ArcGIS Spatial Analyst エクステンションの概要
ArcGIS Spatial Analyst エクステンションには、包括的なラスタベースの空間解析を実行するための豊富なツールと機能が用意されています。このエクステンションでは、さまざまな形式のデータを用いたデータセットの結合、新しいデータの解明、および複雑なラスタ処理を実行できます。Spatial Analyst を使用して実行できる解析の例として、テレイン解析、サーフェス モデリング、サーフェスの内挿、適地選定モデリング、水文解析、統計解析、画像分類などがあります。
次に、Spatial Analyst の主なコンポーネントについて簡単な説明を示します。
Spatial Analyst の機能にアクセスする最も一般的な方法は、ジオプロセシング ツールを使用することです。この充実した環境は、解析タスクを実行するために必要なツールをすばやく簡単に編成して実行することができ、ワークフローの自動化やドキュメント化、共有をするためのメカニズムを提供します。
ジオプロセシング フレームワークでは、Spatial Analyst の操作を次の方法で実行できます。
- 個別のツール ダイアログでの実行
- ModelBuilder を使用したツールの結合による、ワークフローの自動化と空間モデルの作成
- Python の使用によるワークフローの自動化と新しいツールの作成
マップ代数演算は、ラスタ解析を実行するための強力な代数演算の言語です。ArcGIS 10 では、マップ代数演算が Python 環境と完全に統合されました。
また、[ラスタ演算(Raster Calculator)] ツールを使用すると、ModelBuilder もしくはツール ダイアログでマップ代数演算式を簡単に作成できます。
[Spatial Analyst] ツールバーには、ラスタ データを簡単に解析するために便利な対話型のツールがあります。
[画像分類] ツールバーを使用すると、航空写真や衛星画像などのマルチバンド ラスタ データを使用して、さらなる解析やマップの作成に利用できる分類されたラスタ(土地利用レイヤ、植生被覆レイヤなど)を作成できます。トレーニング サンプルの作成、評価、および編集に利用可能なツールは、分類プロセスから適切な結果を得るために役立ちます。
次に、ArcGIS 10 の Spatial Analyst で利用できる各コンポーネントについて詳しく説明します。
ジオプロセシング ツール
Spatial Analyst は、空間解析処理を実行するための 170 のジオプロセシング ツールを提供します。これらのツールの一般的なカテゴリには、解析を目的とするツールに加え、基本的な算術演算と論理演算を実行するツールや、ラスタ データセットの作成と処理を実行するツールが含まれます。ツールは、関連する機能ごとに 19 のツールセットにグループ化されています。
マップ代数演算と Python
マップ代数演算は、Python 環境と完全に統合されました。Python におけるマップ代数演算式の構文は、ArcGIS 9.x の [ラスタ演算(Raster Calculator)]、[マップ代数演算 単一出力(Single Output Map Algebra)](SOMA)、および [マップ代数演算 複数出力(Multi Output Map Algebra)](MOMA)ジオプロセシング ツールで使用する構文とよく似ています。ArcGIS 10 の Python 環境は、コマンドのオートコンプリート機能、スクリプトの利用範囲の拡張、および遅延実行により、以前よりも利便性が向上しています。
Spatial Analyst ツールバー
[Spatial Analyst] ツールバーの対話型ツールを使用して、サーフェス ラスタに等値線を作成し、データのヒストグラムを作成してラスタ レイヤの値の分散状況を調べることができます。
ArcGIS 9.3 以前の [Spatial Analyst] ツールバーに慣れている場合、ArcGIS 10 のツールバーには個々の操作が表示されるドロップダウン リストがないことに気付くはずです。すべての Spatial Analyst ツールは、ジオプロセシング ツールと Python を通して利用できるようになり、個々のツールはカスタマイズにより任意のツールバーに追加できるようになりました。
9.3 以前の [ラスタ演算] ダイアログ ボックスの代わりに、マップ代数演算は直接 [Python] ウィンドウに入力できます。
画像分類ツールバー
このツールバーでは、対話型のツールとジオプロセシング ツールの両方によってマルチバンド ラスタ データセットの画像分類を実行できます。
[画像分類] ツールバーのみで、画像分類処理を完了できます。ここで提供される対話型の使いやすいツールによって、教師付き分類に必要なトレーニング サンプルを作成したりそれを評価したりすることができます。また、多変量解析用のさまざまなジオプロセシング ツールにもアクセスできます。
[トレーニング サンプル マネージャ] では、画像分類の実行を支援する次のような機能が提供されています。
- トレーニング サンプルによって表されるクラスのリスト
- トレーニング サンプルの管理ツール
- クラスのヒストグラム、散布図、統計情報を作成して表示する複数のトレーニング サンプル評価ツール
- 分類に使用するシグネチャ ファイルを作成するツール
このツールバーによって、画像分類タスクが素早く簡単に実行できます。