テレイン ピラミッド
ピラミッドは、一部のアプリケーションにおいて処理効率向上を図るためにテレイン データセット用に生成される詳細レベルです。ピラミッドは、縮尺による一般化の一形式として使用されます。ピラミッド レベルは、精度要件が縮尺によって緩和されることを利用します。それらの概念と目的はラスタ ピラミッドと似ていますが、実装は異なります。
テレイン ピラミッドは、ポイントの間引きと呼ばれるポイント削減プロセスを通じて生成されます。これにより、特定のエリアのサーフェスを表すために必要な計測値の数を削減します。ピラミッド レベルごとに使用される計測値が少なくなり、それに応じてサーフェスの表示に必要な精度要件が低下します。元のソース計測値も低解像度ピラミッドで使用されますが、その数は少なくなります。ピラミッドには、リサンプリングしたデータ、平均化したデータ、または派生したデータは使用されません。
ピラミッドの作成には時間がかかるので、どのように使用するのが最も効果的かについて検討する必要があります。
ピラミッド レベルの潜在的な用途
- ArcMap および ArcGlobe でテレイン レイヤを表示する
- テレインをラスタ化する
- テレイン データセットから TIN サブセットを抽出する
- [3D Analyst] ツールバーのサーフェス解析ツールを使用する
- ジオプロセシング サーフェス解析ツールを使用する
ピラミッド タイプには、Z 許容値とウィンドウ サイズの 2 通りがあります。Z 許容値ピラミッド タイプは、テレイン サーフェス解像度の定義に垂直方向の許容値を利用します。各ピラミッド レベルは、フル解像度データに対する概算の高さ方向の精度です。ウィンドウ サイズ ピラミッド タイプを使用すると、水平サンプル密度を制御する、各ピラミッド レベルの縮尺範囲の等面積ウィンドウによって解像度が定義されます。
テレイン データセットを定義する際には、目的のピラミッド タイプに必要なピラミッド レベルの数を指定する必要があります。ピラミッド レベルごとに、基準縮尺と垂直方向の許容値またはウィンドウ サイズを指定します。基準縮尺は閾値です。ピラミッド レイヤを使用して、その基準縮尺から次に解像度の低いレベルの基準縮尺までのテレインを表します。ピラミッドの作成に伴う主なコストは、ピラミッドの数よりも、使用される垂直方向の最小許容値またはウィンドウ サイズに関連しています。
ピラミッドを使用する理由
ほぼ一定の大きな表示縮尺でテレイン計測値をフル解像度で使用するだけの場合、マルチレベル ピラミッドを生成する必要がないこともあります。たとえば、大きな縮尺のアプリケーションのために LIDAR または SONAR データからラスタを作成する、または履歴管理のためにソース計測値を格納および更新するためにテレインを使用する場合、あえて処理コストを増やす必要はありません。これに対し、縮尺範囲にわたってパフォーマンスを改善するために間引きしたデータを使用したい場合は、マルチレベル ピラミッドが役立ちます。
テレイン ウィザードには、デフォルト値を推定する [ピラミッド プロパティの計算] ボタンが用意されています。これを出発点として使用し、データに関する知識を基に、改良と修正を行います。
Z 許容値ピラミッド タイプ
Z 許容値ピラミッド タイプは、フル解像度データを基準に、各ピラミッド レベルの垂直方向の精度を制御します。ピラミッド レベルの垂直方向の精度は、フル解像度ソース データの精度に常に比例します。たとえば、ソース データの既知の垂直方向の精度が 0.5 フィートで、最初のピラミッドの z 許容値が 1 フィートの場合、最初のピラミッドの絶対精度は 1.5 フィートです。
必要なピラミッド レベルの数と、それぞれの Z 許容値を決定する必要があります。これらの決定に影響をおよぼす主な要因には、使用するテレイン データセットの縮尺範囲、z 範囲、およびテレイン内の高さの変動があります。ピラミッド レベルを定義するために使用できる方法の 1 つは、コンター マップ モデルに従うことです。
Z 許容値ピラミッド レベルの定義
コンター マップ モデルを使用したピラミッド レベルの定義:
- テレインからコンター マップを構築するために使用する標準的なマップ縮尺セットについて検討します。
- 最大縮尺から最小縮尺までを設定します。各縮尺に適したコンター間隔を指定します。テレイン データセット ピラミッドにこれらの設定を適用します。
- 各マップ縮尺のピラミッド レベルを定義し、各レベルの縮尺閾値を対応するマップ縮尺に設定します。z 許容値は、その縮尺で使用するコンター間隔の半分に設定してください。
次のピラミッド定義では、1:5,000 よりも大きな表示縮尺にはフル解像度データが使用されます。1:5,000 ~ 1:12,000 の表示縮尺には、0.5 単位の z 許容値に基づくピラミッド レベルが使用され、1:12,000 ~ 1:24,000 では 1.0 単位の z 許容値レベル、1:24,000 ~ 1:100,000 では 2.5 単位の z 許容値レベル、1:100,000 よりも小さな縮尺では 5.0 単位の z 許容値レベルが使用されます。
