表現モデルとプロセス モデルに関する空間的問題の解決
ArcGIS Spatial Analyst エクステンションを使用すると、有益な解析を簡単に実行できます。ただし、ArcGIS Spatial Analyst だけで問題を解決できるわけではありません。期待する結果を得るには、適切な問題定義を行い、適切な情報を用意する必要があります。
空間的問題のモデリング
モデルとは一般に、現実の 1 つの描写を表す言葉です。現実世界には固有の複雑さとさまざまな相互作用があるため、モデルによって、現実世界をシンプルで扱いやすい形にします。モデルを利用すると、現実世界におけるさまざまな事柄の理解、定義、または予測を簡単に実行できます。
モデルには主に 2 つのタイプがあります。
- 表現モデル(調査エリア内のオブジェクトを表現するモデル)
- プロセス モデル(調査エリア内のプロセスのシミュレートを試みるモデル)
表現モデル
表現モデルでは、調査エリア内のオブジェクトの記述を試みます。ビル、川、森などは、そうしたオブジェクトの例です。GIS では、一連のデータレイヤを使って、表現モデルを作成します。Spatial Analyst の場合は、ラスタ データかフィーチャ データがそれらのデータ レイヤになります。ラスタ レイヤは規則的なメッシュかグリッドによって表現され、各レイヤ内のそれぞれの位置は 1 つのグリッド セル(値を 1 つ持つ)によって表現されます。さまざまなレイヤのセルが重なり合って、それぞれの位置の多数の属性を表現します。
表現モデルでは、1 つのオブジェクト内の空間的な関係(例: ビルの形状)および調査エリア内の他のオブジェクト間の空間的な関係(例: ビルの分布状況)を取得しようとします。GIS の表現モデルでは、空間的な関係の確立だけでなく、それらのオブジェクトの属性(例: 各ビルの所有者)のモデリングも実行できます。表現モデルは、データ モデルと引用されることもあり、表現力に優れたモデルと考えられています。
プロセス モデル
プロセス モデルでは、表現モデルで描写されている一連のオブジェクトの相互作用の定義を試みます。一連の関係は、空間解析を使用してモデリングします。相互作用にはさまざまな種類があるため、Spatial Analyst では、相互作用を定義するツールが多数用意されています。プロセス モデリングは、カートグラフィック モデリングと呼ばれる場合もあります。プロセス モデルは、プロセスを定義する際に使用することもできますが、何らかのアクションが発生した場合に起こる事柄を予測する際にもよく使用されます。
Spatial Analyst の各ツールは、プロセス モデルと見なすことができます。プロセス モデルには、シンプルなものも複雑なものもあります。ロジックを追加し、[マップ代数演算] または [ModelBuilder] を使用して複数のプロセス モデルを組み合わることで格段に複雑な処理を実行することもできます。
Spatial Analyst の演算で最も基本的な演算の 1 つに、2 つのラスタの加算があります。
論理演算を使うと、格段に複雑な処理を実行できます。たとえば、ある土地の土壌が砂で、かつ乾燥している場合は、条件を満たし(True(T))、ある目的に適合する位置になります。
ユーザ自身では作成が大変困難な解析結果を生成できるように設計されたアルゴリズムを提供する、特殊なツールを使用することによってさらに複雑な処理を実行することができます。非ユークリッド距離や地下水中の汚染物質の水文学的な分散を計算するツールは、そのようなタイプのツールの例です。
複数のツールおよびロジックの併用によって、格段に複雑な処理を実行できます。
プロセス モデルは、問題の解決に必要な現実性を抽出できるように、できるだけシンプルにする必要があります。演算やツールは 1 つだけで十分な場合もありますが、複雑なモデルでは必要な演算やツールが数百におよぶこともあります。
プロセス モデルのタイプ
以下のような多様な問題を解決するために、プロセス モデルには多数のタイプが用意されています。
- 適合性モデル: 新しい学校、埋立地、都市公園などに最適な場所を見つけます。
- 距離モデル: 最寄りの絶滅危惧種の保護区域を見つけます。
- 流路網解析モデル: 表層の水流方向を求めます。
- サーフェス モデル: 国内のさまざまな地域における汚染レベルを求めます。