ArcScan のベクタ変換設定について

ベクタ変換設定は、ArcScan エクステンションのきわめて重要なコンポーネントです。これらの設定を使用すると、どのラスタ データをベクタ変換できるか、および出力ベクタ データのジオメトリをどのような方法で構築するかを指定できます。ArcScan では、ラスタからベクタへの変換の出力に影響するすべての設定は、ベクタ変換設定で行います。

ベクタ変換設定は、ラスタ トレースと自動ベクタ変換の両方に適用されます。ラスタ トレースを実行するときは、ラスタ セルをトレースしながら、設定がどのように適用されるかを確認できます。自動ベクタ変換では、より大きいスケールでこの変換設定が適用されます。ラスタ レイヤの全体を対象としていなくてもレイヤの相当の部分を自動的にベクタに変換します。ベクタ変換設定は、モードレスの [ベクタ変換設定] ダイアログ ボックスから入力して適用できます。ベクタ変換設定を変更した場合は、[プレビューの表示] コマンドが有効になっているときに [適用] ボタンをクリックして、変更結果をマップ内ですぐに確認できます。

データに適切な設定を指定したら、ベクタ変換を続行できます。指定した設定をスタイルとして保存すると、その設定を同様のデータに再利用できます。

[交差部分の処理方法] 設定

[交差部分の処理方法] 設定では、ArcScan で、互いに交わるフィーチャの生成方法を指定します。ラスタの交差は、共通のポイントで交わる 3 つ以上のラスタ ライン エレメントとして定義されます。この例としては、共有区画の境界のコーナーがあります。

ベクタ変換設定でサポートされている交差部分の処理方法には、[直線的]、[中間]、および [なし] の 3 種類があります。[直線的] では、角度と直線を保持します。通常、このオプションは、設計図や街路図で使用されます。[中間] では、非直線角度を使用します。通常、このオプションは、天然資源図（植生図、土壌図、支流図など）で使用されます。[なし] は、フィーチャが交差していないラスタで使用します。通常、このオプションは、等高線マップで使用されます。以下は、交差部分の処理方法の例（[直線的]、[中間]、および [なし]）です。

交差部分の処理方法 - [直線的]

交差部分の処理方法 - [中間]

交差部分の処理方法 - [なし]

[最大ライン幅] 設定

[最大ライン幅] 設定では、ラスタ トレースを実行できるラスタ ライン エレメントを指定できます。ラスタ スナップ操作とラスタ トレース操作の対象となるのは、最大幅以下のラスタ ライン エレメントです。自動ベクタ変換の場合、最大幅以下のラスタ ライン エレメントに対しては、中心線のベクタ変換を実行できます。それ以外のラスタ ライン エレメントは、マップ内に編集可能なポリゴン レイヤが存在すれば、ポリゴン フィーチャとしてベクタ変換されます。

ラスタ内の太く大きなラインをベクタ変換から除外して、細いラインのみをベクタ変換する場合は、[最大ライン幅] 設定をフィルタとして使用できます。また、この設定は出力フィーチャの作成にも影響します。したがって、作業対象のデータに対してできるだけ正確な値を使用することが重要です。ラスタ ラインの幅は、[ラスタ ライン幅] ツールで判断できます。このツールを使用すると、マップ チップにラスタの幅が表示されます。このツールでラインをクリックすると、[ラスタ ライン幅] という小さな入力ボックスが表示されます。この値は変更せずにそのまま使用できます。また、変更する場合は、新しい値を入力し、Enter キーを押すと、[ラスタ ライン幅] 設定を更新できます。この方法を使用すれば、[ベクタ変換設定] ダイアログ ボックスを開かずにライン幅の設定を更新できるため、時間を節約できます。

[頂点間隔許容値] 設定

頂点間隔許容値は、出力ベクタ フィーチャ ジオメトリに影響する最も重要な設定です。この設定は、ベクタ変換処理で生成されるライン フィーチャの頂点の数を減らすために使用されます。圧縮とは、ベクタの後処理で、指定された最大許容オフセットを入力として与えて Douglas-Peucker 生成アルゴリズムを使用します。圧縮して出力されたフィーチャは、元のフィーチャが持つ複数の頂点のうちのいくつかを持っています。頂点間隔許容値が大きいほど、ライン フィーチャの生成に使用される頂点の数は少なくなります。頂点の数が減少することで、出力ライン フィーチャは、ソース ラインの元の形状とは異なる形状になります。頂点間隔許容値は、マップ単位やピクセル単位を表すのではなく、ジェネライズのレベルを表します。

