森林樹冠密度および高さの推定
森林樹冠密度と高さは、生態的多様性の推定、植生のカバレッジ、および生態的多様性の判定など、多くの環境アプリケーションで変数として使用されます。樹冠密度または樹冠被覆とは、空中から見た、地表に対する植生の比率です。樹冠の高さは、地表から樹冠頂上までの高さを計測したものです。これらの変数の両方を決定する際は、LIDAR を使うのが有効です。
以下に、LIDAR ポイントから樹冠密度および高さを計算する手順を示します。最初に必要とされるのは、地表リターン(地表)と地表以外のリターンに分類されている LIDAR データです。このようなポイント タイプの分類は、通常、データ プロバイダによって行われます。次に、調査領域で LIDAR データが取得された時期と植生のタイプを検討する必要があります。多数の落葉樹が存在し、データ取得が秋(落葉)の期間に行われた場合、密度の計算は無効になります。
LAS データセットとレイヤの作成
LAS データセットを使用して、樹冠密度および高さを計算することができます。[LAS データセットの作成(Create LAS Dataset)] ジオプロセシング ツールを使用して LAS 形式の LIDAR データを参照します。ASCII データを使用している場合、またはジオデータベースで LAS ベースのポイントを使用したい場合は、このトピックの最後にある「代替ワークフロー」のセクションをご参照ください。LAS データセットを作成したら、LAS ファイル内のどのポイントを使用するかを制御するフィルタ プロパティを、レイヤを使用して定義します。レイヤを作成するには、データセットをマップに追加するか、[LAS データセット レイヤの作成(Make LAS Dataset Layer)] ジオプロセシング ツールを実行します。レイヤを定義するときには、すべてのリターンを選択し、クラス コードに焦点を絞ります。基本的には、地表のポイントと地表以外のポイントという 2 セットのポイントを使用します。通常、LAS ポイントは、ASPRS(American Society for Photogrammetry and Remote Sensing)で概略が規定されている LAS 1.1 標準によって定義されたスキーマによって分類されます。
分類コード |
分類タイプ |
---|---|
0 |
分類不可 |
1 |
未分類 |
2 |
地表 |
3 |
低植生 |
4 |
中植生 |
5 |
高植生 |
6 |
建物 |
7 |
ノイズ |
8 |
モデル キー |
9 |
水域 |
10 |
ASPRS 定義用に予約 |
11 |
ASPRS 定義用に予約 |
12 |
オーバーラップ |
13–31 |
ASPRS 定義用に予約 |
過去数年間に作成された分類済みの LAS ファイルは、これらのコードを使用しています。残念なことに、まだ、あいまいな部分が残っています。たとえば、クラス 2 は地表ですが、クラス 8 で定義されたモデル キー ポイントも地表面計測を表す場合があります。モデル キー ポイントは特殊な計測セットで、間引きされない任意の詳細情報を捕捉します。これらのポイントを設定するかどうかは、データがどのように処理されたかによって決まります。データがどのように処理されたかがわからない場合は、両方のクラスを指定してください。モデル キー ポイントがまったく存在しないことが判明した場合でも、それが問題になることはありません。植生の場合も、同様な問題が存在します。ベンダーによっては、詳細な分類は行わないという理由で、地上にあるすべてのものをクラス 1 に分類する場合があります。したがって、データ分類の細部が不明な場合は、クラス 1、3、4、および 5 を使用して地表以外のポイントを選択します。これは、多様な対応が可能な、植生ポイントの妥当な取得方法です。建物やその他の人工的な地表以外のフィーチャがクラス 1 に属する場合は、それらのフィーチャも含まれてしまい、出力に多少の不備が生じる点に注意が必要です。
密度の計算
樹冠密度を求める最も効果的な方法は、ラスタ化を通じて調査領域を多数の小さな同サイズの単位に分割することです。各ラスタ セルについて、ポイントの総数と地表以外のポイント数を比較します。
この段階における処理上の重要なポイントは、この解析用に適切な [セル サイズ] を指定することです。セル サイズは平均ポイント間隔の少なくとも 4 倍の値にする必要があります。これより大きい値を指定することはできますが、これよりも小さい値は指定できません。
