ArcGIS Server 10.0 から新バージョンへの移行

ArcGIS for Server のアーキテクチャはバージョン 10.1 で大きく変更されました。したがって、10.0 以前のバージョンからバージョン 10.2.2 に移行する場合は、次のガイドラインに注意してください。10.1 以降のバージョンを ArcGIS 10.2.2 for Server にアップグレードする場合、次の移行ガイドラインは適用されません。代わりに、「既存の ArcGIS for Server ユーザ」で、アップグレードに関するよくある質問と、詳細なアップグレード手順が記載されたトピックへのリンクをご参照ください。

10.0 以前のバージョンから 10.2.2 に移行する準備ができている場合は、移行チェックリストを確認して作業を開始してください。

移行方法

ArcGIS Server のバージョン 10.0 から移行する最も簡単な方法は、10.2.2 を 1 台または複数の新しいコンピュータにインストールすることです。そうすることで、新しい ArcGIS Server サイトの作成中に、既存のアプリケーションとサービスのプロパティに立ち戻り、それらを参照できます。また、移行したサイトをテストして、準備が整えば直ちにトラフィックをそのサイトにリダイレクトできるため、ダウンタイムが最小化されます。

これ以外の配置済みコンピュータを移行する方法では、10.0 ソフトウェアをアンインストールし、10.2.2 をインストールし、サービスを再配置し(自動で行われない)、アプリケーションを更新する間、ある程度のダウンタイムを必要とします。配置済みコンピュータを移行する場合は、アンインストール前のサービス構成について慎重な注意が必要になります。「移行チェックリスト」には、記録しておく必要のある必須プロパティと、バックアップする必要のあるファイルの一覧が記載されています。

配置済みコンピュータを移行する必要がある場合、本番サーバで作業する前に、開発サーバまたは仮想コンピュータ上で試行することをお勧めします。

10.1 から 10.2.2 への移行では、10.1 をアンインストールする必要がないため、配置済みコンピュータを移行する方法が便利です。ただし、この場合も、移行したサイトをエンド ユーザに公開する前に十分なテストを実行する必要があります。

GIS サーバおよびサービス

サーバ URL の維持

デフォルトでは、ArcGIS Server サイトはポート 6080 を通じて Web サービスを公開し、「arcgis」というサイト名を使用します。作成したサービスの URL には、ポート 6080 と「arcgis」が含まれます。以下に例を示します。

ArcGIS for Server のバージョン:

URL の例

10.0 以前

http://gisserver.domain.com/planners/rest/services/MyMapService/MapServer

10.1 以降

http://gisserver.domain.com:6080/arcgis/rest/services/MyMapService/MapServer

10.0 の URL を新しいバージョンの ArcGIS Server でも使用する場合は、ArcGIS Web Adaptor をインストールする必要があります。ArcGIS Web Adaptor を使用すると、ArcGIS Server とエンタープライズ Web サーバが接続され、バージョン 10.0 の配置に合わせたサイトの URL を構成できます。詳細については、「ArcGIS Web Adaptor について」をご参照ください。

サービスの移行

バージョン 10.0 のサービスは、新しいバージョンに自動では移行されません。これらのサービスの移行パスは、新しいバージョンを使用して再度作成することになります。新しいバージョンでは、公開するアイテムに対してより厳密な解析プロセスが実行され、サーバ上に効率的に公開できる状態であるか確認されます。この解析プロセスは時間がかかる場合がありますが、10.1 で導入されたさまざまな変更にサービスを適合させるのに役立ちます。また、サービスのパフォーマンスを向上する方法も見つけやすくなります。

マップ キャッシュとグローブ キャッシュの移行

ArcGIS Server 10.0 以前のバージョンで作成したマップ キャッシュとグローブ キャッシュは、それ以降のバージョンでも使用できます。唯一の例外はマルチレイヤ キャッシュで、これは 10.0 より後のバージョンではサポートされていません。マルチレイヤ キャッシュがある場合は、それを一連の融合キャッシュとして再構築する必要があります。

