ダルシー フロー(Darcy Flow) (Spatial Analyst)
サマリ
帯水層の安定した流れにおける地下水量収支残余とその他の出力を算出します。
[ダルシー フロー(Darcy Flow)] ツールと [ダルシー流速(Darcy Velocity)] ツールの仕組みの詳細
使用法
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[ダルシー フロー(Darcy Flow)] と [ダルシー流速(Darcy Velocity)] の違いは以下のとおりです。
- [ダルシー フロー(Darcy Flow)] は出力水量ラスタを作成する一方、[ダルシー流速(Darcy Velocity)] は作成しません。
- [ダルシー流速(Darcy Velocity)] は必須出力として方向ラスタとマグニチュード ラスタだけを作成します。[ダルシー フロー(Darcy Flow)] はそれらを任意で出力します。
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すべての入力ラスタは、範囲とセル サイズが同じでなくてはいけません。
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すべての入力ラスタは浮動小数点数でなくてはいけません。
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速度ベクトルの方向はコンパス座標(北から時計回りの角度)で、大きさは単位時間当たりの長さで記録されます。
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このツールでは、特定の単位は指定されません。すべてのデータが、同じ時間(秒、日、年)と長さ(フィート、メートル)の単位を使用して、一貫している必要があります。
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位置水頭ラスタのソースはさまざまです。観測井戸のデータから [クリギング(Kriging)] や [スプライン(Spline)] のようなサーフェス内挿ツールを使用して内挿することもできます。水頭の値は別のモデリング プログラムの結果から入手することもできます。
水頭標高ラスタの取得方法にかかわらず、水頭は地層透水率ラスタと一貫している必要があります。すなわち、水頭は透水率フィールドを通る流れを反映している必要があります。測定と現地での試験から入手した値を使用するだけでは不十分です。ラスタ化した値は、適切な多孔質媒体フロー プログラムを利用し一貫性があるか解析する必要があります。一貫性とは、モデル化された透水率フィールドによってその水頭が実際に算出されることを意味します。本物の透水率フィールドとモデル化された透水率フィールドは大抵の場合、実際には異なるため、本物の水頭フィールドとモデル化された水頭フィールドも異なります。[ダルシー フロー(Darcy Flow)] によって算出された残余ラスタを調査して、水頭の一貫性をチェックしてください。残余にはデータセットの一貫性が反映されます。一貫性のないデータセットを [ダルシー流速(Darcy Velocity)] で解析すると、結果は意味のないものになります。
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帯水層の物理的なプロパティである有効間隙率フィールドは、一般的に地質データから推測されます。これは、流体の流れに寄与する有効空間容積を全体の体積で割ったものです。間隙率は、0 ~ 1 の数値として表され、通常の値は 0.35 前後で次元がありません。有効間隙率の値が 0.35 ということは、多孔質媒体の体積の 35 パーセントが流体の流れに寄与していることを意味しています。残りの 65 パーセントは、固体マトリックスと接続されていない間隙から構成され、流体の流れには寄与しません。
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飽和厚は、長さの単位で計測され、地質情報から解釈されます。限定された帯水層の場合、この計測値は、上部と下部の限定レイヤ間の地層の厚さです。限定されていない帯水層の場合、飽和厚は、地下水面と下部の限定レイヤ間の距離です。
構文
パラメータ | 説明 | データ タイプ |
in_head_raster |
入力ラスタ。各セルの値がその位置における地下水の位置水頭の標高を表します。 水頭は通常、平均海面など、ある測地基準系からの高さです。 | Raster Layer |
in_porosity_raster |
入力ラスタ。各セルの値がその場所における有効地層間隙率を表します。 | Raster Layer |
in_thickness_raster |
入力ラスタ。各セルの値がその場所における飽和帯水層厚を表します。 厚さの値は帯水層の地質学的特質をもとに解釈されます。 | Raster Layer |
in_transmissivity_raster | 入力ラスタ。各セルの値がその場所における地層透水率を表します。 帯水層の透水率は、透水係数 K と飽和帯水層厚 b を掛け合わせたもので、単位は長さの二乗を時間で割ったものと定義されます。この特質は一般に揚水試験のような現地実験データから推測されます。「Darcy Flow および Darcy Velocity の仕組み」の表 1 と表 2 に地質素材の透水係数の範囲が示されています。 | Raster Layer |
out_direction_raster (オプション) | 出力方向ラスタ。 各セル値は、セルの中心部の浸透速度ベクトル(平均線形速度)の方向を表します。セルの 4 辺を通過する浸透速度の平均値として計算されます。 これはフロー ベクトルを記述する出力マグニチュード ラスタと共に使用されます。 | Raster Dataset |
out_magnitude_raster (オプション) | オプションの出力ラスタ。各セル値は、セルの中心部の浸透速度ベクトル(平均線形速度)の程度を表します。セルの 4 辺を通過する浸透速度の平均値として計算されます。 これはフロー ベクトルを記述する出力方向ラスタと共に使用されます。 | Raster Dataset |
戻り値
名前 | 説明 | データ タイプ |
out_volume_raster |
出力水量収支残余ラスタ。 各セル値は、ダルシー(Darcy)の法則によって算出した帯水層の安定した流れにおける地下水量収支残余を表します。 | Raster |
コードのサンプル
次の例では、地下水量収支ラスタと、帯水層の流れの方向および浸透流速を計算しています。
import arcpy
from arcpy import env
from arcpy.sa import *
env.workspace = "C:/sapyexamples/data"
outDarcyFlow = DarcyFlow("gwhead", "gwporo", "gwthick","gwtrans",
"C:/sapyexamples/output/outdarcydir",
"C:/sapyexamples/output/outdarcymag")
outDarcyFlow.save("C:/sapyexamples/output/outdarcyflo")
次の例では、地下水量収支ラスタと、帯水層の流れの方向および浸透流速を計算しています。
# Name: DarcyFlow_Ex_02.py
# Description: Calculates the groundwater volume balance residual and other
# outputs for steady flow in an aquifer.
# Requirements: Spatial Analyst Extension
# Import system modules
import arcpy
from arcpy import env
from arcpy.sa import *
# Set environment settings
env.workspace = "C:/sapyexamples/data"
# Set local variables
inHeadRaster = "gwhead"
inPorosityRaster = "gwporo"
inThicknessRaster = "gwthick"
inTransmissivityRaster = "gwtrans"
outDirectionRaster = "C:/sapyexamples/output/outdarcydir"
outMagnitudeRaster = "C:/sapyexamples/output/outdarcymag"
# Check out the ArcGIS Spatial Analyst extension license
arcpy.CheckOutExtension("Spatial")
# Execute DarcyFlow
outDarcyFlow = DarcyFlow(inHeadRaster, inPorosityRaster, inThicknessRaster,
inTransmissivityRaster, outDirectionRaster,
outMagnitudeRaster)
# Save the output
outDarcyFlow.save("C:/sapyexamples/output/outdarcyflow")