コンターおよび傾斜角解析における LIDAR からのノイズの最小化

LIDAR は標高データの正確な形式として推奨されています。これは、大部分が、LIDAR の高密度のサンプル間隔に由来しています。LIDAR は、標高の計測値による地表の描画とも言われることがありますが、実際に、LIDAR を使った 1 メートル未満のサンプリングは一般的に行われています。これにより、樹冠の透過が容易になり、森林領域の地表モデルの精度が向上します。また、サンプル密度が高いと、氾濫原の作図などの特定の用途における結果の出力が改善されます。ただし、LIDAR は、常にすべてのサーフェス モデリング作業に最適のソースであるとは限りません。問題が発生しがちな 2 つの領域は、コンターおよび傾斜角解析です。

扱いにくいコンターと急傾斜

コンピュータで従来のデータ ソースからきれいなコンターを生成するのは非常に困難な作業です。LIDAR から作成する場合は、さらに困難になります。最大解像度の LIDAR から生成されたコンターは、ねじれ/ターンや孤立した閉じたリングが多数含まれるギザギザした外観になりがちです。

最大解像度の LIDAR から得られたコンター

LIDAR データによる傾斜角の評価もまた、問題が存在しています。最大解像度の LIDAR から平均傾斜角を調べると、その値が著しく高いことに気付きます。これは、比較的平坦な地表上の場合にも当てはまります。最大解像度の LIDAR から生成された傾斜角を示す以下の図をご参照ください。緑色はほとんど平坦な傾斜、黄色は中程度の傾斜、赤色はもっとも急な傾斜を示しています。黄色と赤色の部分がサーフェス全体に大量に散らばっています。

LIDAR からの傾斜角解析

これらのコンターと傾斜角の問題を単純に LIDAR がサーフェス データの他の形式よりも精度が高い結果であると誤解する人もいます。たしかに、十分な大きさの縮尺であれば、ほとんどすべてのサーフェスは適正な粗さになります。この言い分には一理ありますが、実際には、問題の大部分は水平サンプル密度と垂直精度の関係から生じています。あらゆる計測テクノロジの場合と同様に LIDAR も完全に正確なわけではありません。通常、LIDAR の垂直精度の範囲は 12 ~ 15 センチメートルです。これが、2 つの隣接ポイント間で 24 ~ 30 センチメートルにもなるランダムな高さの差を生み出しています。2 つのポイント間の水平距離が 1 メートル未満の場合、それらの高さの差分はきわめて大きくなります。これは、信号処理の観点から高頻度ノイズと呼ばれています。

ノイズを低減する方法

ぎざぎざの少ないコンターとより適切な傾斜角の推定値を取得するには、LIDAR からノイズを除去するとともに、除去しているときに失われる現実の情報を最小限に抑える必要があります。情報の損失を完全に防ぐことは不可能ですが、損失を最小限に留めることはできます。テレイン データセットについては、この処理を可能にするツールが 2 つ用意されています。1 つは効率的なポイント間引きであり、もう 1 つは高品質内挿法です。LIDAR が LAS 形式で、モデルキー(クラス 8)ポイントを含むように分類されていることが分かっている場合は、このトピックの最後にある「代替ワークフロー」のセクションをご参照ください。

ポイントの間引きはテレイン ピラミッドの構築過程で実施されます。ピラミッドのことを厳密には描画速度を向上するためにだけ使用される視覚化ツールであると考える人もいますが、これはラスタ ピラミッドに該当するものであって、テレイン データセットには当てはまりません。テレイン データセットは、LIDAR がジェネラライズされている場合は用途によって LIDAR の使用がより適切な場合があることを承知の上で設計されたものです。

ArcGIS では、Z 許容値ピラミッド化ウィンドウ サイズ ピラミッド化という 2 つのテレイン データセット用ポイント間引きアルゴリズムが提供されています。いずれのアルゴリズムも、固有の機能を提供でき、おそらく、その他のソリューションで使用されるランダムなポイント フィルタよりも優れています。ポイント フィルタでは、高速かつ妥当な視覚化が可能ですか、解析に使用するような内容は得られません。

Z 許容値フィルタは、最大解像度のサーフェスまでの指定の垂直距離内にあるサーフェスの作成用に十分な数のポイントのサブセットを検出するために TIN ベースのアルゴリズムを採用しています。垂直精度の定量化可能な計測が必要な場合はこのフィルタの使用をお勧めします。

ウィンドウ サイズ フィルタは、指定の水平サンプル距離内にあるポイント群を選択します。XY(サンプリング ウィンドウ サイズ)内の多数の単位ごとに、その領域内にあるポイント群が調べられ、選択したオプションに応じて 1 つまたは 2 つのポイントが選択されます。ポイント選択の方法としては、サンプル ウィンドウ内の残りのポイント群の平均値に最も近いポイントが選択されるか、またはサンプル ウィンドウ内の最も高いポイントまたは最も低いポイントのいずれかまたは両方が選択されます。前述のように、ノイズの問題の多くは、高い水平サンプル密度と垂直精度の不適切な比率に起因しています。ウィンドウ サイズ フィルタを使用すると、この比率を改善できます。間引き処理されたデータの精度を定量化することは困難ですが、この手法が効果的であることは経験的に実証されています。

