ジオデータベースの設計手順

設計は主題(テーマ)レイヤから始まります。

まず、特定のアプリケーション/情報要件に必要な主題レイヤを特定します。解析のキーとなる地形を構成するために必要なデータ主題を確認してください。次に、各主題レイヤをより詳細に定義します。各主題レイヤの特徴は、フィーチャクラス、テーブル、リレーションシップ クラス、ラスタ データセット、サブタイプ、トポロジ、ドメインなどの標準的なジオデータベースのデータ エレメントの仕様となります。

主題レイヤを特定する際には、そのビジュアル表現、GIS で想定される用途、予想されるデータ ソース、必要なデータ精度に基づいて、各主題を特徴付けてみます。たとえば、この情報を使用するために必要な縮尺と範囲、およびそのエレメントが各縮尺でどのように表されるかについて考えてみます。これらの特徴から、各主題からどのような情報を得たいのかを把握することができます。

次に、地籍アプリケーションの分譲区画のデータ主題を説明する例を示します。

分譲区画の GIS データ主題の説明

設計上の主要な主題レイヤを特定したら、次のステップは、各主題レイヤのコンテンツを物理データベースで表すための仕様を作成します。

次に、一般的な GIS データベース設計プロセスを示す 11 のステップを紹介します。ステップ 1 ~ 3 は、主題レイヤを特定し洗い出して特徴付けるのに役立ちます。ステップ 4 ~ 7 では、表現の仕様、関連性(リレーションシップ)、およびジオデータベースのエレメントとそれらのプロパティの定義に取りかかります。ステップ 8 ~ 9 では、データを取り込む手順を定義し、データ収集の分担を決めます。最後のステップ 10 ~ 11 では、一連の初期実装を通じて設計をテストし、改良します。この最終段階では、設計の文書化も行います。

ジオデータベース設計の 11 のステップ

1.

GIS で作成および管理する情報を特定します。GIS データベースの設計には、組織の業務を反映させる必要があります。マップ製品、解析モデル、Web マッピング アプリケーション、データ フロー、データベース レポート、主要な役割分担、3D ビュー、その他組織の業務ベースの要件からなる一覧表を作成し、業務要件を管理することを検討してください。現在業務に使用しているデータ ソースをリストアップし、データ設計の要件を決定します。アプリケーションに使用する基本的な 2D および 3D のデジタル ベースマップを定義しパン、ズーム、解析などを行う際の各ベースマップに表示されるマップ縮尺のセットを決定します。

2.

情報要件に基づいて主なデータ主題を特定します。データ主題の主な要素をより明確に定義します。各データセットが使用される方法(編集、GIS のモデリングと解析、ビジネス ワークフローの表現、またはマッピングと 3D 表示等)を判断します。マップ内での用途、データ ソース、特定のマップ縮尺での空間的な表現、各マップ ビューと 3D ビューのデータの精度、データの収集ガイドラインを定義します。また、主題を表示する方法、そのシンボル表示、テキスト ラベル、アノテーションを指定し、各マップ レイヤを他の主なレイヤとどのように連携して表示するか検討します。モデリングと解析についても、各データ主題の情報が他のデータセットとともにどのように使用されるか(たとえば、それらが結合および統合される方法)について検討します。これは、データに必要な空間的な関連性と整合性ルールを特定するのに役立ちます。このように検討した 2D および 3D のマップ表示/解析の要件をデータベース設計の一部に含めます。

3.

データ主題ごとに表示縮尺範囲と各縮尺での空間的な表現を指定します。一般的にデータはマップ縮尺の特定の範囲で使用することを意図して収集し、各マップ縮尺においてデータに対して地理的な表現を関連付けます。多くの場合、地理的な表現はマップ縮尺によって変化します(たとえば、ポリゴンからライン、ポリゴンからポイントなど)。より小縮尺で使用するために、フィーチャの表現を単純化しなければならないこともよくあります。たとえばラスタはイメージ ピラミッドを使用してリサンプリングできます。また状況によっては、マップ縮尺ごとに異なる表現を使用しなければならないこともあります。

4.

