データへの変更を時系列で表示および記録できます。 これらのワークフローは、資産管理、地籍、インフラストラクチャ運用、公益設備のエンジニアリングなどのアプリケーションで特に重要です。

空間解析による問題の解決

空間解析は、GIS において最も興味深い側面の 1 つです。空間解析の目的は、適切な判断を行うために、データから新しい情報を取得することです。データをシンボル表示して、それをマップ上に表示すること自体が一種の解析であり、マップに表示されるパターンと関係が本質的に明らかになりますが、空間解析では、マップ データに地理的、統計的、および数学的な操作を適用することによって、これをさらに一歩進めています。ArcGIS には、広範な問題を解決するために適用できる数百もの解析ツールおよび操作が用意されています。その範囲は、特定の条件を満たすフィーチャを検索するといったものから、地形上の水の流れなどの自然作用のモデリングや、大気質や人口特性などの事象の分布についてサンプル ポイントのセットが表す内容を空間解析を使って判断するものまで、多岐にわたります。

ArcMap を使ってマップされた竜巻の影響モデル
この ArcGIS for Desktop 画面は、竜巻の影響を判断するために使用されたモデルと、このモデルの実行結果を示しています。

複雑さの程度にかかわらず、空間解析によって、この解析を使用しなければ見つからなかった可能性があるパターンと関係が明らかになり、単なるデータが実用的な情報へと変わります。複数のデータ ソースからの入力を結合してまったく新しい情報セットを作り出し、これを他のユーザと共有して、さらなる解析の入力として使用できます。空間解析の結果は、マップとレポートに表示できます。ArcGIS には、密度、分布、クラスタリング、フロー、近接、接続性など、空間プロパティを視覚化するための豊富なツールがあります。さらに、誰でも使用できるように、解析モデルと操作にアクセスできるマップおよびアプリケーションを作成することができます。

画像をクリックすると、マップやアプリケーションに移動します。

ArcGIS の主要な解析ツールには、異なるデータ レイヤのジオメトリと属性の結合に対するオーバーレイ、密度のマッピング、近傍を特定するクラスタ解析、近接解析、場所に応じて連続的に変化する事象を操作するサーフェス解析、および時間の経過による事象の変化を確認するための変化検出といった時間的解析があります。3D 解析では、地形や容量データを操作して、可視性や傾斜などを解析できます。 交通網および公益的なインフラストラクチャのネットワーク解析には、ルート検索、到達圏の取得、保有車両管理、スケマティックなどが含まれます。

ArcGIS における解析では、通常、最初に問題およびそれに関係する要因を提示し、次に入力データを集めて理解し、利用可能な一連の解析ツールから選択します。選択した手順での使用に適した形式に変換するために、データを処理することもあります。たとえば、サンプルの計測結果を表すポイント データを内挿して連続するデータ サーフェスを作成し、これを他のサーフェス データと結合できます。モデルおよびジオプロセッシング スクリプトを作成して複数のステップから成る手順を自動化でき、このモデルとスクリプトを GIS コミュニティ内で公開して、他のユーザと共有できます。

マップベース アプリケーションの作成

アプリケーションを作成することで、ArcGIS マップ、データ、ツール、および知識を、すべてのユーザが使用できる情報プロダクトに変えることができます。これによって、事実上、GIS 資産が開放され、そのマップおよび機能を、人々が多様な状況で利用できるようになります。

アプリケーションは、Web、デスクトップ コンピュータ、スマートフォン、タブレット、およびその他のモバイル デバイスに導入できます。マップベース アプリケーションは、一般ユーザからフィールド スタッフ、運用スタッフ、専門スタッフ、マネージャ、組織の幹部にまで幅広く使用されます。アプリケーションは、組織が提供するサービスを一般向けに紹介する Web アプリケーションのように汎用目的のものもあれば、フィールド エンジニア用のモバイル アプリケーションや運用マネージャ用のライブ ダッシュボードのように、専用のタスクおよび活動をサポートするように設計されたものもあります。

ArcGIS を使用して、マップと GIS 機能を既存のアプリケーションに追加することもできます。たとえば、保険会社の社内請求アプリケーションに、マッピング コンポーネントを埋め込むことができます。ArcGIS を使用して、Microsoft Sharepoint、COGNOS、SalesForce などのエンタープライズ ポータルにマップを埋め込むこともできます。

