GPS/GNSS の概要

GPS/GNSS の概要

GPS(全地球測位システム)は、アメリカ国防総省により運用されている、位置情報を提供する衛星ベースのナビゲーション システムです。GPS は本来軍事用途を目的としていましたが、1980 年代に米国政府により民間利用が許可されました。GPS が重要なグローバル ユーティリティになるにしたがって、他の同様の衛星システムの運用も開始されました。これらのシステムは、GNSS(全世界的航法衛星システム)と総称されます。他の GNSS の例には、GLONASS(ロシア)、GALILEO(EU)、および Beidou(中国)があります。これらのシステムが完全に機能するにつれて、多くの GNSS 受信機メーカーは 複数の GNSS を活用して信号が得られる衛星の数を増やし、より正確で信頼性の高い位置を提供するデバイスを提供しています。

GPS/GNSS は三辺測量を基に機能します。システムの各衛星は連続的にメッセージを送信します。メッセージには、メッセージが送信された時間、システム(アルマナック)のすべての衛星の正確な軌道情報および軌道が含まれます。GPS/GNSS 受信機は、少なくとも 4 つの衛星からのこれらのメッセージを正確に受信して位置を計算します。

GPS/GNSS の通信プロトコル(NMEA)

GPS/GNSS 受信機からの位置情報はさまざまな形式で取得できます。最も一般的にサポートされているプロトコルの 1 つは、NMEA(National Marine Electronics Association)0183 規格です。NMEA は、GPS/GNSS 受信機などの海洋電子デバイス間の通信用の電気およびデータ仕様です。これは、センテンス形式の ASCII テキストを使用して、発信者から複数の受信者にデータを同時に送信します。この規格は個々のセンテンスの形式も定義しています。シリアル通信の場合、NMEA では、8 データビット、パリティなし、1 ストップ ビットの通信速度 4800 baud(高速仕様の場合は 38400 baud)が指定されています多くの GPS/GNSS 受信機がこの仕様に準拠していますが、すべての受信機が準拠しているわけではないことに注意してください。使用しているデバイスについて理解するには、受信機メーカーのマニュアルを調べることが重要です。

NMEA センテンス

通常、NMEA 0183 センテンスは以下の構造を備えています。

  1. センテンスの開始をドル記号($)で指定します。
  2. 5 つのアドレス フィールドは、次のもので構成されています。
    1. 2 文字の発信者 ID。GPS/GNSS センテンスの場合、通常、発信者 ID には GPS 情報の GP、GLONASS 情報の GL、混合 GPS/GLONASS 情報の GN が含まれます。
    2. 3 文字のセンテンス フォーマット。
  3. カンマ区切りの 1 つ以上のデータ フィールド。
  4. チェックサム区切り文字と値。
  5. センテンス ターミネータ(キャリッジ リターンおよびラインフィード)。

ArcGIS for Windows Mobile は、以下の 5 つの標準の NMEA 0183 センテンス フォーマットをサポートします。

GPS/GNSS 受信機への接続

ArcGIS for Windows Mobile で GPS/GNSS 受信機を使用するには、アプリケーションが接続するシリアル ポート(物理または仮想)が必要です。この接続はさまざまな方法で確立可能で、デバイスに応じて異なりますが、通常は次のいずれかです。

受信機メーカーのマニュアルを調べて、使用しているデバイスについて理解してください。

GPS/GNSS シミュレータ

受信機への接続のサポートに加え、ArcGIS for Windows Mobile は ASCII テキスト ファイルに保存された NMEA センテンスの再生をサポートします。これらのセンテンスはクライアント アプリケーションを通じてログに記録することができます。また、他のソースから入手し、後でテストを目的に再生することもできます。

ArcGIS for Windows Mobile の GPS 精度と品質フィルタ

位置は、常に正確であるとは限りません。システムの一部として生じた、または木の下や建物の近くに立っているために衛星が妨げられているなどの環境から生じた、多数のエラー ソースがあります。このため、GPS システムの精度や収率は複数の要因によって決まります。アプリケーションのニーズに応じて、ハードウェア機能、DGPS の可用性、GPS システム選択時の環境的要因を考慮する必要があります。自律(自己充足的)GPS システムは、5 ~ 10 メートル程度の精度を備えており、ナビゲーションや大規模な測位に最適です。自律的 GPS システムの精度を向上するために、一部のデバイスで多くの DGPS(Differential GPS)技術が利用されています。これにより、ユーザはエラーを排除し、精度を向上することができます。通常、SBAS(衛星型衛星航法補強システム)の差分補正サービスは、無料で利用できます。米国の WAAS(Wide Area Augmentation System)は SBAS システムの 1 種です。デバイスで WAAS を有効にし、DGPS 補正タイプを受信すると、精度は 2 ~ 5 メートルになります。

また、GPS 衛星の配置は精度に影響を与えます。この影響の測定値を精度低下率(DOP: Dilution of Precision)といいます。また、これは位置(3D)精度低下率(PDOP)、水平精度低下率(HDOP)などを含んでいます。値 1 は DOP に対して最適な値であり、値が高いほど悪くなります。DOP 値 1 ~ 5 はほとんどのアプリケーションに適しています。デバイスに GLONASS(ロシア)機能が含まれる場合、GPS と GLONASS を組み合わせて高い衛星観測能力により DOP 値を向上します。

品質の高い GPS 補正タイプで PDOP の値が低くなるほど、GPS 位置の精度は高くなります。その代わり、位置の収率が低下する可能性があります。ArcGIS for Windows Mobile では、低収率、高精度モードまたは高収率、低精度モードに対応したツールとして GPS 品質フィルタを備えているため柔軟に操作できます。ナビゲーション システムは、GPS の利用が困難な環境にいる場合に、精度の高さを得るよりも、最適な収率を得られるよう調整できることが必要なシステムの代表的な例です。モバイル アプリケーションに最適な GPS システムを決定する際は、精度と収率の要件がモバイルの導入の成功に大きな影響を与える可能性があるため、購入を決定する前にこれらの要件とは何かをまず理解することが重要です。

8/23/2013