空間オーバーレイ(Spatial Overlay)の仕組み

基本原則

地理情報の取得方法により、各リングのデータをどのように収集して集計/集約するかが決まります。市町村や町丁・字等などの標準の地理的単位の場合、指定地域(商圏)とその属性データ間には単純な 1 対 1 の関係が確立されます。1 つの商圏が選択された一連の町丁・字等で構成されている場合、データの取得はこれらの町丁・字等のデータを収集するだけの簡単なプロセスになります。

リングは市町村や町丁・字等などの地理的単位を横断するため、リングに関する地理情報の取得プロセスはもっと複雑です。地理的単位をデータに含めるには、その地理的単位がどれくらいリングの内側に入っていなければならないでしょうか?地理的単位のうち、リングの内側にある部分のデータだけを集約できるでしょうか?このような問題を解決する方法として「単純に重心を利用」する方法と「基本単位区で重み付け」をする方法の 2 種類があります。

単純に重心を利用

商圏内のデータに関するレポートを作成するには、商圏の下にある地理的地域の情報を収集する必要があります。商圏に関するデータを集約する最も基本的な方法は、ポイントインポリゴン方式を使用して、商圏内の国勢調査の町丁・字等を収集し、これらの町丁・字等に関するデータを集約する方法です。

このマップには、半径 1 マイルのリングに含まれる店舗ロケーションが示されています。リング内でハイライト表示されたポリゴンは、ポイントインポリゴン方式で選択された商圏に含まれるすべての町丁・字等を表しています。単純に重心を利用する方法を使用すると、選択された各町丁・字等の人口が集約されて商圏全体の値が作成されます。

単純に重心を利用

単純に重心を利用する方法の精度が低い理由

このマップには、上記のマップにある 2 つの町丁・字等がより詳細に示されています。黄色でハイライト表示された町丁・字等「340030473003」は、ポイントインポリゴン方式でのみ町丁・字等を使用した場合の根本的な欠点を表しています。ポリゴンの重心が半径 1 マイル以内にあるため、その町丁・字等全体が集約の対象になります。たとえば、半径 1 マイルの商圏の人口を算出する際に、町丁・字等の約半分のエリアがその商圏の外側にある場合でも、ハイライト表示されたポリゴンの全人口が合計に加算されます。多くの人口を抱える町丁・字等が多数存在する場合には、この根本的な欠点によって商圏集約の結果に大きな歪みが生じることがあります。

特定の町丁・字等

このような逆分配の問題も、この地理情報の取得方法の不正確さの一因になっています。同じ例で、町丁・字等「340030614001」の一部が商圏リングの内側に入っていることが上記のマップに示されています。ただし、この町丁・字等の属性はいずれも集約プロセスで使用されません。この結果、集約プロセスに大きな影響が及び、人口統計レポートの情報が不正確になることがあります。

基本単位区で重み付けをする方法が優れている理由

Esri は、リングとその他のポリゴンのデータを集約する方法として、より精度の高い地理情報の取得方法を採用しています。基本単位区で重み付けをする方法では、国勢調査の基本単位区データを使用するため、リング内に完全に含まれていない町丁・字等が適切に分配されます。

国勢調査の基本単位区データは国勢調査区画の最小単位になります。国勢調査の基本単位区データを使用すると、国勢調査区画のその他すべてのレベルが作成されます。たとえば、1 つまたは複数の国勢調査の基本単位区データを集約して 1 つの町丁・字等データを作成できます。右側のマップにある青色の点は、黄色でハイライト表示されたブロック グループを構成している 13 の国勢調査の基本単位区データを表しています。国勢調査の基本単位区レベルでは一部のデータ(世帯数、人口)のみ使用可能であるため、リングのデータを集約する場合には使用できません。

商圏内の基本単位区データを使用して町丁・字等の重み付けを算出すると、重み付けされた町丁・字等データによって、リングとその他のポリゴンの人口統計データをより正確に収集して集約できるようになります。

基本単位区データの例
5/20/2014