マップ キャッシュを移行するには、次の手順に従います。

  1. 新しい ArcGIS Server サイトで、10.0 のキャッシュを保持しているフォルダを参照するサーバ キャッシュ ディレクトリを作成します。サーバ キャッシュ ディレクトリを作成する手順については、「ArcGIS Server Manager でのサーバ ディレクトリの作成」をご参照ください。または、10.0 のキャッシュを既存のサーバ キャッシュ ディレクトリに移動することもできます。すべての ArcGIS Server サイトに、少なくとも 1 つのサーバ キャッシュ ディレクトリが作成されます。
  2. ArcMap で [ファイル] [共有] [サービス] のウィザードを使用して、既存のキャッシュと同じ名前を持つサービスの作成を開始します。[サービス エディタ] ダイアログ ボックスが表示されたら、中止して次の手順に進みます。[公開] はまだクリックしないでください。既存のキャッシュの名前にアンダースコア(_)がある場合、GIS サーバ フォルダにサービスを作成する必要があります。この場合、<フォルダ名>_<サービス名> というパターンに従います。
  3. [サービス エディタ] ダイアログ ボックスの [キャッシュ] タブで、[キャッシュ ディレクトリ] プロパティを変更して、手順 1 で登録した移行されたキャッシュ ディレクトリを指すようにします。
  4. [サービス エディタ] ダイアログ ボックスの[キャッシュ] タブで、既存のタイルの縮尺をすべて含むように最小キャッシュ縮尺および最大キャッシュ縮尺のスライダを変更します。
  5. [サービス エディタ][公開] をクリックしてサービスを公開します。

キャッシュ スクリプトの移行

マップまたはグローブ キャッシュの作成や更新をジオプロセシング スクリプトで行っていた場合、10.1 では [キャッシュ] ツールセットの多くのツールで、パラメータの順序、名前、データ タイプが変更されているので注意してください。スクリプトの更新方法については、「ジオプロセシング ツール リファレンス」のトピックと例を慎重に確認してください。

コードのサーバ オブジェクト エクステンション(SOE)への移行

10.1 より前のバージョンでは、多くの開発者は Web ADF によってローカル(DCOM)接続を作成して、ArcObjects にアクセスしていました。ArcGIS Server へのこれらのローカル接続は、10.1 から使用できなくなりました。その代わりに、サーバ オブジェクト エクステンション(SOE)を開発して、それらを REST Web サービスとして公開できます。SOE によって拡張された GIS サービスは、ArcGIS Services Directory に表示して、ArcGIS Web Mapping API を通じて使用することができます。

SOE の開発の詳細については、「サーバ オブジェクト エクステンションとは」をご参照ください。

既存の SOE の移行

前述したように、ArcGIS Server のローカル接続で使用していた SOE はバージョン 10.1 以降では使用できないため、REST または SOAP Web サービスとして再構築する必要があります。

バージョン 10.0 以前で REST または SOAP Web サービスの SOE を開発していた場合は、新しいバージョンで SOE を使用する前に、64 ビット ライブラリを参照できるように SOE を構築または再構築する必要があります。また、SOE を配置できるように、SOE を *.soe ファイルとしてパッケージ化する必要もあります。このパッケージ化には、ArcGIS Server に付属している SOE の IDE テンプレートを使用できます。この手順については、「Java サーバ オブジェクト エクステンションを 10.2.2 に移行」および「.NET サーバ オブジェクト エクステンションを 10.2.2 に移行」をご参照ください。

前述したように、ArcGIS Server のローカル接続を使用する SOE はバージョン 10.1 以降と互換性がないため、REST または SOAP Web サービスとして再構築する必要があります。

セキュリティを適用している場合の移行

ArcGIS Server は、セキュリティ設定を前のバージョンから自動的に移行しません。これは、セキュリティ設定を完全に移行するために必要な、以前のインストールのセキュリティ構成について、ArcGIS Server は十分な情報を認識できないためです。ArcGIS Server 10.0 のセキュリティ ストアを SQL Server で管理していた場合は、「10.0 .NET SQL Server セキュリティ ストアの 10.2.2 での使用」に記載された指示に従って、セキュリティ ストアを手動で移行できます。

セキュリティは ArcGIS Server をインストールしたときに、すでに有効になっています。デフォルトでは、匿名ユーザがサービスを使用できるようになっています。ArcGIS Server Manager にいつでもログインして、セキュリティに使用するユーザおよびロール ストアを指定できます。そして、サービスに対する権限を制限できます。詳細については、「ArcGIS Server のセキュリティの構成」をご参照ください。

