ArcGIS の Web 利用

新しい ArcGIS、つまり 10.1 リリースの一部として、GIS を Web 上で使用するという新しいビジョンが明らかになってきました。コンシューマ マッピング、クラウド コンピューティング、スマートフォンなどの新技術と、HTML、REST、JSON などの Web 規格といった流れによるものです。現在では多くのコンピューティング機能やサービスがクラウドへの移行を進めています。Esri では、世界中のあらゆる人が、GIS コミュニティの専門知識、ノウハウ、および経験が十分に反映された信頼性の高いデータと分析プロセスに基づく GIS マップを Web 上で使用、作成、および共有できる時代になったと確信しています。

インターネットがユーザ、データ、およびサービスを結び付ける基本インフラストラクチャとして普及している現在では、Web こそが GIS の新たなプラットフォームとなります。この新しいプラットフォームでは、ArcGIS はただインストールして使用するソフトウェア パッケージではなくなります。他の多くの Web ベース システムと同様に、ユーザが作成したコンテンツを格納、処理、および操作するための Web 上のアクセス先であり、インフラストラクチャとなります。

Web 上の ArcGIS は、地理情報のコンテンツ管理システムと見なすことができます。マップを簡単に検索したり、使用したり、自分や他のユーザの情報から詳細なマップを作成できるだけではありません。GIS データ公開システムとしての役割や、マップベースのアプリケーションの作成やアプリケーションへの地理的機能の埋め込みを行う豊富な API セットを備えた、本格的なアプリケーション開発システムとしての役割も果たします。これは、GIS コミュニティと GIS の分野にとって大きな前進です。データの保有を解き放ち、情報を簡単で効率的な形式でユーザが利用することができるため、まったく新しい方法でのアクセスと配信が可能となります。

カスタマイズと再公開

このようなコンテンツ管理システムの重要な特徴の 1 つは、マップおよびマップ データのエンド ユーザが、ArcGIS Web サイトを訪問したり、ArcGIS の内容について理解する必要がないということです。先ほど ArcGIS Web サイトはアクセス先だと述べたため、この説明は矛盾するように聞こえるかもしれません。この点をわかりやすく説明した簡単な例を紹介しましょう。たとえばあなたが、ある特定の近隣地域に住む人たちが使用するコミュニティ Web サイトを運営しているものとします。Web を検索してみると、市役所が火災危険性と計画避難経路を示す公式のマップを公開しており、これを ArcGIS.com で公開していました。あなたは ArcGIS マップ ビューアを使用して、そのマップへのリンクを作成でき、さらにリンクをカスタマイズして、居住している近隣地域をズームアップした状態で公式マップを開くように改良することができます。このリンクは、あなたが運営するコミュニティ Web サイトに追加したり、コミュニティのソーシャル メディア (Twitter 投稿など) に追加したりできます。また、近隣地域をズームアップした状態の公式マップを、あなたのコミュニティ Web サイトのページに直接埋め込むこともできます。このような操作を行うために、あなたは ArcGIS にユーザとしてログインしたり、自分用のマップを作成する必要はありません。サイトで見つけたコンテンツを使用しているだけです。あなたの Web サイトにアクセスした人は、この Web マップをこれまで目にした他の Web マップと同じように操作できます。これを使用するために、ArcGIS や GIS について理解する必要はありません。

これは 1 つの例に過ぎませんが、データの使用と共有に関する新しいパラダイムを示す上で参考になります。本来、GIS マップを作成するには、ソフトウェアをインストールし、ソフトウェアを理解することが唯一の方法でした。専門的な GIS 作業を行うには、依然としてこれは重要なパターンですが、Web ブラウザを使用するユーザであれば誰もが、ArcGIS を使用してマップの作成、公開と共有、およびこのようなマップを利用するアプリケーションの開発を行うことができます。

これに加えて、Web ブラウザ以外のソフトウェアを必要とすることなく、Web 上の ArcGIS を使用して、プロ仕様の GIS マップおよびアプリケーションを誰もが作成できます。従来の GIS ユーザは ArcGIS 10.1 for Desktop と ArcGIS 10.1 for Server を使用して、マップ サービスやその他の GIS サービスを作成し、その基本地理情報をマップ サービス、画像サービス、編集サービス、ジオプロセシング サービスなどとして共有します。公開後は、これらの情報を検索および使用して、どこからでも利用できる ArcGIS Web マップを作成することができます。

Web 上の ArcGIS でできる操作

Web 上の ArcGIS で見つけたマップとデータは、関心があるエリアの主要な管理機関内の GIS 専門家によって提供および管理されているため、信頼でき、最新のものです。その数は数千に及び、州政府、地方自治体、および国から、非営利団体、企業、さらに画像会社などの地理情報プロバイダまで、多岐にわたります。Web 上の ArcGIS を使用すると、誰もが次の操作を行うことができます。