各表現を 1 つ以上の地理データセットに分解します。個々のフィーチャはポイント、ライン、ポリゴンのフィーチャクラスとしてモデリングされます。またレイヤのエレメント間およびデータセット間の関連性をモデリングする、トポロジ、ネットワーク、テレインなどの高度なデータ タイプを検討することができます。ラスタ データセットのモザイクとラスタ カタログは、多くのラスタを管理するためのオプションです。標高や気温などの明確な値の境界を持たない連続したデータを表現するためのサーフェスのモデリングには、コンターなどのフィーチャに加えて、ラスタとテレインを使用することができます。

5.

表形式のデータベース構造と属性の振舞いを定義します。属性フィールドと列タイプを特定します。テーブルには、属性ドメイン、リレーションシップ、サブタイプを追加して、有効な値、属性の範囲、分類を定義することもできます。サブタイプを使用してより詳細に振舞いを制御できます。リレーションシップ クラスはテーブル間の関連付けを特定できます。

6.

データセットの空間的な振舞い、空間的な関連性、および整合性ルールを定義します。フィーチャに対しては、トポロジ、ジオメトリック ネットワーク、テレインなどを使用して、さまざまな目的で空間的な振舞いと機能を追加することができ、関連するフィーチャ間に固有の空間的な関連性を定義することができます。たとえば、トポロジを使用して、共有ジオメトリの空間的な関連性をモデリングし、整合性ルールを適用します。住所ロケータを使用して、ジオコーディングをサポートします。ジオメトリック ネットワークはトレースと経路検索に使用できます。ラスタについては、必要に応じて格納形式にラスタ データセットまたはラスタ カタログを選択することができます。

7.

ジオデータベースの設計案を作成します。各データ主題の設計に追加したいジオデータベース エレメントを定義します。既存の設計から実装可能なアイデアや手法が存在しないか確認します。ArcGIS Data Model から有効と思われるモデルを設計のベースとしてコピーすることもできます。

8

編集ワークフローとマップの表示プロパティを設計します。編集手順と整合性ルール(たとえば、すべての道路が他の道路との交差点で分断され、道路セグメントが端点で接続するなど)を定義します。定義した整合性ルールを満たす編集ワークフローを定義します。マップと 3D ビューの表示プロパティを定義します。各マップ縮尺に対してマップ表示プロパティを決定します。これらはマップ レイヤの定義に使用されます。

9.

各データ レイヤの構築と管理の役割を割り当てます。組織内でデータ管理作業の担当者を決定するか、その役割を他の組織に割り当てます。これらの役割は GIS システムにおいて非常に重要です。また、提携組織間でデータをインポート/エクスポートする場合は、データの変換方法を設計する必要があります。

10.

プロトタイプを構築し、設計をレビューして調整します。プロトタイプ設計をテストします。プロトタイプのデータベースとしてファイル、パーソナル、または ArcSDE ジオデータベースを使用して、設計案からサンプル ジオデータベースを構築します。マップを構築して、主なアプリケーションを起動し、設計の有用性をテストするための編集操作を実行します。プロトタイプ テストの結果に基づいて、設計を見直し、改良します。有効なスキーマが完成したら、大量のデータを読み込み(ArcSDE ジオデータベースに読み込むなど)、生産性、パフォーマンス、スケーラビリティ、およびデータ管理ワークフローを確認します。これらのステップを通して、ジオデータベースに実データを投入する前に、設計を確定してください。

11.

ジオデータベースの設計を文書化します。さまざまな方法で、データベースの設計と決定事項を説明することができます。たとえば図表、マップ レイヤの例、スキーマ ダイアグラム、シンプルなレポート、およびメタデータ ドキュメントなどを使用します。UML を使用することも可能ですが、UML だけでは不十分な場合があります。UML では、すべてのジオグラフィック プロパティと決定事項を表現することはできません。また、UML は、主題レイヤ、トポロジ ルール、ネットワーク接続性などの主要な GIS 設計概念を伝えることができません。これは UML が設計を空間的に捉えることができないためです。しかし、多くのユーザは Visio を使用して、ArcGIS データ モデルで公開されているようなジオデータベース スキーマのグラフィック表現を作成します。Esri では、Visio を使用してデータ モデル エレメントをこのように図表化するのに役立つツールを提供しています。「ジオデータベース設計の文書化」をご参照ください。

ジオデータベース設計のステップ

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5/10/2014