ArcGIS の重要な特徴として、アプリケーションを作成するのに開発者である必要がない点が挙げられます。たとえば、ArcGIS Online で Web マップを作成した場合、共有オプションを選択し、一連のアプリケーション テンプレートから選択することで、マップを Web アプリケーションに追加できます。これらのアプリケーションの構成は簡単です。

さまざまな業界向けのアプリケーション テンプレートが、ArcGIS Online のユーザ コミュニティにあります。そこには、汎用的なアプリケーション テンプレートも多数あります。たとえば、ArcGIS Online の Web アプリケーション テンプレート グループには、JavaScript で作成された構成可能なテンプレートが含まれています。

開発者には、一連の API (アプリケーション プログラミング インタフェース) と SDK (ソフトウェア開発キット) に加えて、コード サンプル ライブラリや、カスタム アプリケーションを作成するためのその他のリソースも提供されています。Web 上で、アプリケーションは、マップ サービスやジオプロセシング サービスなどの ArcGIS サービスを利用できます。 API は、JavaScript、Adobe Flex、および Microsoft Silverlight の API が用意されています。HTML5 もサポートされています。モバイル開発 SDK は、Apple iOS、Android、Windows Phone、および Windows Mobile 用です。 Desktop アプリケーションの場合、ArcGIS Runtime によってコンポーネントのコレクションと WPF および Java の API が提供されます。

画像をクリックすると、マップやアプリケーションに移動します。

地理と視覚化を活用した情報のコミュニケーションおよび共有

作業のコミュニケーションおよび共有は、GIS の最も有意義な部分かもしれません。あなたのマップを世界中の人が見たいと思っています。GIS は多くの理由で使用されていますが、1 つの利点は、GIS が強力なコミュニケーション ツールだと考えられることです。利用者が一般市民、計画作成担当者、経営幹部、選任官僚、顧客、学生、または同僚にかかわらず、結局のところ、利用者が見て理解できるように、GIS を使用する必要があります。ArcGIS システムおよび 10.1 リリースでは、作業の成果を簡単にやり取りしたり共有することができ、強力なマップ、視覚化、および機能をユーザの手に渡すことができます。ユーザが GIS の専門家である必要はありません。

ArcGIS マップは、ユーザフレンドリでパフォーマンスに優れた Web マップとしてインターネット上で公開でき、Apple iPad などのスマートフォンやタブレットでもアクセスできます。Web やモバイル デバイスでのマップの使用はすでに世界中で一般的なことであり、あなたのマップもすぐに利用されます。ArcGIS Explorer を使用すると、スライドから成るプレゼンテーション マップを作成でき、マップがオンラインでプレゼンテーションとして表示されます。このようなプレゼンテーションは、提案される新しい交通回廊のインタラクティブ ツアーの提供など、地理的なストーリーを話す上で効果的です。 PowerPoint とは異なり、このプレゼンテーション スライドは完全に動的です。そのため、ユーザは、次のスライドに進む前に、マップの画面移動やズームを行ったり、マップ フィーチャをクリックしてその詳細を知ることができます。

ストーリー マップと呼ばれる、新しいタイプのマップベース情報を作成することができます。これは、特定のテーマやトピックに焦点を当てた、見栄えが良くて使いやすい Web アプリケーションです。世界中の人、市長、または会社幹部にかかわらず、人に興味を抱かせたり、教育するのに最適です。

他のストーリー マップを見るには、Storytelling with Maps ホーム ページにアクセスしてください。

ArcGIS には、写真のようにリアルに都市を描画するツールなど、3D 視覚化を作成するための素晴らしい新しいツールが含まれています。これらの 3D マップには地理データベースの信頼できるデータが結合されており、3D 視覚化の充実した機能と十分な理解に基づいて、データを 3D で検索することができます。解析結果などのデータのフライスルーを示したり、時間の経過に伴う変化を簡単に視覚化できる、美しいアニメーション ビデオを作成することができます。

3D リソースの詳細については、3D コミュニティをご参照ください。