スキャンされた区画マップの一部

頂点間隔許容値 = 0.025

頂点間隔許容値 = 1

頂点間隔許容値 = 10

[スムージング ウェイト] 設定

この設定は、ベクタ変換処理で生成されるライン フィーチャを平滑化するために使用されます。スムージング ウェイト値が大きいほど、なめらかなライン フィーチャになります。ただし、スムージング ウェイトを大きくすると、出力ライン フィーチャの形状がソース ラインの元の形状と異なる可能性があります。スムージング ウェイト値は、マップ単位やピクセル単位を表すのではなく、平滑化のレベルを表します。

スキャンされた等高線マップの一部

スムージング ウェイト = 1

スムージング ウェイト = 3

スムージング ウェイト = 10

[ギャップ許容値] 設定

ラスタ内のラインを表すセルはギャップを含んでいる場合があります。ほとんどの場合、これらのギャップは、ソース ドキュメントやスキャン処理の粗が原因で発生しています。ただし、場合によっては、元のドキュメントのライン シンボルの一部であることもあります。たとえば、電線を表すために点線を使用する場合があります。

ギャップ許容値は、ラスタ ラインの途切れを飛び越すために使用する、ピクセル単位の距離を表します。入力した値に基づいて、ギャップ許容値以下のギャップは、ベクタ変換の際に閉じられます。ただし、ラインが交差している箇所ではギャップは閉じられません。この設定は、ラスタ トレースと自動ベクタ変換の両方に適用されます。

[ギャップ許容値] 設定が無効

[ギャップ許容値] 設定が有効

[扇形角度] 設定

[扇形角度] 設定を使用すると、ギャップ許容値機能にインテリジェンスを追加できます。指定した角度に基づいて、ギャップを通過するときにラスタ ラインが検索されます。この機能は、ベクタ変換するラスタ ラインが曲線で、ギャップを含んでいる場合に便利です。

[ホールのサイズ] 設定

ArcScan では、ベクタ変換の際に、ラスタ ライン内のホールを無視できます。ホールとは、前景ピクセルによって完全に囲まれた、ラスタ ライン内のギャップです。ホールは、ソース ドキュメントやスキャン処理の粗が原因で発生することがあります。ホールの対角線の長さが指定された距離以下の場合、そのホールは、ベクタ変換の際にラスタ ラインの一部として処理されます。ホールを無視できるのは、ラスタ スナップとラスタ トレースを実行する場合のみです。

ホール サイズ = 0

ホール サイズ = 5

[コーナー解析] 設定

[コーナー解析] 設定では、ArcScan におけるコーナーの処理方法を指定します。たとえば、コンター、土壌境界、または水流などをキャプチャする際、コーナーの解像度よりも、区画マップで鋭角なコーナー フィーチャを認識して定義する方が重要な場合もあります。

チェックボックスのオンとオフでコーナーの検出方法を切り替えることや、コーナーをどの角度で解析するか角度を入力して指定することができます。

• ベクタ変換トレースの場合、トレースはコーナーで一時停止されます。
• ポイント間のベクタ変換トレースの場合、コーナーは解析されますが、そこでトレースが停止されることはありません。
• 自動ベクタ変換の場合、コーナー解析が実行され、その結果としてできたポイントが、その周囲に生成されるフィーチャの始点または終点となります。

解析されていないコーナー

解析されたコーナー

[スタイル] コマンド

作業対象のデータに最適なベクタ変換設定が決まったら、[スタイル] コマンドを使用してその設定を保存できます。これらのスタイルは、後で読み込んで再利用できます。したがって、設定を再度入力する必要がなく、時間を節約できます。また、特定分野に特化された各種ラスタ用のスタイルを作成することもできます。たとえば、等高線マップを日常的に操作する場合、このラスタ データ専用のスタイルを作成しておき、ベクタ変換する必要がある他の等高線マップで使用できます。

また、ArcScan には、さまざまな種類のラスタ データに基づく、定義済みのスタイルも用意されています。たとえば、等高線、区画、アウトライン、ポリゴンなどがあります。これらの定義済みのスタイルを読み込むと、ベクタ変換設定が自動的に更新されます。定義済みのスタイルは、そのまま使用することも、修正して新しいスタイルとして保存することもできます。