多孔質媒体内の分散(Porous Puff) (Spatial Analyst)
サマリ
瞬間的に不連続ポイントで発生し、帯水層へ垂直方向に混合される溶質の、時間依存の 2 次元の濃度分散を、体積あたりの質量で計算します。
使用法
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帯水層の物理的なプロパティである有効間隙率フィールドは、一般的に地質データから推測されます。これは、流体の流れに寄与する有効空間容積を全体の体積で割ったものです。間隙率は、0.0 ~ 1.0 の数値として表され、通常の値は 0.35 前後で次元がありません。有効間隙率の値が 0.35 ということは、多孔質媒体の体積の 35 パーセントが流体の流れに寄与していることを意味しています。残りの 65 パーセントは、固体マトリックスと接続されていない間隙から構成され、流体の流れには寄与しません。
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このツールでは、特定の単位は指定されません。すべてのデータが、同じ時間(秒、日、年)、長さ(フィート、メートル)、質量(キログラム、スラグ)の単位を使用して、一貫していることが重要です。
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飽和厚は、長さの単位で計測され、地質情報から解釈されます。限定された帯水層の場合、この計測値は、上部と下部の限定レイヤ間の地層の厚さです。限定されていない帯水層の場合、飽和厚は、地下水面と下部の限定レイヤ間の距離です。
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減衰係数 λ は、半減期 T1/2 と関連しています。
たとえば、炭素 14 の半減期は 5,730 年です。ln(2) = 0.693 であるため、減衰係数は 0.693/5730 = 1.21x10-4 /年となります。安定した構成の場合、半減期が無限になるのに対応して、減衰係数が 0 になります。放射性同位元素の半減期は、CRC Press の「CRC Handbook of Chemistry and Physics」など、さまざまなソースから調べることができます。
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要求された時間は、パス ファイルに記録された最新の時間を超えてはなりません。[多孔質媒体内の分散(Porous Puff)] で少ない時間を要求するか、[粒子追跡(Particle Track)] で大きな時間の新しいパス ファイルを作成する必要があります。
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要求された時間は、追跡ファイルに記録された最初のパス ステップの完了前に到達してはなりません。[多孔質媒体内の分散(Porous Puff)] で大きな時間を要求するか、[粒子追跡(Particle Track)] で短いステップ長を使用して、新しい追跡ファイルを作成する必要があります。
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質量の重心は、ラスタのエッジや外部に移動してはなりません。この場合、分散の基となるデータがなくなるため、ツールは異常終了します。移動に合わせて、短い時間を要求するか、大きなラスタを生成する必要があります。
構文
パラメータ | 説明 | データ タイプ |
in_track_file |
入力粒子追跡パス ファイル。 これは、位置、局所速度ベクトル、およびパスに沿った移動の累積長と累積時間についての情報を含む ASCII テキスト ファイルです。 このファイルは、[粒子追跡(Particle Track)] ツールで作成されます。 | File |
in_porosity_raster |
入力ラスタ。各セルの値がその場所における有効地層間隙率を表します。 | Raster Layer |
in_thickness_raster |
入力ラスタ。各セルの値がその場所における飽和帯水層厚を表します。 厚さの値は帯水層の地質学的特質をもとに解釈されます。 | Raster Layer |
mass |
ソース ポイントで瞬間的に放出された質量の値(単位は質量)。 | Double |
dispersion_time (オプション) |
溶質の水平方向の分散時間を表す値(単位は時間)。 時間は、追跡ファイルの最大時間以下である必要があります。要求された時間が、追跡ファイルで使用可能な時間を超えている場合、ツールは異常終了します。デフォルトの時間は、追跡ファイルの最新時間(ターミナル ポイントに対応)です。 | Double |
longitudinal_dispersivity (オプション) |
流れの方向に平行な分散度を表す値。 デフォルト値の決定方法や、調査領域のスケールとの関連の詳細については、ドキュメントの「[多孔質媒体内の分散(Porous Puff)] ツールの働き」のセクションをご参照ください。 | Double |
dispersivity_ratio (オプション) |
横方向の分散度に対する縦方向の分散度の比を表す値。 縦方向の分散度は、同じ水平面の流れの方向に対して垂直です。デフォルト値は 3 です。 | Double |
retardation_factor (オプション) |
帯水層の溶質の遅延を表す次元のない値。 遅延は、1 から無限まで変わります。1 は遅延がないことを意味します。デフォルト値は 1 です。 | Double |
decay_coefficient (オプション) |
一次指数減衰の溶質(放射性核種など)の減衰係数(単位は、時間の逆数)。 デフォルトは 0 で、減衰なしに相当します。 | Double |
戻り値
名前 | 説明 | データ タイプ |
out_raster |
濃度分散の出力ラスタ。 各セル値は、その位置の濃度を表します。 | Raster |
コードのサンプル
次の例では、要求された入力にツールを実行して、濃度分散のラスタを出力しています。
import arcpy
from arcpy import env
from arcpy.sa import *
env.workspace = "C:/sapyexamples/data"
outPorousPuff = PorousPuff("trackfile.txt", "gwporo", "gwthick", 50, 10000, "", 3,
"", "")
outPorousPuff.save("c:/sapyexamples/output/outporpuff")
次の例では、要求された入力にツールを実行して、濃度分散のラスタを出力しています。
# Name: PorousPuff_Ex_02.py
# Description: Calculates the time-dependent, two-dimensional
# concentration distribution in mass per volume of a
# solute introduced instantaneously and at a discrete
# point into a vertically mixed aquifer.
# Requirements: Spatial Analyst Extension
# Import system modules
import arcpy
from arcpy import env
from arcpy.sa import *
# Set environment settings
env.workspace = "C:/sapyexamples/data"
# Set local variables
inTrackFile = "trackfile.txt"
inPorosityRaster = "gwporo"
inThicknessRaster = "gwthick"
mass = 50
dispersionTime = 10000
longitudinalDispersivity = ""
dispersivityRatio = 3
retardationFactor = ""
decayCoefficient = 0
# Check out the ArcGIS Spatial Analyst extension license
arcpy.CheckOutExtension("Spatial")
# Execute PorousPuff
outPorousPuff = PorousPuff(inTrackFile, inPorosityRaster, inThicknessRaster,
mass, dispersionTime, longitudinalDispersivity,
dispersivityRatio, retardationFactor,
decayCoefficient)
# Save the output
outPorousPuff.save("c:/sapyexamples/output/outporpuff")