陰影起伏(Hillshade)の仕組み

[陰影起伏(Hillshade)] ツールは、ラスタ内の各セルについてイルミネーション値を決定することにより、サーフェスの仮想的なイルミネーションを求めます。これは、仮想光源の位置を設定し、各セルのイルミネーション値を隣接セルに対して計算することにより行います。これにより、解析や視覚的表示、特に透過表示を使用する場合に、サーフェスの視覚化が大幅に向上します。

デフォルトでは、影と光はグレーの階調で 0(黒)~ 255(白)の整数が関連付けられています。

陰影起伏のパラメータ

特定の場所の陰影起伏マップを作成する際に最も重要なのは、天空での太陽の位置です。

光源方位

光源方位は太陽の方位角方向で、北から右回りに 0 ~ 360 度で計測されます。光源方位 90 度は東です。デフォルトの光源方位は 315 度(NW)です。

陰影起伏で使用されるデフォルトの太陽方位(方向)は 315 度
陰影起伏で使用されるデフォルトの太陽方位(方向)は 315 度

光源高度

光源高度は、水平線を基準とする光源の傾斜角です。単位は角度で、範囲は 0(水平線上)~ 90 度(真上)です。デフォルトは 45 度です。

陰影起伏で使用されるデフォルトの太陽高度は 45 度
陰影起伏で使用されるデフォルトの太陽高度は 45 度

次の陰影起伏例では、光源方位 315 度、光源高度 45 度に設定されています。

陰影起伏の出力例
陰影起伏の出力例

マップ表示での陰影起伏の使用

陰影起伏ラスタに重ねて標高ラスタを配置し、標高ラスタの透過率を調整することで、視覚効果の高い立体的な地形図を簡単に作成できます。

透過表示を使用して、標高ラスタと陰影起伏を結合
標高ラスタと陰影起伏ラスタを組み合わせ、透過率を設定することで、陰影起伏ラスタを作成

土地利用タイプ、植生、道路、河川など他のレイヤを追加すれば、さらに詳しい情報をマップに表示できます。

解析での陰影起伏の使用

陰影をモデル化することにより(デフォルトのオプション)、局所のイルミネーションを計算して、セルが陰影内にあるかどうかを調べることができます。

陰影をモデル化することにより、1 日の特定の時間に別のセルの影になるセルを特定できます。別のセルの影が掛かるセルは、0 にコード化されます。その他のセルは 1 ~ 255 の整数でコード化されます。1 より大きい値をすべて 1 に再分類して、バイナリ出力ラスタを作成できます。次の例では、黒のエリアが影です。各画像で光源方位は同じですが、太陽の角度(光源高度)が変更されています。

太陽の角度が低い場合の陰影
太陽の角度が低い場合の陰影
太陽の角度が高い場合の陰影
太陽の角度が高い場合の陰影

陰影起伏の計算方法

陰影値を計算するには、まず、光源の高度と方位角を指定する必要があります。傾斜角度および傾斜方向の計算でこれらの値が処理され、出力ラスタの各セルの最終的な陰影起伏値が決定されます。

陰影起伏アルゴリズム

陰影起伏値を計算するためのアルゴリズムは次のとおりです。

(1)  Hillshade = 255.0 * ((cos(Zenith_rad) * cos(Slope_rad)) + (sin(Zenith_rad) * sin(Slope_rad) * cos(Azimuth_rad - Aspect_rad)))

陰影起伏の計算値が 0 より小さい場合、出力セル値は 0 になります。

光源角度の計算

光源の高さは、水平を基準とする角度で指定されます。ただし、陰影起伏値を求める数式では、角度の単位がラジアンであり、天頂からの偏向を表している必要があります。サーフェスから真上の方向(頭上)が天頂になります。点頂角は、天頂点から光源方向に測定され、高度の余角となります。光源角度を計算するには、まず、高度を天頂角に変換します。次に、その角度をラジアンに変換します。

高度(Altitude)を天頂角(Zenith_deg)に変換するには:

(2)  Zenith_deg = 90 - Altitude

ラジアン単位(Zenith_rad)に変換するには:

(3)  Zenith_rad = Zenith * pi / 180.0

光源方向の計算

光源の方向(方位角)は「度」で表されます。陰影起伏の数式では、この角度がラジアン単位で表されている必要があります。まず、方位角を地理単位(コンパス方位)から数学単位(直角)に変換します。次に、方位角の単位をラジアンに変換します。

方位角の測定方式を変換するには:

(4)  Azimuth_math = 360.0 - Azimuth + 90

Azimuth_math >= 360.0 の場合:

(5)  Azimuth_math = Azimuth_math - 360.0

ラジアン単位(Azimuth_rad)に変換するには:

(6)  Azimuth_rad = Azimuth_math * pi / 180.0

傾斜角と傾斜方向の計算

3 x 3 ウィンドウが入力ラスタの各セルへ移動し、このウィンドウの中心に位置するセルと、それに隣接する 8 つのセルの値に基づいて、傾斜角と傾斜方向が計算されます。これらのセルは ai の文字で識別され、傾斜方向の計算対象となるセルには e が割り当てられます。

セル e の X 方向の変化率は、次のアルゴリズムで計算します。

(7)  [dz/dx] = ((c + 2f + i) - (a + 2d + g)) / (8 * cellsize)

セル e の Y 方向の変化率は、次のアルゴリズムで計算します。

(8)  [dz/dy] = ((g + 2h + i) - (a + 2b + c)) / (8 * cellsize)

サーフェス内の各セルからの最も急な下り坂が傾斜です。ラジアン単位の傾斜角(Slope_rad)を求めるアルゴリズムは次のとおりです。ここでは Z 係数を使用します。

(9)  Slope_rad = ATAN (z_factor * √ ([dz/dx]2 + [dz/dy]2)) 

最も急な下り坂が面している方向が傾斜方向です。ラジアン単位の傾斜方向は 0 ~ 2pi の範囲で定義され、0 は東向きになります。傾斜方向は、次のアルゴリズムの規則に基づいて決定されます。

(10) If [dz/dx] is non-zero:Aspect_rad = atan2 ([dz/dy], -[dz/dx]) if Aspect_rad < 0 then Aspect_rad = 2 * pi + Aspect_rad

If [dz/dx] is zero:if [dz/dy] > 0 then Aspect_rad = pi / 2 else if [dz/dy] < 0 then Aspect_rad = 2 * pi - pi / 2 else Aspect_rad = Aspect_rad

陰影起伏の計算例

例として、移動ウィンドの中央セルの陰影起伏値を計算します。

入力標高ラスタ
入力標高ラスタ

セル サイズは 5 単位です。デフォルトの Altitude(光源高度)45 度と Azimuth(光源方位)315 度を使用します。

出力ラスタは整数型なので、中央セル e の陰影値は「154」になります。

参考文献

Burrough, P. A. and McDonell, R. A., 1998. Principles of Geographical Information Systems (Oxford University Press, New York), 190 pp.

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9/17/2013