Web アプリケーションの移行

バージョン 10.1 以降、ArcGIS Server Manager はサービスのホストと管理に特化しています。Web アプリケーションは構築できません。GIS Web アプリケーションをコードを記述せずに構築したい場合は、ArcGIS Viewer for Flex または ArcGIS Viewer for Silverlight を使用できます。これらには対話式のアプリケーション ビルダが付属しており、前のリリースで ArcGIS Server Manager を使用して Web アプリケーションを構築したように、目的のフィーチャをポイントおよびクリックして Web アプリケーションを設計することができます。

アプリケーションを構築およびホストしないで Web 上でマップを共有したい場合は、ArcGIS.com マップ ビューアを使用できます。これは、Web サービスベースのマップをオンラインで作成および共有できるオンライン キャンバスです。開始するには、ArcGIS.com で [マップ] をクリックします。

前のバージョンの ArcGIS Server に付属していた Web ADF(Application Developer Framework)は廃止されました。新しい Web アプリケーションを記述するときは、JavaScript、Flex、および Silverlight に対応した ArcGIS Web Mapping API を使用してください。これまで ADF で実行できた印刷、編集、その他のタスクは、ArcGIS Web Mapping API を使用しても簡単に実行できます。

移行に関する一般的な質問

ここでは、移行時に発生する可能性がある一般的な質問を取り上げ、考えられる解決策を提示します。探している問題が見つからない場合は、「Esri Support Center」で記事を検索してみてください。

各種 ArcGIS コンポーネントをどのような順序でアップグレードすればよいですか?

ArcGIS for DesktopArcGIS for Server が複数のコンピュータに分散されている場合は、各種 ArcGIS コンポーネントを段階的にアップグレードできます。たとえば、次の手順に従います。

  1. いくつかのArcGIS for Desktop クライアントをアップグレードします。このアップグレードが正常に実行されたことを確認した後で、すべての ArcGIS for Desktop クライアントをアップグレードします。
  2. ArcGIS for Server をアップグレードします。

ArcGIS for Server をアップグレードすると同時にオペレーティング システムもアップグレードする必要がありますか?

ArcGIS for Server は 64 ビット アプリケーションで、64 ビットのオペレーティング システムが必要です。32 ビットのオペレーティング システムを使用している場合、ArcGIS for Server をインストールする前に、64 ビットのオペレーティング システムにアップグレードする必要があります。

使用するオペレーティング システムが ArcGIS for Server でサポートされているかどうか不明の場合は、ArcGIS for Server のシステム要件をご参照ください。

ArcGIS Server サイトを作成するときに、以前のリリースで使用していたサーバ ディレクトリを再使用できますか?それとも、新しいサーバ ディレクトリのパスを入力する必要がありますか?

サイトを作成するときに、サーバディレクトリのルート位置の入力を求められます。自動的に作成される空のディレクトリを配置する新しい場所を指定するか、以前のリリースのサーバ ディレクトリが含まれる場所を指定することができます。

以前のサーバディレクトリを再使用する場合、Web サーバ管理ソフトウェアを使用して、以前のリリースのサーバ ディレクトリに関連付けられていた仮想ディレクトリを削除します。バージョン 10.1 以降では、ArcGIS Server が自動的にディレクトリ仮想化を処理します。そのため、古い仮想ディレクトリは不要です。

サーバディレクトリに、エクスプロード格納形式のマップ キャッシュが格納されている場合、サイトの作成に時間がかかることがあるため、注意してください。サイト作成処理では、ArcGIS Server のアカウントの権限がキャッシュ フォルダに適用されます。大規模なエクスプロード格納形式のキャッシュの場合、この処理に長時間かかることがあります。

以前のリリースの SOC アカウントには、すでにデータフォルダに対する権限があります。10.2.2 をインストールするときに、このアカウントを ArcGIS Server を実行するアカウントとして再使用できますか?

バージョン 10.0 以前の ArcGIS Server では、SOC アカウントと呼ばれるアカウントを作成し、すべてのデータ フォルダに対する権限をそのアカウントに付与する必要がありました。SOC アカウントとその権限がすでに存在する場合、それを選択すれば、ArcGIS Server を実行するアカウントとして指定できます。そうすることで、移行中に実行する必要のある権限の再割り当て作業を減らすか、なくすことができます。

6/13/2014