Web GIS アプリケーションを導入するためのフレームワーク
GIS 専門家の目標は、GIS を熟知しなくても業務を行える Web GIS アプリケーションをエンド ユーザに提供することです。当然、専門家による各 Web GIS アプリケーションの概念は、エンド ユーザが考えるものより複雑です。このセクションでは、各 Web GIS アプリケーションのパーツとしてまとめる必要のあるすべての構成要素について説明します。これらの要素は、GIS を構築してエンド ユーザに提供する方法のフレームワークを提供します。
Web GIS アプリケーションの構成要素
各 Web GIS アプリケーションには、5 つの重要な構成要素があります。
- Web アプリケーション
- デジタル ベースマップ
- 操作レイヤ
- Web GIS アプリケーションでのタスクとツール
- 1 つ以上のジオデータベース
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Web GIS アプリケーションには 5 つの重要な構成要素があり、Web またはローカル エリア ネットワークを通じてそれらのすべてにアクセスできます。 |
各々について簡単に説明します。
1. Web アプリケーション
Web アプリケーションは、地理情報を視覚化し、対話型の処理を行うために使用する、クライアントへのソフトウェア インタフェースとその関連ツールです。これは、Web ブラウザで動作する ArcGIS Viewer for Flex アプリケーションや、GPS 対応のフィールド デバイスや iPhone などのスマートフォンで動作するモバイル アプリケーションです。
エンド ユーザ向け Web GIS アプリケーションの構築に使用できる選択肢は数多くあります。一般的には、ユーザのワークフローで必要とされる一連の機能、ツールおよびマップの表示に応じて、適切なものを選択します。多くの場合、アプリケーションの選択は、エンド ユーザと、エンド ユーザのコンピュータ使用環境、および作業が行われる場所の設定（現場やインターネットの速度が遅いリモート オフィスなど）に依存します。
Web アプリケーションを作成する際の選択肢については、次のトピックをご参照ください。
2. デジタル ベースマップ
Web GIS アプリケーションでは、ベースマップは各アプリケーションに地理コンテキストを提供します。多くの場合、アプリケーションの種類（水文解析、土地区画、電気事業、環境保全など）によって、使用するベースマップの種類が定義されます。たとえば、水鳥の保護を目的とした Web アプリケーションでは、湿地のデジタイズに適したベースマップは高解像度のオルソ画像になります。
一般的なベースマップの例を以下に示します。
- 交通機関ベースマップには、主に道路、通りの名前、目的地、一般的な土地利用、水域および場所の名前が含まれます。
- 地形ベースマップには、主に行政区域、都市、水域フィーチャ、地形フィーチャ、公園、ランドマーク、輸送機関、および構造物が含まれます。
- テレインベースマップには、主に他のデータ レイヤに中立の背景を提供するために設計された、陰影起伏画像、水深測量、沿岸水フィーチャが含まれます。
- 画像ベースマップには、多くの場合、世界の低解像度の衛星画像と、世界の一部の地理データに関する高解像度の衛星画像が含まれます。
- ハイブリッド ベースマップには、多くの場合、オン/オフの切り替えが可能なオプション レイヤをマップ オーバーレイとして持ちます。たとえば、交通機関、トポロジ、テレイン、画像などのマップ レイヤは、表示目的に応じてオン/オフを切り替えられるオプションのベースマップ オーバーレイとして含められることがあります。
高品質のベースマップを作成するには多くの時間と高い技術が必要であるため、Esri は一連のオンライン マップとタスクおよびマップ テンプレートを Web GIS アプリケーションで利用できるように、ArcGIS Resource Center で提供しています。ただし、独自のベースマップを構築する場合に対応して、ArcGIS for Desktop は非常に魅力的なベースマップを効率的にまとめ、構築し、キャッシュするために必要なすべてのツールを提供しています。詳細については、「独自のベースマップの構築について」をご参照ください。
ベースマップは、相対的に静的である傾向があることに注意してください。通常の設定では、ベースマップはあまり更新されません。たとえば、交通ネットワークは、大都市の道路ネットワークの変化に対応するために毎年更新されるかもしれません。一方、地形ベースマップは国勢調査や測量に応じて、10 年に一度更新されるかもしれません。