データの間引き

LIDAR ポイントの間引きはテレイン データセットの構築時に実施されます。適用されるフィルタ アルゴリズムは、テレイン データセット用に選択されるピラミッドのタイプに基づきます。幸い、フィルタ アルゴリズムと同じ名前がピラミッドのタイプにも使用されるので、間違えることはありません。ピラミッド タイプは、ArcCatalog のそのフィーチャ データセットのショートカット メニューまたはカタログ ウィンドウにあるテレイン ウィザードを使用して選択します。

テレイン ピラミッド タイプ

次に、ピラミッド レベルを指定する必要があります。ノイズ低減のためには、最大解像度から 1 ステップ削除される最初のピラミッド レベルを選択します。このレベルでは、データの垂直精度と等しい Z 許容値が妥当な選択です。これにより、最大限のノイズを削除できると同時に、結果の精度の低下を最小限に抑えることができます。15 センチメートルの垂直精度で始めると、結果は約 30 センチメートルの精度になります。したがって、コンターの作成を続ける場合は、コンターの間隔をこの値の少なくとも 2 倍、つまり 60 センチメートル(約 2 フィート)以上に設定してください。ウィンドウ サイズのピラミッドの構築時は、名目ポイント間隔の 2 倍に相当するサンプル距離が妥当です。

ピラミッド レベルの指定

テレイン データセットの構築後は、間引き処理されたポイント群がピラミッド内に存在します。[サーフェス コンター(Surface Contour)][サーフェス傾斜角(Surface Slope)] ジオプロセシング ツールを使用して、コンターと傾斜角を生成します。間引き処理されていないポイント群から作成した場合と比べて、結果の出力に含まれるノイズは少なくなります。ただし、これらの TIN ベースのサーフェスから作成されたコンターと傾斜角の推定はなお、必要以上に角張った不連続な外観になります。別の方法として推奨されるのは、結果がより滑らかな外観になるラスタの使用です。

ラスタ内挿

コンターと傾斜角の出力は、テレイン データセットから作成されたラスタから取得することで改善できます。エンジニアは TIN を直接操作することに昔ながらの偏見を持っているため、ラスタを使用するという考えは好ましくないかもしれません。しかし、特に LIDAR データから生成されたコンターおよび傾斜角を扱う場合、このような偏見は不当なものです。この 1 つの理由は、LIDAR ポイントが基本的にはランダムな分布から収集され、結果として得られる三角形は、CAD パッケージ内で作成される一部の数学モデル(道路設計用など)に適合するよう選別または保証されていないことです。

さらに、三角形の平面のフェイスによって定義される線形の区分的サーフェスは滑らかにはなりません。より滑らかなサーフェスを作成するには、Natural Neighbors 内挿法オプションを指定した [テレイン → ラスタ(Terrain to Raster)] ジオプロセシング ツールを使用します。[テレイン → ラスタ(Terrain to Raster)] を使用するもう 1 つの利点は、テレイン データセット全体を一度にラスタ化できるため、TIN 抽出に関連するサイズの制約を回避できるということです。

テレイン → ラスタ(Terrain to Raster)

テレイン データセットのラスタ サーフェス モデルを生成したら、その取得したラスタについて [コンター(Contour)][傾斜角(Slope)] ラスタ ジオプロセシング ツールを使用できます。以下の図は、最大解像度の場合とジェネラライズされた場合のコンターと傾斜角の派生オブジェクト間の違いを示したものです。

最大解像度のコンタージェネラライズされたコンター

左側には最大解像度の LIDAR から作成されたコンター、右側には間引き処理された集まりのラスタ化バージョンを示しています。結果の出力は、明らかにカートグラフィック品質ではないにしても、大きく改善されています。

最大解像度の傾斜角ジェネラライズされた傾斜角

左側には最大解像度の LIDAR から作成された傾斜角、右側には少し間引き処理され、ラスタ化された傾斜角を示しています。

LIDAR は、水平サンプル距離を基準とする垂直精度が低いことからノイズが多いと考えられています。このようなノイズの存在が、低品質のコンターや極端に高い平均傾斜角の比率につながっています。ノイズは、精度や詳細情報をほとんど失うことなく、ポイントの間引きやスムージングによって低減できます。テレイン データセットについては、ピラミッド化や Natural Neighbor 内挿法を使用したツールが用意されています。

代替ワークフロー

LIDAR が LAS 形式で、モデルキー(クラス 8)ポイントを使用して分類されている場合は、コンターおよび傾斜角解析に適した間引きされたポイント セットを取得するためにテレインのピラミッド化処理を行う必要はありません。この作業はすでにデータ ベンダーによって実行されています。その場合には、LAS データセットを使用して LAS ファイルを直接参照し、使用することができます。このトピックの前のセクションをよく読んで基本的な概念を理解した上で、以下のステップを置き換えて、コンターと傾斜角の取得元になるラスタを作成します。

手順:
  1. [LAS データセットの作成(Create LAS Dataset)] ジオプロセシング ツールを使用して、LAS ファイルとブレークライン(存在する場合)を参照するデータセットを作成します。
  2. LAS データセット レイヤを作成し、クラス 8 ポイント(およびすべてのリターン)のみを使用するようにフィルタ プロパティを設定します。レイヤを作成するには、LAS データセットをマップまたはシーンに追加するか、[LAS データセット レイヤの作成(Make LAS Dataset Layer)] ジオプロセシング ツールを実行します。
  3. [集約タイプ][NATURAL_NEIGHBOR] に設定して、[LAS データセット レイヤの作成(Make LAS Dataset Layer)] ジオプロセシング ツールを実行します。出力セル サイズにも、入力の平均ポイント間隔より大きい値を設定します。
9/14/2013