- 地表以外のポイントに対して [LAS ポイント統計をラスタに出力(LAS Point Statistics As Raster)] ジオプロセシング ツールを、POINT_ COUNT オプションを指定して使用します。
- 出力に NoData セルが存在している場合は、ポイントを含んでいないセルが以降の操作で 0 と見なされるようにそれらの NoData セルを 0 に変換します。これを行うには、[IsNull] ジオプロセシング ツールを使用した後に、続いて [Con] ジオプロセシング ツールを使用します。
- LIDAR 地表マルチポイントについてステップ 1 と 2 を繰り返します。
- [Plus] ジオプロセシング ツールを使用して、セル当たりのポイント総数を求めるために地表以外と地表のラスタを合算します。
- これまでに作成したすべてのラスタはすべて long データ タイプです。ステップ 6 で使用する [Divide] ジオプロセシング ツールから浮動小数点出力を得るために、1 つのラスタを浮動少数点にする必要があります。float タイプのラスタを生成するには、[Plus] ジオプロセシング ツールからの出力ラスタを [Float] ジオプロセシング ツールへの入力として使用します。
- この段階で、[Divide] ジオプロセシング ツールを使用して、地表以外ポイント数ラスタと総ポイント数ラスタを比較します。後者が保持するデータは浮動小数点数です。これにより、0.0 ~ 1.0 の比率が示されます。0.0 は樹冠が存在しないこと、1.0 は樹冠密度が非常に高いことを表しています。
以下の図は樹冠密度を表しています。最も明るいエリアには植生がほとんど存在していません。これらは、LIDAR ショットが高い比率で地表から反射されたエリアです。暗い緑色のエリアは、LIDAR が地表まで貫通できなかったエリアで、植生樹冠密度が高いことを示しています。
高さの計算
樹冠の高さを求めるには、ファースト リターンのサーフェス(DSM)から地表のサーフェス(DEM)を減算する必要があります。トピック「大規模 LIDAR ポイント コレクションからのラスタ DEM および DSM の作成 」の手順に従って、これらの 2 つのサーフェスを生成します。
- 最初のリターン ラスタと地表のラスタを生成したら、[Minus] ジオプロセシング ツールを使用して、これらの 2 つのラスタ データセット間の差を求めます。この差の値が、森林を覆う樹冠の高さを表しています。
以下の図は地表からの高さを示しています。高さは青(ほとんど高さがない)からオレンジ(最も高い)までの範囲で示されています。
LIDAR を使用して、植生の密度および高さを求めることができます。これは、バイオマスおよび炭素排出力の推計や森林の管理など、さまざまな用途で役立ちます。
代替ワークフロー
LIDAR ポイントが ASCII 形式の場合は、地表ポイントのみを含むファイルと、地表以外のポイントのみを含むファイルの 2 セットのファイルが必要になります。ファイルがこのように構成されている場合は、[ASCII 3D → フィーチャクラス(ASCII 3D To Feature Class)] ジオプロセシング ツールを使用して、ポイントをジオデータベースのマルチポイント フィーチャクラスに読み込む必要があります。このツールをファイルのセットごとに 1 回ずつ、計 2 回実行します。次に、上述した LAS データセットによるワークフローで使用した [LAS ポイント統計をラスタに出力(LAS Point Statistics As Raster)] ツールの代わりに、[ポイント → ラスタ(Point to Raster)] ジオプロセシング ツールを実行します。
LAS 形式のデータがあるが、必要なポイントのみをジオデータベースに読み込み、そこから作業したい場合には、[LAS → マルチポイント(LAS to Multipoint)] ジオプロセシング ツールを 2 回使用します。地表ポイントを読み込むために一度、次に地表以外のポイントを読み込むためにもう一度実行します。次に、上述した LAS データセット ベースのワークフローで使用した [LAS ポイント統計をラスタに出力(LAS Point Statistics As Raster)] ツールの代わりに、[ポイント → ラスタ(Point to Raster)] ジオプロセシング ツールを実行します。