3. 操作レイヤ
操作レイヤは、直接操作したり、Web GIS アプリケーションでの操作（クエリなど）の結果として取得する小さなレイヤ セットです。これらのレイヤは、多くの場合、GIS の専門家によってユーザの特定グループ向けに作成されます。たとえば、都市計画立案者は、スマートフォンを使用して GIS アプリケーションを実行し、下水道/排水溝システム レイヤのマンホール カバーの位置を更新します。
操作レイヤは、以下から構成されますが、これらに限りません。
- 観測値またはセンサー フィード:状態または状況認識を反映する情報です。たとえば、犯罪の起きた場所、交通センサー フィード、リアルタイムの天気、計器（水位観測所など）の測定値、装置や現場の作業者による観測値、検査結果、顧客の住所、病気の発生場所、大気環境や汚染の監視などです。これらの情報のソースは、GIS Web マップのステータス情報として表示されることがよくあります。これらの情報のソースは、Web GIS のマップではステータス情報として表示されることがよくあります。また、サーバでの解析処理への入力としてもしばしば使用されます。
- 編集およびデータ アクセス レイヤ:ユーザがフィーチャの編集、クエリの実行、分析用に入力するフィーチャの選択などの操作を行うマップ レイヤです。
- クエリの結果:アプリケーションでサーバにクエリ リクエストを行い、レコードのセットを結果として返すケースが多くあります。この結果には、各フィーチャまたは属性レコードの集合が含まれます。ユーザは、この結果をマップ グラフィックスとして Web GIS アプリケーションで表示したり、使用したりします。
- 解析モデルから導出される結果レイヤ:GIS の解析を新規マップ レイヤとして追加することで、エンド ユーザが閲覧、視覚化、解釈および比較を行う新規情報を導出できます。
多くの GIS アプリケーションでは、ユーザは、地理的な背景情報を提供するベースマップ上で操作情報（複数の操作レイヤの場合もある）を使用します。また、場合によっては、操作レイヤは位置コンテキストの提供に役立つ、他のレイヤの下に表示されます。たとえば、人口統計情報に基づいて郵便番号コード エリアを分類して表示する場合に、位置コンテキストを提供するために、輸送ラインおよび場所の名前を使って結果をオーバーレイすることがよくあります。
操作レイヤは、動的であることが多く、実行時（画面移動、ズーム、マップの更新を実行するときなど）に GIS データベースから取得、表示されます。操作レイヤが特定の範囲の縮尺と解像度限定で動作することはよくあります。反対に、広範な縮尺で使用するようベースマップを設計することもあります。たとえば、ベースマップは、通常、より大きな範囲で表示することができます。
詳細については、「操作レイヤについて」をご参照ください。
4. Web GIS アプリケーションでのタスクとツール
Web GIS アプリケーションは、多くの場合、マッピング以外の処理を行うツールを提供します。これらのツールは、住所の検索など一般的なものから、大都市における 1 か月分の屋上の太陽エネルギーを計算するなど特定のものまであります。
タスクを実行するには、次の 2 つの方法があります。
- クライアントで実行: この方法は、比較的簡単で、必要なデータがすべてクライアント側にある処理に適しています。代表的な例としては、解析結果のチャート作成や、一連のポイント フィーチャに基づくヒート マップの作成などが挙げられます。
- サーバで実行: これは、比較的複雑で、必要なデータがクライアント側にない処理に適しています。代表的な例としては、最も近い施設の検索とルート解析、流量の計算、および多くのデータ レイヤをオーバーレイすることによる最適な生息地の検索などが挙げられます。
Web GIS アプリケーションでのタスクとツールの使用に関する、その他の考慮事項は次のとおりです。
- ユーザが編集者の場合、ワークフローと業務に役立つ専用のツールのセットが必要です。たとえば、地籍や土地区画フレームワークを編集するツールは、電気施設の情報や水文学的情報のまとめに使用するツールとは異なります。
- エンド ユーザの多くは、ターゲット レイヤ セットと、それらのレイヤで作業するための関連ツール セットを持っています。たとえば、最も近い施設と、その経路を検索するツール、現在の状態に基づいて流量を計算するツール、事故の場所のセットに対してポイント パターン分析を行うツールなどです。
