Spatial Analyst の演算の種類
ArcGIS Spatial Analyst エクステンションで使用可能なセルベースの解析の演算は、次の 5 種類に分類できます。
- 単一のセル位置に作用する演算(ローカル演算)
- 1 つの近傍内の複数のセル位置に作用する演算(フォーカル演算)
- 一連のゾーン内の複数のセル位置に作用する演算(ゾーン演算)
- ラスタ内のすべてのセルに作用する演算(グローバル演算)
- 特定のアプリケーションを実行する演算(水文解析演算など)
これらの各カテゴリは、単にそのセルが表す属性だけでなく、データの空間表現やジオメトリ表現に基づいていたり、それらから影響を受けます。たとえば、2 つのレイヤを追加するツール(1 つのセル位置に作用する)は、他方のレイヤ内の該当するセルの位置と値から影響を受けます。近傍またはゾーン内の一連のセル位置に適用するツールは、近傍やゾーンの構成内のセル値だけでなく、近傍またはゾーンの空間的な構成からも影響を受けます。
ローカル演算
ローカル演算(単一セル関数)では、1 つまたは複数個のラスタ データセット上の位置に関連付けられている値を入力とする関数によって該当する各位置(セル)の出力値が計算され、出力ラスタ データセットが求められます。つまり、単一のセルの値が、近傍のセルの値とは無関係に、出力値に直接影響を与えます。単一セル演算は、単一のラスタ データセットにも複数のラスタ データセットにも適用できます。単一データセット用の単一セル演算の例としては、三角関数ツール(例: Tan)、指数対数関数ツール(例: Log2)などがあります。
ローカル演算は、複数の入力ラスタに対しても実行できます。この場合、各入力ラスタ内の対応するセルに適用される特定の演算に基づいて、各セルに対して単一値が返されます。この種の演算の例は、[セル統計(Cell Statistics)] ツールの使用です。出力セルごとに、その対応する場所にあるすべての入力ラスタのセル値に対して、平均値や範囲などの統計値の計算が実行されます。
フォーカル演算
フォーカル演算(近傍演算)は、該当する位置の入力値と指定したその位置の周りの近傍内の一連のセル値を入力とする関数によって、各セル位置の出力値が計算され、出力ラスタ データセットが求められます。入力内の各セルが処理されるにつれ、本質的に近傍は処理されるセルと一緒にシフトする変動ウィンドウです。近傍の構成(サイズと形状)によって、処理されるセルを囲むどのセルを各出力値の計算で使用するかが、決定されます。最も典型的な近傍は、処理セルとそれに最も近い 8 つの近傍を組み入れた 3 x 3 のセルです。
ゾーン演算
ゾーン演算では、該当する位置のセル値およびカートグラフィック ゾーン内で該当する位置が持つセル値を入力値として各位置の出力値が計算され、出力ラスタ データセットが求められます。ゾーン演算は、フォーカル演算に類似しています。ただし、ゾーン演算における近傍は、特定の近傍の形状ではなく、ゾーン自体の構成によって定義されます。個々のゾーンには、任意の形状またはサイズで定義でき、相互に離れていてもかまいませんゾーンはラスタ データまたはフィーチャ データのどちらでも定義できます。ラスタ データの場合、ゾーンは、同じ値を持つセル群から構成されます。フィーチャ データの場合、ゾーンは同じ属性値(例: LandClass = 4)を持つフィーチャ群から構成されます。
ゾーン演算としては、たとえば、第 2 データセット内の指定されたゾーンに所属する第 1 データセットからの値の平均値(平均)を返す演算が挙げられます。
グローバル演算
グローバル演算(ラスタごとの演算)では、各セル位置での出力値が、潜在的にさまざまな入力ラスタ データセットから結合されたすべてのセルから作用を受ける、出力ラスタ データセットを計算します。グローバル演算には、ユークリッド距離演算および加重距離演算という 2 つの主なグループがあります。
ユークリッド距離グローバル演算
ユークリッド距離グローバル演算では、出力ラスタ データセット内の各セルに、最も近いソース セルからの距離が割り当てられます。ソースの例としては、新しい道路の起点となる場所が挙げられます。最も近いソース セルへの方向も、別の出力ラスタ データセット内の各セルの値として割り当てることができます。
非ユークリッド(加重)距離グローバル演算
非ユークリッド距離演算では、目的地となるセルから、ユークリッド距離に加え特定のコストによって加重されたサーフェスを介して最も近いソースセルに移動するコストが算出されます。その一例は、ポイント A からポイント B までの道路を建設する計画です。直線的な最短パスを建設すると、サーフェスが急勾配だったり、湿地などのように土壌組成が軟弱すぎたりすると、実際には余計にコストがかかることになります。
どのグローバル計算の場合でも、結果を得るにはサーフェス全体の情報が必要です。
アプリケーション演算
特定の問題を解決するために開発されたセル ベースのモデリング演算がいくつか存在します。アプリケーション演算は、専門分野に固有の解析を実行します。たとえば、水文解析演算では、河川のネットワークを作成して分水界を表示します。ローカル演算、フォーカル演算、ゾーン演算、およびグローバル演算は一般的な演算であり、どのアプリケーションにも固有のものではありません。アプリケーション演算と、ローカル演算、フォーカル演算、ゾーン演算、およびグローバル演算の分類には、重複した部分もあります(たとえば傾斜角はサーフェス解析の用途に使用されるのが一般的ですが、技術的にはフォーカル演算でもあります)。サーフェス解析のように適用範囲が広いアプリケーション演算もありますが、水文解析関数のように定義域が狭いアプリケーション演算もあります。アプリケーション演算をいくつかのグループに分類すると、対象の演算範囲と特定機能の両方を把握する助けになります。
アプリケーション演算には、次のものがあります。
- ラスタ解像度の変更
- 密度解析
- 水文解析
- 画像の分類
- ジェネラライズ
- サーフェス解析
- サーフェス生成