スカイライン解析: 都市環境の設計支援

都市環境には、複雑な空間構成(建物、樹木、道路設備などの物理的構造物の密集した集まり、および公園や公共広場などの都市のオープン スペース)が存在します。スカイラインを使用して都市空間や(ビルなどに)囲まれた空間エリアをよりよく解析し、都市の中にあるこれらの特別な場所への認識を高めることができます。

3D Analyst の [可視性] ツールセットには、さまざまな状況に適用できるスカイライン ツール群が含まれています。これらのツールでは、観測点から見ることができる天空の広さや、特定の視点で障害物となり得るものを確認できるさまざまな方法を視覚的に比較できます。このワークフローでは、都市中心部の塔にとって重要な海辺の眺望を確保するためにこれらのツールを使用する方法を学びます。

都市広場の中央にある人気の観光名所、都市のランドマーク タワーでは、最上階から海を眺めることができます。訪れた人たちは皆、最上階の回転レストランで食事をしながら、近隣の海辺の眺望を楽しむことができます。この最上階は、このワークフローで観測位置として使用されます。計画立案者と開発者は、現在、海辺の新しい高層ビル建設の提案に直面しています。この高層ビルは、レストランだけでなく、近隣のホテルや海辺の集合住宅からの眺望も一部妨害します。都市空間を計画する際には建物の高さ制限が問題となることが多く、高さ制限は居住者、ビジネス、観光事業、および不動産に多大な影響を及ぼす可能性があります。

このワークフローでは、新しい建物が塔からの眺望に影響を及ぼす前と、影響を及ぼした後の状態を比較します。[スカイライン(Skyline)] ツールを使用して、観測点の周囲に都市シルエット ラインを作成します。[スカイライン バリア(Skyline Barrier)] ツールを使用して、スカイライン範囲ボリュームを生成します。最後に、[スカイライン グラフ(Skyline Graph)] を使用して、天空の可視領域をグラフィカルに比較します。[スカイライン グラフ(Skyline Graph)] は、観測点からスカイラインの各頂点までの角度を表します。これらすべては、同じ情報を異なる描写で表現したものですが、どれくらいのスカイラインが見えるかを可視化し、説明するために役立ちます。

データの準備

通常、都市のスカイライン解析では、最小データ要件に観測点と都市の建物データが含まれますが、必要に応じてテレインまたはサーフェスの情報が含まれることもあります。観測者の位置を知ることも、極めて重要です。観測者が、建物に囲まれた繁華街中心部の地表面上にいる場合、建物や周辺エリアと交錯する山がない限り、サーフェスはスカイラインに影響を及ぼしません。これが、[スカイライン(Skyline)] ツールにデフォルトの仮想サーフェスが用意されている理由の 1 つです。通常、繁華街の中心から天空を見上げると、テレインは見えません。そのため、テレインは解析に必要なデータ タイプではありません。これに対し、都市にいるのではなく尾根の上または谷の中に立っている場合、スカイラインは全く異なります。そのため、提供されるサーフェスと標高値がより意味を持つ可能性があります。ArcScene は、このような局地的な解析に最適なアプリケーションです。

スカイライン解析

[スカイライン(Skyline)] ツールでは、観測者が回転して 360 度あらゆる方向から都市を眺めたときに、塔の最上階にある観測点から見えるとおりに都市のスカイラインを作図できます。この出力スカイラインには、建物の屋上と天空の間の境界が示されます。基本的に、出力スカイラインでは、観察者が立って回転するところから天空が見える最初のポイントが検出され、眺望のサークルが描かれます。

この例で関心を集める問題は、この海辺の一等地に高層ビルがもう 1 つ建設された場合、海の眺望が妨げられるかどうかです。この新しい建物の建設前と建設後で、スカイラインへの影響を比較します。

都市広場内の観測塔

[スカイライン(Skyline)] ツールは、入力観測点(塔の最上階の中心)および周囲の建物のレイヤを比較対象のファクタとして使用します。スカイラインの結果(skyline1)がビューに追加されたら、視覚的なインパクトを強めるためにラインの色と幅を調整します。