- センサー フィードには、多くの場合、フィールドからのフィードの表示、サマリ処理、図表化および分析を行うツールのセットがあります。
- 多くの Web GIS アプリケーションには、GIS モデリングと解析を行うソフトウェアの機能と、結果の操作、表示、および分析を行うツールが含まれます。結果の図表化、分析および解釈（結果の分類とマップ、統計サマリ、表形式レポートの生成、グラフの生成など）を行うツールのセットがあります。
- ユーザがサーバにクエリを送り、サーバがフィーチャとその属性のセットを返す Web GIS アプリケーションもあります。この結果は、インタラクティブなグラフィックスと説明情報としてマップに表示されます。これらは、図表化やサマリ処理が可能で、詳細情報へのハイパーリンクとして使用できます。
5. 1 つ以上のジオデータベース
各 GIS アプリケーションは、アプリケーションのサポートに使用される情報を保持できる強力な地理空間データ管理フレームワークに依存します。これは、1 つ以上のジオデータベースの場合も、複数のシェープファイルの場合も、各種表形式データベースとスプレッドシートの場合も、CAD ファイル、デザイン ファイル、イメージ、HTML Web ページなどの場合もあります。
GIS 専門家のコミュニティでは、質の高い地理情報への投資と構築に注目が集まっています。GIS から導き出される答えは、ジオデータベースに保存されている情報の質にかかっています。GIS データセットは、ジオグラフィック フレームワークに合うように統合し、調和がとれるようにまとめる必要があります。多くの GIS ユーザは、地理空間データベースの作成と管理に多大なコストをかけています。これらに蓄積された情報はさまざまな質問に対応する場合に非常に役立ちます。ベースマップに観測値を表示する以上のことを行う場合、強力なジオグラフィック データが、より重要になります。
ArcGIS ジオデータベースは、業務をサポートするために、豊富な GIS 情報をモデリングし、編成して管理する重要なデータ管理テクノロジです。ジオデータベースは、最も単純なジオデータ モデルから非常に複雑なものまで、すべてのレベルの GIS の実装をサポートするよう設計されています。
このフレームワークの展開に Web サービスを利用
Web GIS アプリケーションのいずれの要素も、ArcGIS for Server を使用してホストおよび提供できることは注目に値します。たとえば、さまざまな Web サービスにアクセスして、Web GIS アプリケーション（ベースマップ サービス、操作マップ サービス、ジオプロセシング サービス、ジオデータ サービス、イメージ サービスなど）の一部として組み込むことができます。
Web GIS アプリケーションの大きな利点の 1 つは、独自のローカル コンテンツとリモート Web サービスをマッシュアップし、自分の Web GIS アプリケーションを組み立てることができるという点です。他の組織からのサービスを使った独自のリソースを、自分の Web GIS アプリケーション内でどのように利用するかを検討する価値は十分にあります。
Solar Boston は、ArcGIS を使用して構築された Web GIS アプリケーションの実装例で、ボストン市における太陽エネルギーに関するオンラインの対話型マップを提供します。この Web GIS アプリケーションを展開するためのフレームワークを細分化すると、次のようになります。
- Web アプリケーションは、ArcGIS API for Flex を使用して構築されています。
- 道路、テレイン、航空写真などのデジタル ベースマップが ArcMap で作成およびキャッシュされています。これらは、サービスとして Web アプリケーションで利用できるようになっています。
- 歴史的地域、NSTAR エリア、日射量レイヤなどの操作レイヤは、ArcMap で作成され、サービスとして Web アプリケーションで利用できるようになっています。
- アプリケーション内のタスクとツールには、住所を検索するためのジオコード サービス、建物や対象地域を選択するためのフィーチャ サービス、および住所、建物、エリアにおける太陽エネルギーを計算するためのジオプロセシング サービスなどが含まれています。アプリケーション内のツールを使用するたびに、サーバはリクエストを処理し、Web ブラウザ内の Web アプリケーションのインタフェースを介して結果を返します。
- 太陽光発電データの格納には、SQL Server データベースが使用されます。このデータは、GeoRSS フィードを介して、Web アプリケーションで利用できるようになります。