マップ縮尺 |
コンター間隔(メートル) |
---|---|
1:5,000 |
1 |
1:12,000 |
2 |
1:24,000 |
5 |
1:100,000 |
10 |
縮尺の閾値 |
Z 許容値(メートル) |
---|---|
5,000 |
0.5 |
12,000 |
1 |
24,000 |
2.5 |
100,000 |
5 |
z 許容値を調べて、それらがデータに対して適切かどうかを判断します。調査対象地域が比較的平らな場合は、提案された z 許容値を半分に減らすとよいかもしれません。テレイン ウィザードには、デフォルト値を推定する [ピラミッド プロパティの計算] 機能が用意されています。それを出発点として使用します。データに関する知識を基に、改良と修正を行います。
Z 許容値データの推奨
広い範囲におよぶ非常に高密度のデータ(複数の市区町村にわたる LIDAR など)がある場合は、小さい縮尺で使用するためのラスタ表現を取得することについて検討してください。テレインを使用して、ピラミッド化が可能なラスタを作成することができます。その場合は、小さい縮尺のアプリケーションに使用する方が効率的かもしれません。したがって、小さい基準縮尺でテレイン ピラミッドを定義する必要はないかもしれません。そこで、ArcMap で表示する縮尺範囲を設定し、テレインを大きな縮尺でのみ描画し、ラスタを小さな縮尺でのみ描画するようにレイヤの表示設定を調整します。
Z 許容値ピラミッド タイプは、一般に、地表 LIDAR または水深測量データに適用される場合にパフォーマンスが最大になります。ポイント データが主に建物や植物(マルチリターン LIDAR)によって表現される場合は、適用される追加間引き処理でウィンドウ サイズ ピラミッド タイプを使用することを検討します。
ウィンドウ サイズ ピラミッド タイプ
ピラミッド レベル解像度は、ウィンドウ サイズによって定義されます。ウィンドウ サイズ ピラミッド タイプは、データを等面積(ウィンドウ)に分割し、各エリアから 1 つか 2 つのポイントのみを見本として選択することにより、各ピラミッド レベルのポイントを間引きします。
各ウィンドウのポイント選択は、次のいずれかの基準に基づきます。
- 最小 Z 値を持つポイント
- 最大 Z 値を持つポイント
- 最小 Z 値と最大 Z 値の両方を取得する 2 つのポイント
- 平均 Z 値に最も近いポイント
ピラミッド レベル解像度は、ウィンドウ サイズによって定義されます。これは、細分を定義する各正方形エリアの辺の長さです。より解像度の低いピラミッド レベルは、大きなウィンドウ サイズで定義されます。大きなウィンドウ サイズでは、ポイントを選択するエリアが相対的に少なくなります。各エリアに対して 1 つか 2 つのポイントのみ選択するため、間引きと一般化が多くなります。より解像度の高いピラミッド レベルは、より小さなウィンドウ サイズを使用して定義されます。ウィンドウが小さいほどエリアが多くなるため、ポイントが増え、間引きが減り、詳細情報が増えます。
Z 許容値ベースのピラミッドと同様に、ウィンドウ サイズ ピラミッドは累積的です。ピラミッド レベルに使用されるポイントは、より低いレベルで選択されたすべてのポイントと、そのレベルに固有の追加セットの合計です。累積ピラミッドは、各ピラミッド レベルでそれぞれのデータの完全コピーを必要としないため、格納効率が高くなります。
ポイント選択方法の推奨
最高の解像度のピラミッド レベルでは、平均ポイント間隔以上のウィンドウ サイズを使用する必要があります。平均よりも近いポイントが多く存在することがわかっている場合、Z 平均は一部のポイントを効果的に間引きできるため、この値が使用に適しています。それ以外の場合は、平均ポイント間隔の 2 倍の値を使用します。
最小 Z 値/最大 Z 値によるポイント選択方法を使用している場合は例外です。この場合は、平均間隔の 4 倍を使用する必要があります。解像度が最も低いピラミッド レベルでは、ウィンドウ サイズはテレインの X または Y 範囲に基づいています。1/500 ~ 1/1000 の間では、X 範囲と Y 範囲のうち大きな方が妥当です。最も効率的なピラミッドは、次々に 2 が累乗されるウィンドウ サイズで作成されます。まず、最小ウィンドウ サイズを決定し、そこから先に進みます。
選択基準を使用して、さまざまなピラミッド レベルの対応するエリアの見本として選択されるポイントが決定されます。各基準は、特定のタイプのデータまたはアプリケーションに役立つバイアスを提供します。バイアスがフル解像度ピラミッド レベルを分類したり、フル解像度ピラミッド レベルに影響を与えたりすることはありません。
メソッド |
目的 |
推奨されるアプリケーション |
---|---|---|
最小 Z 値 |
低地、河川、渓谷に対するバイアス |
|
最大 Z 値 |
高地、尾根、丘陵に対するバイアス |
|
最小 Z 値/最大 Z 値 |