[スカイライン(Skyline)] ジオプロセシング ツール

[スカイライン(Skyline)] ジオプロセシング ツールの出力

描かれるスカイラインは、塔の最上階にある観測地点から放射状に広がります。塔の最上階にある回転レストランで座っていると想像してください。遮るものがない海辺の眺望(シーンの右上の方向)があることをはっきりと確認できます。これは、ほとんどの顧客が望むものです。時計回りに回転すると、[スカイライン(Skyline)] ツールが実行される前に、観測点から見て多数の建物の頂点と結びつく様子を確認できます。

注意注意:
  • [スカイライン バリア(Skyline Barrier)] を使用して建物ごとのマルチパッチ ボリュームを生成したい場合は、オプションの [スカイラインをセグメント化] パラメータを使用するだけです。これは、建物の数が少ない場合に最適です。

スカイライン バリア解析

スカイライン バリアは、可視範囲を示す樹冠のようなカバレッジに似ています。スカイライン バリアは、中央の観測点を起点とするビュー ラインを周囲のスカイラインに接続することで構築されます。出力は、観測者の可視範囲を示し、スキンのような平面的なサーフェスとして表示できます。また、[クローズド] オプションをオンにして立体感のあるサーフェスとして表示することもできます。その場合は、スカイラインから下方向に立ち上げることによって、側面のあるフィーチャが構築されます。この出力結果から、建物などのフィーチャがはみ出てバリアを妨害し、スカイラインを変えていないかどうかを判別することができます。

バリアを作成するには、[スカイライン バリア(Skyline Barrier)] ツールを開き、観測点と、前のステップから得られたスカイラインの結果を使用します。

次に、デフォルトの平面的な出力を示します。

[スカイライン バリア(Skyline Barrier)] ツールの出力

[3D 効果] ツールバーの [レイヤの透過表示] ボタンを使用して、スカイライン バリアに透過表示を追加します。

[3D 効果] ツールバーの最初のボタンを使用した透過表示の設定

このツールを再度実行してクローズド ボリュームを作成すると、次のようになります。建物が非表示になって、側面が表示されます。

側面のあるボリュームを表示する、クローズド マルチパッチとしての半透明スカイライン

グラフ解析

スカイラインとスカイライン バリアの視覚的な解析が必要である一方、3D 解析に役立つように定量的な数値やグラフィカル チャートが欲しいこともあります。スカイライン グラフの作成は、このプロセスに役立つ 1 つの方法です。

[スカイライン グラフ(Skyline Graph)] ツールを開き、[入力観測ポイント フィーチャ] フィールドに観測点を、[入力ライン フィーチャ] フィールドにスカイラインを入力します。出力では、テーブルまたはグラフ、あるいはその両方が作成されます。そこで、skyline_table1skyline_graph1 のように、これらの出力名を指定する必要があります。[OK] をクリックして、テーブルと極座標グラフを作成します。

[スカイライン グラフ] ジオプロセシング ダイアログ ボックス

出力テーブルは自動的にコンテンツ ウィンドウに追加され、スタンドアロン テーブルまたは属性テーブルと同様に使用されます。

[スカイライン グラフ] 出力テーブル

ツールの実行後、極座標チャートが自動的に開き、テーブルの値に基づくスカイライン プロファイルが表示されます。

[スカイライン グラフ(Skyline Graph)] の出力

極座標グラフの右側に一覧表示されている数値は、各スカイライン セクタの天頂角です。

天空エリアのアウトラインがより現実に近くなるように極座標グラフのシンボルを変更するには、グラフ上で右クリックし、[高度な設定] をクリックします。[編集] ダイアログ ボックスで、左側の列から [系列] [極座標] の順にクリックします。アウトラインに空色を選択し、書式設定オプションの [パターン] を使用して、濃淡の無い半透明な、アウトラインと一致する青色で空の色を塗りつぶします。