  • Web マップとデータを検索し、それを自分のマップに追加できます。
  • 特殊なジオプロセッシング サービスなど、マップ内で使用できる関連サービスを検索できます。これらのサービスを利用することで、たとえば、ある場所が特定の活動や用途にどの程度適しているかを判断できます。
  • 検索して見つけたマップを自分の Web ページにリンクしたり、埋め込んだり、またはテンプレートを使って Web アプリケーションを構成することもできます。
  • 独自の Web マップを作成し、他のユーザと共有できます。Web 上のユーザ、スマートフォンやタブレット デバイスを使用しているユーザ、および ArcGIS for Desktop を使用しているユーザが、公開されたマップにすぐにアクセスできるようになります。
  • 固有のマップベースのプレゼンテーションを作成し、ストーリーを示したり、マップのツアー表示を行うことができます。
  • 同じ場所、データの種類、または GIS アプリケーションに興味を持つユーザのコミュニティに参加できます。このようなコミュニティは、業界固有またはアプリケーション固有のマップ テンプレートと、すぐに使用できるデータを提供しています。誰もが新しいグループを作成し、グループに他のユーザを招待できます。グループは、共有目的やコラボレーションの目的に応じて、公開または非公開となります。
  • JavaScript、Flex、Silverlight、モバイル デバイス、およびランタイム環境用の無料の ArcGIS API を使って、ArcGIS コミュニティで公開されているマップやその他のサービスを利用するアプリケーションを作成できます。ArcGIS は、信頼できる GIS データ、ベースマップ、および豊富な API を備えています。自分のアイデアで優れたアプリケーションを作成できます。

GIS 専門家の場合

Web 上の ArcGIS は、GIS 専門のユーザにとっても、広範なコミュニティや世界と情報を共有する場所です。ArcGIS ソフトウェアを使用する GIS 専門家は、Web 上の ArcGIS を使って次の操作を行うことができます。

  • 直接使用するマップとデータを検索できます。ArcGIS for Desktop 内のギャラリーを使用することで、ArcGIS ベースマップにアクセスしたり、他のリソースを検索することができます。
  • ArcGIS for Desktop から数クリックするだけで、マップ、データ、およびプロセスを、同僚、プロジェクト チーム、および GIS 専門の広範なコミュニティで共有できます。作業の成果は使いやすい単一のファイルにパッケージ化され、ArcGIS Online クラウドにアップロードされます。
  • 自分のデータを他のデータと結合し、多機能で対話性に優れたインテリジェント マップを作成し、広くアクセスされるようにできます。
  • ArcGIS 10.1 for Desktop マップをサービスとして公開することで、ArcGIS 10.1 for Server を使用しなくても、ArcGIS クラウド インフラストラクチャを通じて、誰もが Web マップですぐに利用できます。
  • ArcGIS 10.1 for Server を使用して組織が公開するマップを登録することで、誰もがそのサービスを検索して Web マップに追加し、アプリケーション内で使用できます。
  • 共有するマップおよびデータをグループにまとめ、リソースへのアクセスを特定のユーザに制限して、プライベートな配布とコラボレーションを実現できます。
  • 業界固有のマップおよびアプリケーション テンプレートにアクセスして、優れた成果を上げ、ベスト プラクティスをカプセル化できます。

クラウド システムとしての ArcGIS

ArcGIS Online は拡張されて、完全な SaaS (Software as a Service) アプリケーションになりました。ArcGIS Online を使用すると、ユーザは、サービスを格納、管理、およびホストする機能を含めて、Web マップおよびデータをクラウド環境に作成し、共有できます。このシステムにより、ユーザは簡単に、他のユーザが使用できるようにコンテンツを公開したり、選択した処理操作の負荷を軽減したり、知識を共有したりできます。このように、機能を低コストのクラウド インフラストラクチャで拡張することができるのです。ユーザは、この新しい柔軟でスケーラブルな導入オプションを使用してシステムを拡張し、地理情報をより広く利用可能にすることで、各自の GIS の価値を高めることができます。この新しい機能を使用すると、誰もが地理データを ArcGIS Online に直接アップロードし、それを Web マップに自動的に変換できます。アップロードされる情報は、デスクトップ上の ArcMap アプリケーションを使って作成される場合もあれば、シェープファイル、CSV ファイル、スプレッドシートなど、単純な地理データや表形式のデータの場合もあります。この情報が追加されると、ArcGIS Online は、専用または汎用の Web サービスとして公開できる Web マップを自動的に作成します。これらのマップは共有したり、他のマップ レイヤと統合して、さらに多機能な Web マップおよびアプリケーションを作成できます。

ArcGIS Online はオープンであり、HTTP、REST、JSON などの複数の Web 規格に加えて、OGC サービスや KML のような地理空間規格や、ArcGIS 10.1 for Server のネイティブなマップ サービスもサポートしています。ArcGIS Online は、ArcGIS 10.1 for Desktop と ArcGIS 10.1 for Server の使用も統合もサポートしており、完全に統合された Web 公開ソリューションが ArcGIS ユーザに提供されます。

ArcGIS Online は、美しいベースマップと画像の世界地図から成る充実したコンテンツ システムであり、100,000 近くのデータセットとマップ サービスが、世界中の GIS ユーザによって共有され、カタログに登録されています。ユーザは、これらの地理空間リソースに対して簡単にアクセスや検索をすることができ、これらのリソースを利用して、強力なマップを作成および共有したり、地理空間分析を行うことができます。このコンテンツは、増え続けるソーシャル メディアに簡単に統合でき、地理空間コンテンツを Web 上で利用できます。

ArcGIS Online の学習に役立つリソース

ArcGIS Online を初めてご利用になる方、またはもっと理解を深めたい方のために、一連の実践的な演習とチュートリアルが用意されています。はじめの演習「ArcGIS Online における Web マップの詳細」から開始してください。