極値をキャプチャします。他のオプションほど多く間引きしません。 |
|
平均 Z 値 |
極値を回避します。 |
|
追加間引き
ウィンドウ サイズ ピラミッドを使用している場合は、追加間引きを組み込むオプションがあります。追加間引きによって、ピラミッド レベルのポイント数を、ウィンドウ フィルタで実現される間引きよりも削減することができます。この動作は、各ウィンドウのデータを調べることで、最も解像度の低いピラミッド レベル ウィンドウ サイズから開始します。ウィンドウ内のポイントの Z 値の範囲がユーザ定義の閾値内の場合は、エリアが平坦であると見なされます。ウィンドウ サイズ処理で通常行われるようにエリアに対して 1 つまたは 2 つのポイントが選択されますが、残りのすべてのポイントは、残りのレベルで再びフィルタ処理されるのではなく、フル解像度のピラミッド レベルに割り当てられます。エリアは平坦であるため、より小さなウィンドウ サイズで追加ポイントを選択する必要はありません。
追加間引き処理の推奨事項
追加間引きが有効になっている場合は、平坦なエリアで使用されるポイント数が削減されます。エリア内のポイントの高さがユーザ指定の追加間引きの閾値内にある場合は、エリアが平坦であると見なされます。その効果は、ピラミッド レベルの解像度が高いほど明白になります。より小さなエリアは、より大きなエリアよりも平坦である可能性が高いためです。
追加間引きの閾値は、ノイズ層を解決するためにデータの高さ方向の精度以上に設定する必要があります。大きな値を指定するほどより多くのポイントが間引きされ、パフォーマンスがある程度向上しますが、サーフェス フィーチャを解決/区別する能力は低下します。
- 間引き量(少) — 線形の途切れ(たとえば、建物の側面や森林の境界)を保持するのに最適です。地面ポイントと地面以外のポイントの両方を含む LIDAR にお勧めします。間引きされるポイントは最も少なくなります。
- 間引き量(中) — パフォーマンスと精度のバランスをとります。[間引き量(少)] ほど詳細は保持されませんが、全体的に多くのポイントを除外しつつ、できるだけ近い結果を生成します。[間引き量(中)] は、あらゆるタイプのデータに適した細線化メソッドです。
- 間引き量(多) — 最も多くのポイントを削除しますが、鮮明に描写されたフィーチャが保持される可能性は低くなります。傾斜がなだらかに変化する傾向のあるサーフェスに、使用を限定する必要があります。たとえば、[間引き量(多)] は、地表 LIDAR や水深測量に効果的です。
ウィンドウ サイズ ピラミッド レベルの作成例
テレイン ウィザードには、デフォルト値を推定する [ピラミッド プロパティの計算] 機能が用意されています。これを出発点として使用し、データに関する知識を基に、改良と修正を行います。[ピラミッド プロパティの計算] 機能は、下記の説明のとおりです。
ピラミッド レベルは次の情報に基づいています。
- ポイント データの平均ポイント間隔は 1 メートルです。
- ポイント間隔に大きな差異はないため、ほとんどのポイントは約 1 メートル離れています。
- データ範囲は東西に 20km、南北に 10km です。
- ウィンドウ サイズ 2(メートル)から開始し、2 の累乗(2、4、8、16、32)で増加します。20km の 500 分の 1 ~ 1000 分の 1 の範囲に収まるため、32 スライスで停止します。
- 各ウィンドウ サイズに、直前の縮尺閾値サイズより 2 倍大きい縮尺閾値を使用します。最終的には、次に示すようなピラミッド定義が生成されます。
ウィンドウ サイズ |
縮尺 |
---|---|
2 |
3,000 |
4 |
6,000 |
8 |
12,000 |
16 |
24,000 |
32 |
48,000 |
ウィンドウ サイズと Z 許容値の比較
ウィンドウ サイズ |
Z 許容値 | |
---|---|---|
長所 |
構築時間が高速です。 |
解析時に、間引き後の詳細レベルの近似垂直精度がわかります。 |
間引きの効果はサーフェスの可変性に依存しません。 |
サーフェスの変化に応じて間引きが調整されるので、サンプルが保持されるのは必要な場合に限られます。 |
|
水平方向のサンプル解像度がわかります。 |
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ピラミッド レベルには、予測可能な(最大)サンプル数があります。 |
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短所 |
平坦または傾斜の少ない地表面ではオーバーサンプリングになる可能性があります。 |
構築時間が低速です。 |
植物または建物ではアンダーサンプリングになる可能性があります。 |
建物や植物を含むデータは十分に間引きされません。 |
|
間引きされたデータの垂直方向の精度が不明です。 |
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データの推奨 |
すべてのデータ タイプ。 |
地形図、水深測量。 |