[極座標] シリーズのシンボル書式設定オプションを示す [編集] ダイアログ ボックス

塗りつぶしオプションを設定するための [パターン エディタ] ウィンドウ

これで、中央の天空エリアが、青い空に似た明るい青色に塗られました。

天空を青色で表すスカイライン グラフ

極座標グラフを理解するために、あおむけになって寝ころび、天空を見上げているところを想像してください。円の輪郭に沿った白い(無色の)エリアは、建物が天空スペースに立ち上がっているところです。建物が高いほど、そのエリアが円の中心に向かって深く伸びています。それでも、グラフの上部に、遮るものがない眺望を確認できます。これは、観測者の中心点に基づいて近接の度合いを表すために使用できる、魚眼写真に似た極座標チャートです。

[スカイライン グラフ(Skyline Graph)] ツールは、他にも有用な値を出力します。このツールの実行結果を確認すると(表示されていない場合は、[ジオプロセシング] メニューに移動し、[結果] を選択)、2 組の値を見つけることができます。1 つは、ベース仰角([ベース表示角度] パラメータで設定可能)より上方のスカイライン露出パーセンテージで、もう 1 つは最小および最大の仰角です。次に、スカイライン可用性の現在の結果を示します。

スカイライン グラフ(Skyline Graph)ジオプロセシング結果からの追加の出力値

0.000000 度のベース仰角より上方に見える空の割合は 95.254876 です。

最小および最大の仰角は -6.560444 度と 13.617137 度です。

グラフおよびテキストのツール実行結果は、塔の最上階にある観測点に基づきます。海に向かった北向きの眺望だけに関心があるため、西(-90 度)から時計回りで東(90 度)への半円のグラフ タイプを使用しました。

新しいスカイラインと結果比較

提案された海岸沿いの高層ビルが建った状態で、観測者がレストランから海の方を眺めると何が見えるかを比較するには、その建物のレイヤをシーンに追加し、前述のツール群を再度実行します。

提案された高層ビルが建った状態の新しいスカイライン提案された建物がスカイライン バリアからはみ出て、観測塔の最上階からの海の眺望に大きな視覚的影響を及ぼしています。

グラフから、新しい海沿いの建物が上に突き出てスカイラインに入っていることがはっきりと確認できます。また、観測点が海辺のホテルまたは集合住宅で、海向きの部屋の前またはすぐ近くにこの建物が追加された場合を想像してください。スカイラインが完全にブロックされる可能性があります。

スカイライン グラフの比較

2 つ目のスカイライン グラフ(Skyline Graph)ジオプロセシング結果からの追加の出力値

0.000000 度のベース仰角より上方に見える空の割合は 94.277842 です。

最小および最大の仰角は -6.560444 度と 17.496400 度です。

以前のスカイライン グラフ結果と比較すると、提案された建物の存在によって、スカイラインの可視性が約 1% 減少し、最大仰角が約 4 度大きくなっています。観測者が海岸線に近づくと、このパーセンテージの変化はもっと大きくなります。そのため、観察者の位置を考慮することが重要です。

まとめ

これまで、スカイライン、スカイライン バリア、およびスカイライン グラフを計算してきました。これにより、都市エリアがどのくらい露出しているか、および提案された建物によって塔の最上階からの海の眺望がどのように妨げられるかについての定性的および定量的な計測値が提供されます。これで、わかったことを簡単なレポートにまとめて、遮るものがない元の眺望と、提案された建物によってブロックされた眺望の違いを示すことができます。

このプロジェクトから、この都市エリアがどのくらいオープンであるか、およびその場所に建物が建設された場合に眺望がどうなるかについて視覚的に理解することができます。天空のオープン エリアは、観測者が立っているところから水平線より上で 95% 近くです。最大仰角は約 17.3 度、最小仰角は約 -6.5 度です。近隣の既存の建物では、追加の建物によって海辺の眺望が大幅にブロックされます。観測塔は、北側の方向を除き、大部分は高い建物に囲まれています。塔を訪れた人にとっての空間認知が、可視スカイラインの変化によって悪影響を受ける可能性があります。

5/10/2014